第2話 カウントダウン

 毎日ってわけじゃないんだけど。いつもの仕事帰りのいつものこの道で。


 駅前の喧騒に混じって、聞こえるの。


『ギシッ、ギシッ』っていう、古い木の床の上を歩くような音が。



 例えば‥‥


 古い木造家屋の床を、足袋たびを履いたお婆さんが、ゆっくり‥‥ゆっくり歩いているような?


 もしかしてこのスポット、地縛霊でもいるのかしら? ちょっとゾクゾクしてしまう。


 他には誰も気にしてる素振りの人はいない。私にだけ、聞こえてるのかも‥‥‥


 昔、ここの場所で何かあったのかもね‥‥‥



 それが聞こえるのはいつも同じ場所。


 そこは13階立てのビルの前で、そのビルの地上階はコンビニとドラッグストアで、上は個人病院とか、学習塾とか、英会話スクールやピアノ教室とか、どこかの会社の事務所とか、ゴチャゴチャいろんなテナントが入ってる。  


 ほら、見上げれば大きな文字の目立つ看板が、窓を挟んで階と階の間にかかってる。壁面からも旗のように。よく見るおなじみのロゴの文字の看板もあるわね。


 普段、自分には用は無いビル上の方なんて、ほとんど気にかけることもないけれど、見上げれば色々発見ね。あら? あのリンゴの絵がついた看板は今までなかったわね。新しくテナントに入った何かのサロンみたい。



 ほら、今日は聞こえる日。ここのビルの前でだけで聞こえる音。



 ギシッ‥‥ギシッ‥‥ギシッ‥‥ギギギ‥‥‥



 聞こえる日と聞こえない日があるんだけどね‥‥




 ***




 私、霊感なんて、今まで全然無かったんだけど。


 私にだけ聞こえているという優越感のせい? 私は帰りは必ずここを通って音を確かめて通る。


 私の霊感はどんどん高まって行くみたい。最近は以前より大きく、より頻繁に聞こえるわ。



 ギシッ‥ギシッ‥ギギギ‥ギシッ‥‥ミリミリ‥‥‥



 きしむような、音。


 そのうち私、幽霊まで見えちゃったりする? 自分の持つ霊感に、ちょっとドキドキする。



 今日は風が強いわね。ああ、そう言えば台風が近づいているんだっけ? 



 ギギギ‥ギギギ‥‥ミシミシミシッ‥‥‥





 車道で隔てられた通りの向こうの一人が、私の方を見て、腕を大きく横に振って叫んだ。



『あっ、上! 危ないッ!!!! 避けろーーーーッ!!!!』



 なあに? 私に? えっと、なにかし──────








                           ────The End.





**あとがき一言**


厨病ゆえの思い込みが‥‥‥  ( ´ー`)φ  






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