第6話 決まった
※※※※
その事が決まったのは、二人の誕生日の前日だった。
「うちに来て」
魔法の手紙がツインの部屋に舞い込んできた。差出人はジェミニだ。
ツインは慌ててジェミニの家に向かう。
まさか、まさか。
ジェミニの家につくと、家から数人の魔女たちが出てくるのが見えた。
偉い魔女たちだ。間違いない、【決まった】んだ。
「ジェミニ!!」
ツインはジェミニの家のドアを激しく開けた。
ジェミニの母親が面倒臭そうにツインを見る。
「あら、ツインじゃない。【おめでとう】」
その言葉にゾッとした。
ジェミニの母親は、確かに自分の息子を不吉がって、ジェミニの事をほぼ無視していた。
それでも、多少は愛していなかったのか??
ツインに対しておめでとうだなんて、それはつまり、ジェミニは……。
ツインはジェミニの部屋に入る。
「あ。良かったツイン来てくれたんだね」
ジェミニはいつもと変わらないニコニコした顔でツインを出迎えた。
「もしかしたら魔法を封じられたり拘束されちゃったりするかなぁって思って、あの魔女達が家に入ってくる前に急いでツインに手紙送ったんだ。でも、何もされなかったからラッキー。急がなくても大丈夫だったね」
「決まったのか」
ツインはジェミニの肩を掴む。
「消されるのは……ジェミニなのか」
「痛いよ」
ジェミニが抗議するがツインは肩から手を離さない。むしろ更に強く握ってしまう。
「そうなんだな」
「良かったよ。ツインが生きてくれるなら」
ジェミニは微笑む。
「言ったでしょ。ツインが消されるなら僕は死ぬって。だからこれで良かったんだよ」
「そんなこと、忘れた」
「ああそうだったね。僕が忘れてって言ったんだったね」
ジェミニはそっと、強く掴んだままのツインの手を優しく撫でる。
「どうなるんだよ。いつ……その…」
「消されるの?明日の午後。誰にも見せないように。苦しまないようにしてくれるってさ」
怯えるよう様子は全く見せない。
ツインは苦しくて苦しくて、ジェミニから手を離せない。
「待つしかないのか?もう抗えないのか?」
「うん。無理だよ」
「逃げろよ……死ぬ必要ないじゃねぇか」
「僕らは結界から出られない。何度も試したでしょう。あ、お墓は結界の外にあるから、死んだら出られるけどね」
ジェミニは少し軽く冗談を言うようにいってみせる。
「じゃあ…俺…」
ああ、どうしてこの期に及んで、ジェミニが死ぬなら自分も死ぬと言えないのか、とツインは自分を責める。
消されるのは怖い。どうしても怖い。
ツインは段々と、ジェミニの肩を掴んでいた手の力が抜けた。
ジェミニは優しく掴んでいたツインの手を軽くさすった。
「僕は大丈夫。ずっと覚悟してたし。ツインは絶対に生きて。絶対に」
「ごめん」
「何で謝るの?謝らなくていいんだよ」
ジェミニはツインをなだめるように抱きしめる。
ジェミニの細い身体は、思ったより大きかった。女の子のようだと思っていたのは勘違いだった。
そして、ああ。今気づいたのだ。
ジェミニは俺の初恋だった。
ツインは泣いた。
しばらく子供のように泣いたあと、ツインは急に恥ずかしくなってしまった。
「悪い。俺が泣くことじゃなかった」
「ううん。ツインは僕の代わりに泣いてくれたんでしょ」
ジェミニはポンポンと子供にするように頭を撫でる。
「何が、俺にできる事はないか」
「んー、もう何も無いかな…、ああ、そうだ」
ジェミニはポン、と手を叩いた。
「今日ここに泊まってよ。最後の夜、一緒に過ごそう」
ジェミニはニッコリ笑う。
「そんなことでいいのか。むしろ、俺いていいのか」
「うん。一人になりたいような気もするけど……でもきっと、一人で夜を過ごしたら、気が狂うかもしれない」
ジェミニは静かに目線を逸らす。よく見たら身体が小さく震えていた。
ようやく見せたジェミニの恐れだ。
やはり怖かったのか、とツインは思った。
不安な時や寂しい時はいつも二人は一緒にいようとしていた。今一緒にいてらやなくてどうするんだ?
「一緒にいる。一人にしない」
ツインはジェミニの肩を、今度は軽く掴んだ。
ジェミニは微笑んた。
…………
……………微笑んだ後のジェミニの赤い瞳に、何やら妖しい光が灯ったのを、ツインは気づかなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます