どうしようもない僕は報われない恋をする

@tukina22

第一章 アテネバインド

こんにちは世界

目が覚める度に僕は絶望する。

何にって?

生きてることに、だよ。

暗くて寒い搭のなかに5年くらい閉じ込められている。

5歳までの記憶はないけど。

まぁでも、そんな気がする。

ただ、それだけ。

食事の配給無し。

衣類の供給無し。

水だってない。

まぁ、それでも今日まで僕が生きてこれたのは、僕をこんなにした呪いのお陰だろう。

まぁ、感謝してるか聞かれたら感謝してるって答えるよ?

でもやっぱり恨んでるかなぁ。

だって、僕の呪いには一番のデメリットが存在する。

『結婚したら相手が死ぬ呪い』

まぁ、これの性で今の能力があるわけだけど。

メリットには必ずデメリットがつきまとう。

僕のデメリットがこの呪いだっただけだ。

「まぁ、いいか。別に僕は誰とも結婚するつもりなんてないし。」

女はみんなきっと母さんみたいな奴だろうし。

男は男で……うん、論外だ。

さてと……そろそろいくか。

「えいやっ………っと!」


神月 凪。

呪われた子供。

「なぁ、本当に彼を従わせることができるのか?」

「なぁに、家には強力に仕上げた王子が何人もいる。本命の勇者はまだ出ていないが、勇者候補とまで言われているんだ。」

「ちなみに、#颯太__そうた__#と#美空__みそら__#はどうするんだ?」

「さぁ。あいつらは好きにすべきだろう。どうせ大した力も持ってはいない。」

「本当だな。同じ呪われた子供の癖に使えない。」

大人の声がする。

僕は部屋のなかで声を聞く。

扉を背に向けて。

僕は出来損ないとよく言われる。

「何あの子、醜くない?」

「ほんとだわ。王族として恥ずかしくないのかしら。」

そうなのかな。

鏡のなかの自分の顔を見る。

金髪に青い目。

いつまでも変わらない顔。

生まれたとき、赤子だったけれど、数分で幼稚園児位まで一気に成長した。

そこで皆気づいたみたいだ。

一番始めに呪われていると判明した呪い子。

『神月 凪と同じ』なんだと。

けれど、ぼくがあまりにも王族として醜すぎるから、愛せやしないし、こんな醜ければ何やっても無駄だろうと判断された。

神風 颯太。

それが僕の名前だ。

王族はみんな僕を馬鹿にする。

まぁ、いいか。

「僕よりも優秀な呪い子。ぜひ、お目にかかりたいものです。」

いっそのこと、見本に出来れば良いのに。


地面に落下する。

衝撃で体が砕け散るが、瞬時に人の形を形成する………

「ふぅ…僕は凪、大丈夫。記憶はある…って当然かぁ。」

塔から脱出するには一度死ななければいけない。

はっきり言ってめんどい。

けど、この作業無しには僕は3日ごとに死ななくちゃいけなくなる………

「よし、近くの泉で水のんでから、獣狩りして、とっとと塔に戻るか!」

今日は午後から王族とのバトルがあるからな……

この時の僕は、この国の王族はクズでくそめんどくさい奴等だとは想像すらしていなかった……

「おい!神月!外に出ろ!」

屈強な兵士達が僕を囲む。

こんなことしなくてもぼくは逃げないのになぁ。

逃げても良いけど、結局なんやかんや言って捕まりそうだからなぁ。

黙ってついていく。

案内されたのは凄い豪勢な城。

あぁ、良かったらその城に回した金をこっちにも回してほしかったなぁ。

冬になると寒いんだよ。

あの搭って石造りだからさ。

城のなかはシャンデリアやら何やらで眩しい。

こんな眩しくしなくちゃいけないの?

てかそんなことに使うなら(以下略)

とりあえず、僕はコロシアムに連れていかれた。


大昔からこの国ではあるしきたりがある。

それは、決闘だ。

決闘に勝利すれば敗者に好きなことが出来る。

富を奪ったり、奴隷にしたり。

その事を利用して、神月 凪を隷属させて手駒として利用しようと言う魂胆だ。

(面倒さいです。さっさと終わってください)

自分には関係無いことだ。

だって、兄達の方が遥かに優秀だし。

僕の出番はないだろう。

「コロシアムに入場しました!魔力封じの腕輪を着けています!これで戦えるのか?」

戦えないと思う。

手錠のようにまきついてるし。

ベールで顔がよく見えない。

どんな顔をしているのだろうか。

自信満々に第一王子が剣を構える。

「それでは、初め!」

人々の視線がうざい。

何よりもこの手錠が重い!

