第4話【急募】義妹に間違ってプロポーズのした時の対応
顔合わせが終わって自宅に帰ると、あまりの疲れからばたりとベッドに倒れ込んだ。
せっかくのおいしそうな料理だったのにほとんど味覚えてないや。
親父の言っていた少し年下の女の子がまさか七瀬さんだなんて。最初は現実もたまには下手な嘘をつくと思ってしまった。
たしかに俺は五月生まれだから、同級生の中でも誕生日は早い方だ。だけど、七瀬さんの場合、年下というよりは同い年という方が正しい。たしかに見た目は幼いけどさ。
七瀬さんは親父たちが再婚して、俺と一緒に暮らすことになることをどう思っているのだろう。今日の様子はもじもじとした感じであまり口数は多くなかったと思う。
まあ、顔合わせの席であからさまに嫌な顔をされたら今後の関係としては絶望的だと思うから最悪ではないはず。
俺の方は七瀬さんと一緒に生活をすることはちょっと厄介だと思っている。もちろん、可愛い七瀬さんと一緒に暮らせば目の保養にはなるかもしれない。
でも、一緒に暮らしていることがバレれば、そこら中の男子から妬み嫉みの対象になる。波風立たせず平凡に暮らしていきたい俺にとって大問題だ。
大きく溜息をついてから寝返りをうって仰向けになり、ポケットからスマホを取り出した。画面には登録されたばかりの七瀬さんの連絡先が表示されている。
美咲さんにこれから家族になるのだから連絡先を教えてと言われて、美咲さんと一緒に七瀬さんとも連絡先を交換した。
男子生徒なら誰もが欲する七瀬さんの連絡先をこのような形で手に入れてしまったことにちょっとした罪悪感はある。
さて、連絡先を交換したのだから何か挨拶程度のメッセージを送った方がいいだろう。
普段Rineでのメッセージが完全に連絡や報告ばかりの俺にとって、そうでない文章を送るというのは夏休み宿題の読書感想文くらい難題だ。
『今日はお疲れ様。これからもよろしく』
あまりに面白みも感情も何もない。定型文過ぎる。
『急なことで驚いていると思うけど、学校と同じ感じでよろしく』
学校と同じ感じってなんだ。これだと俺は七瀬さんとこれ以上仲良くなるつもりはないって感じじゃないか。
『これからは義兄妹だから。お兄ちゃんって呼んでいいぞ』
二度と口をきいてくれないかもしれない。場合によっては破談になりかねない。
書いては消してを繰り返しながら、俺と七瀬さんだけじゃなくて親父や美咲さんを含めてみんながどんな風に暮らせたらいいかを考える。俺は平穏な家族としてそこそこ幸せを感じられればそれが一番だ。だから、七瀬さんにもそれが伝わるようなメッセージを送れればと考えていた。
そんなことを考えていると会食でいつもより緊張した時間を過ごしたからだろうか瞼が重くなって、眠気が襲ってきた。
そして、まどろむ意識のなかで俺はスマホを握ったまま眠ってしまった。
はっと目を覚まして握ったままのスマホで時間を確認すると既に日付が変わっていた。それと同時に七瀬さんからメッセージが届いていることに気がついた。
しまった。七瀬さんの方が先に送ってきたようだ。
アプリを起動して、メッセージを確認した俺の脳はまどろみ半分から一気に覚醒した。
『一緒に幸せになろう』
な、なんなんだこのメッセージは!?
画面には俺が送った覚えのないメッセージが送信されていて、既読もついている。
まさか、みんなが平穏に幸せに暮らせればいいなと考えていたから、無意識のうちにこんなメッセージを送ってしまったのか。このメッセージじゃまるで俺が七瀬さんにプロポーズをしているみたいじゃないか。
既読がついているから取り消しをしても手遅れだ。何より七瀬さんからは既に返事も来ている。
『こちらこそ末永くよろしくお願いします』
今この瞬間がどれだけ夢であって欲しいと思ってもそれは叶わない。
どうやら俺は自分で平穏な生活を壊してしまったようだ。
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最後まで読んでいただき本当にありがとうございます。
この短編は連載化した時のプロローグのようなお話です。
続きが読みたいという方はぜひコメント、ブックマーク、★★★評価★★★をお願いします。
皆様からの声援が大きければ、連載化を進めたいと思います。
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