Love.comm-END?

巨豆腐心

第1話

   序


 どうしてこうなった?

 小さいころから真面目に勉強し、社会のルールを守って、やがて大人になった。でも、まともに就職できず、家族をもつこともできず、貧困と将来不安に常に苛まれながら生きてきた。


 狂った理由はたった一つ。オレが王立協会に登録しなかったから。

 そこに登録すれば、良い仕事にありつけ、結婚相手も決まり、税金や補助金などの優遇だって受けられる。

 任意のはずなのに、そこに登録するか、しないかで生活、生き方が大きく変わってしまう。

 オレは登録しなかった。結婚は好きな相手としたかったから。でも、それは認められなかった。何より相手が、職が不安定な相手との結婚をのぞまなかったから。そして相手は、王立協会に登録した。

 オレは我を通して、登録しないまま生きてきて、今や家もない。お金もない。家族もいない。何ももっていない……。


 冬の寒さ厳しい折り、拾った毛布に身をくるみ、野原で倒れて、オレは死にかけていた。

 自分が択んだ道だ。後悔はしていない。

 でも、この世界は狂っている……。王立協会は、王族の神性をみとめ、王族による支配、統制を是とするものだ。王様が神であり、王様のすることは絶対。だから結婚相手も、王様には最適解が分かるらしい。それ以外をみとめず、自由恋愛なんてものはここにない。

 この世界は、民主主義のはずだ。何ものにも縛られず、個人が自由に発言し、生きていくことができる……そんなお題目。でも、王立協会に登録しないとまともに生きていけない。

 こんな世界は間違っている! そう叫ぶ声すら、もう出てこない。目も霞み、皮膚の感覚すら失ってきた。人は死ぬとき、脳内麻薬がでて絶命の苦しみを緩和する、と聞いたことがある。何だか気持ちよくなってきた……。やっぱり、もうダメなのかもしれない……。

「悔しい?」

 女性の声が聞こえる。もう見上げることもできない。目を開けているのか、閉じているのかすら不明で、闇が広がっているからだ。

「あなたにチャンスを与える。その代わり、私のことを手伝って欲しい。きっとそれが、あなたの目的にも合致するはずだから」

 目的……? オレに今さら、何の目的があるっていうんだ。もう死ぬんだぞ。でもそう声をかけてくれたのが、ことのほか嬉しかった。

「チャンス……受け入れる。手伝うよ。でも、オレはもうダメだ……」

 声をだしたのではなく、心で唱えただけ。オレの意識はもう引き留められないほどに、遠くなっていった。




   1.


 ここは公園……? 家の近くにあった、公園といっても防災用にしつらえられた空き地で、そこに普段は使い道がないので、遊具などを置いて公園とする、そんな広場である。

 自分の目線が低……、子供のころにもどっている⁉ ボクも驚く。あれ? 一人称ももどっている。

「アギ君。どうしたの? ぼ~っとして」

 そこに現れたのは、幼馴染のリムハ。このころはポニテの似合う、可愛らしい女の子だった。

 王立協会に入って、好きでもない男と結婚し、子供も生んだそうだ。でもDV男なのに離婚もできず、苦しめられていると聞いたことがある。否、このときはまだ王立協会には入っていないか……。

 ブランコ……。懐かしい。ふらふらと近づく。大木の枝に、ロープで結びつけられた板――。

 ボクはふらつくこともあり、そこにすわる。小さいころ、このブランコに揺られているとき、何も考えずにいられた。将来不安や、不幸になる未来なんて何も考えなくてよかった……。


 リムハがボクの乗るブランコに、乗ってきた。しかも正対する形で、ボクのお尻の横に足をおき、彼女は立った状態で、ブランコを漕ぎだす。

 ボクが元気がない、と気づき、自分がブランコを漕いで、少しでも喜んでもらおうとしているようだ。

 健気だな……。彼女はボクを跨って立ち、ヒザをつかってブランコを漕ぐ。

 一生懸命に漕ぐと、彼女のミニスカートがふわり、ふわりと浮いて、その先のパンツがボクの顔の前に……。

 小さいころのボクは、勿論そんなことを意識することはなかった。一緒にお風呂に入ったこともあるし、パンツなんて別に……。

 でも十年以上先だけれど、彼女は好きでもない男と結婚し、彼女もそれに応じて身悶えするのだ。

 悔しい。虚しい。未来を知っているだけに、そういう結果に彼女がなることが赦せなかった。

 どうせ死ぬ前にみる走馬灯、これは夢だ。

 ふわりと浮き上がったスカート、柔らかい布地めがけて、ボクは顔をぐっと押し付けた。

「きゃっ⁉」

 リムハも驚いたのだろう。漕ぐ力が弱まった。でも、ボクも彼女のそこから顔を離す気はない、手で彼女の腰をがっちりとホールドし、彼女の丸い丘に鼻を、口をそわせる。


 少しつんと饐えた匂いがするけれど、ボクは気にしなかった。

「アギ君、やめて。汚いよ……」

 汚い……だけ? なら、まだ大丈夫そうだ。ボクは舌をつかって彼女の布地をずらすと、その脇からそれを滑りこませ、肌に直接舌をあてる。

 悪ふざけをして、触ったこともあるけれど、舌を這わせたのは初めてだ。

 彼女の甘く、すべすべとした肌に舌をすべらす。

 ブランコは勢いを失い、やがて止まった。でも、リムハはブランコから下りようとせず、また片手は立つためにブランコのロープをにぎるけれど、もう片方の手はボクの後頭部に優しくふれる。

 無理やり引き離そうとしない……。彼女もこれを望んでいる。それに勇気をえて、ボクは舌を彼女のそこに、ぐっとねじ込んだ。

「アギ君……。アギ君……」

 むしろ彼女もこうなることを期待していた? その舌で満足させるために、ボクはさらに深くまで、舌を滑りこませた……。


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