ああ、もう、めんどくせぇ………

「ふん!この私の奴隷になれることを喜べ!」

突然のクズ発言だぁ……

剣を構えて僕に向かってくる。

「すみません、僕にも武器を。」

「チッ、ほらよ。」

態度悪いなぁ………

そして受け取った武器は

『そこら辺に落ちてた木の枝』

「いや、こんな武器じゃ戦えねーよ!」

思わずへし折りそうになった………

せめて角材!

角があるあの木材とか、もうちょっとあったじゃん!

てか短すぎるよこれ!

リーチ短いし、しかも細い!

絶対おれるじゃん!

「おりゃああああ!」

しかし強そうな剣だなぁ。

交換してほしいんだけど。

なにこれ?嫌がらせ?

止めるために。

ないよりマシかと枝で防御する。

まぁ、当然のように枝は真っ二つになった。

僕はもう、普通に戦うのを諦めた。

(これでも、剣さえくれたら、普通に剣で勝負する気だったんだよ?)

相手ののろすぎる剣を手錠で受けて鎖をかっきって、剣を奪い取り、そのまま相手の首もとに突き付ける。

「魔法は使わないよ。これで終わりだね。」

だって僕はこれよりももっと速くて、美しい剣を知っている。

だからこの程度なんて、比較対象にすらならない。

まぁ、僕の真似っこも雀の涙ほどしか似てないけど。

「次の挑戦者いる?というかまとめて相手してあげるよ。」

ベールで顔見られてないよね……?

そのあと気が立ったのか分からないけど何人かで束になって襲いかかってきた。

取り敢えず攻撃をかわしながら少しずつ攻撃をする。

顔を隠すのは、見られると面倒だから。

それも、特に王家の人間に。

だから、顔にむけての攻撃は特に神経質になってしまう。

それこそ、体が傷つくのも気にしないくらいに。

「くっ、いったいなぁ!」

体の傷が増えてきた。

そろそろヤバイかな?

くらくらしてきた……

傷口から血が止まらない。

「思い知ったか!この呪い子が!!」

うるさいなぁ……

「おとなしく奴隷になれ!」

嫌だ。

お前ら王族なんて嫌いだ。

うるさくて、嫌で嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い……

剣が宙を舞う。

ベールを切り裂く。

あぁ、取れちゃった。

顔があらわになっちゃった。

突然、歓声が上がる。

何が起こったの?

ベールが外れ、顔が現れる。

「女王イザベラだ!」

「聖女イザベラ様の生き写しだ!」

そっくりだった。

この国のかつての女王であったイザベラに。

もしかして………

彼は王族なのではないか?

だとしたら……

「王宮に………兄弟がふえるのです。」

だとしたら、嫌だな。

彼も僕の事馬鹿にしそうだし。

「ああ、だから僕はイザベラとまったく関係ない!他人の空似だよ!」

叫び出す。

剣を向けて、殺意のこもった瞳で。

「全員かかってきなよ。魔法で全員蹴散らしてやる。」


顔を見られた。

「ふむ……奴隷ではなく、使用人にしようか。」

あぁ、静かにしてよ。

もう、止めてよ。

魔法を暴発させようとしたとき、

「痛いです!放して」

「黙ってろ!良いか?お前はしんでも構わねぇ。とっとと俺達の盾になれ」

目の前でそんな声が聞こえた。

髪を引っ張られて無理矢理引き摺るようにして連れてこられた少年。

美しい金髪に青い瞳。

透き通るような白い肌に、整った顔立ち。

(神に祝福された少年ってあの子の事言うんだろうなぁ………)

「てめぇはいるだけで気分が悪くなる!醜いってのはいるだけで罪なんだよ!」

「うぅ………」

そんな言葉を吐きながら、僕に目を向け、魔力を練る。

「こいつをとっとと手にいれてやるぜ………」

「うるさいし、美的感覚ぶっ壊れてるね、君達。」

両腕を切り取る。

辺りには血が広がっていく。

金髪のあの子と、あと無害そうなの以外全員の。

「痛い?あぁ、痛いよね。でも、君達が与えてきただろう傷みとははるかに違うよ?」

腕を治してやる。

「僕は君達貴族の性でさ、結構大変なんだよ?」

また切断する。

「僕を隷属したかったら自分達で僕のところに来なよ。」

また治して、

「まぁ、勝てないだろうけど。」


圧倒的な力の差だった。

僕は震えた。

恐怖が体を支配する………けれど。

(あの強さになら………)

憧れてしまった。

「えーっと、君、大丈夫?」

「え?あぁ、はい!大丈夫です!それよりあなたの方が………」

「ん?あぁ、別に大丈夫。」

僕の心配してくれてありがとう。

なんて、目の前の人は笑う。

とても、綺麗だな、と思った。

同性に対して抱く感情じゃないけれど。

「お礼なんて、言わないでください。僕は醜いですから…………」

「そんなことないと思うけど?」

「え?」

醜くないってこと?

僕が?

「多分呪いの性でさ、そうなってるんじゃない?」

「そうなんですか?」

「うん!というか………」

「今までよく頑張ったね。偉いと思うし、それだけでも君は十分綺麗だよ。そういう我慢強いとことか?多分僕なら殴っちゃいそう。」

ずっと、欲しかった言葉だった。

醜い、なんて言葉じゃなくて、ちゃんと僕を評価して。

兄弟のいじめにも耐えた僕を誰か、認めて。

頬に液体が伝う。

泣いていた。

「えっ!泣かせちゃった!」

「あ、違うんです、嬉しくて………」

遠くで警報が聞こえる。

「やばっ!そろそろ行かなきゃ……」

「もう、会えないのですか?」

「うーん…君がもっと強くなって……いや、僕を殺せるくらい強くなってから森の塔に来て!」

その時が僕らの再開の時だよ!

そういって、瞬間移動を行った。

(また、会いたいな………)

今日もいい天気だ。

あれからかれこれ半年が経った。

僕は今も塔で暮らしている。

搭のなかの本棚から、最近気に入っている本を取り出す。

僕が持ってきた覚えがないけど、いつの間にかおいてあった本だ。

誰かが気を聞かせて置いてくれたのかな?

それにしても………

「今日はいい天気で眠いなぁ……ぐぅ……」


森のなかを歩く。

薄暗いはずの森は、昼間だからか、木々の合間から日光が差し込んでいるため明るい。

「………早く行かなきゃ。」

あれから、僕はどこまでも鍛練を重ねて、国一番、いや、ひょっとすると世界で一番かもしれないとも言えるくらい成長した。

ここまで成長するなんて、誰も思っていなかったみたいだった。

「顔さえ良ければなぁ………」

国中の人々は皆そう呟く。

でも、僕はそんなの興味なかった。

昔なら、またそれで塞ぎこんでしまっただろうけど、僕には目標があったから。

だから頑張ってこれた。

「君がもっと強くなって……いや、僕を殺せるくらい強くなってから森の塔に来て!」

あの日のあの言葉。

圧倒的な力。

もう一度会いたかったから。

(会ったら何て言ってくれますか……?)

覚えてないかもしれないけど、僕は………

森を歩いていたら、塔についた。

鍵は持ってきてる。

鎖でがんじがらめにされたドア。

付近には、注意書が乱立している、

「立ち入り禁止」

「危険人物あり」

(酷い言われようだな…………)

南京錠の前にたち、鍵を取り出す。

かチャリ、と音がして、錠が外れる。

その時、鍵を借りたときにした約束が脳裏をかすめる。

(今は、忘れよう。)

ただ、単純に会えることを喜びたい。

僕を初めて綺麗だと言ってくれたあの人に。


搭の中は薄暗くて、冷たかった。

灰色の石の壁、辺りを照らすのはふよふよと浮かぶ光の玉のみ。

ふれると、ほんのり暖かい。

壁は途中から本棚へと姿を変える。

多くの種類の本。

古書から新書まで、この世のすべての本を集めたかのような、そんな大きな本棚。

上へ上へと進んでいくと、ドアが空いていた。

「お邪魔します………」

奥へと進むと、立派に作られたベッドがおいてあった。

ふかふかの布団にくるまって、神月 凪は寝ていた。

それも気持ち良さそうに。

近くには、寝る前に読んでたのか、本が落ちている。

「契約するための方法」

軽く読んでみる。

「まず、契約するために、自分の名前とは違う名前を持つこと。凪の場合は月だね。そしたら……」

まるで凪に向けた手紙のようだな、なんて僕は思った。

凪の顔を見る。

白い肌に、真っ黒の髪。

言われて見れば、顔立ちは女王イザベラに似ているかもしれないが………

(そんな女よりも、凪の方が良いですね。)

聖女だとか、どうでも良いけど、自分に道を与えてくれたのは凪であり、自分を綺麗といって救ってくれたのも凪だ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る