第111羽♡ はじめての夫婦ライフ(#2 お風呂上り)
「ア~」
脱衣所にある扇風機の羽に向かって声を出すと音が震えたように聞こえる。
子供の頃、誰しも一度はやるというか、暇だとしょっちゅうやってた気がする。
今の俺は完全現実逃避モード。
できれば今から一時間前の記憶をごっそり消したい。
黒歴史どころか、黒歴史よりさらに真っ黒、暗黒歴史というべきか。
赤城さくらとのお風呂はそれほどやばい感じになった。
そのヤバさと言えば前園と温泉に入った時に匹敵、いやそれ以上かも……。
結論から言うと互いの身体を洗いました。一緒にお湯につかりました。
極力見ない様に心がけましたが、身体のあちらこちらが見えちゃいました。
見えちゃいました。
見えちゃいました。
見えちゃいました……リフレイン終了、緒方霞これより暴走します。
うぎゃぁああああ――――――――――――――!
俺たちはもう高校生であって子供じゃないんだよ!?
江戸時代なら結婚してても不思議じゃない年頃なんだよ!
男女で一緒にお風呂なんてやっぱりダメだろうが!
またしても同級生女子の裸を見てしまったぁああああ!!!!
というか最近の俺のプライベートが明らかに狂ってるんだけど!
中尾山で温泉に入ったのは前園を筆頭に、直近でもバスタオル一枚の楓とか、下着姿のリナとか、宮姫は辛うじてそこまで際どいシーンはないけど、キスをする時に胸元の下着が見えちゃったり、スカートがめくれてその先の絶対領域が見えちゃったりとかマジであかんことばかり!
思春期陰キャ男子の脳内に煩悩が溢れていく~~!
どうしたもんだろこれ?
女子の裸を見て許されるのは、同性か家族かカレシくらいだよね?
もし責任取れって言われたら?
しかも被害者はさくらだけでなく、複数人なんだけど
ゲス野郎の俺はもう切腹するしかないのでは?
でも……俺が無理やり裸を見た訳ではないし、あくまで不幸な偶然が重なっただけで。
……って言い訳は良くないな。
先方も納得しないだろうし。
どうしよ!? ド〇〇もん~
なお、背中は洗ってもらったものの、前側は死守しました。
特に下半部の緒方霞第二支部が大変なことになるかもしれなかったので、というか大変なことになりかけていたので!
平常心を保つため、他のことを脳内に妄想し展開……見た目はイケメン中身は残念な水野深と実は彼女持ちリア充メガネ男子広田良助のヤロー二人が花畑できゃっきゃっうふふしてる図を想像して煩悩が吹っ飛ばします。
ありがとう水野そして広田
あとなんかごめん……。
それにしても
さくらすっかり大人になってたな……。
すらりとした白い肢体は黄金比と言って良いほど均整がとれており、腰回りは折れてしまいそうなほど細いのに出るところはしっかり出てる。ちょっとだけ見えちゃった胸は上向きで形がよくて……。
でも、おしりの小さなほくろは昔と変わってなくて……ってうわぁああああああああ!
さくらごめん。
できるだけ見ないようがんばったけど、やっぱり見えちゃった!
しっかり緒方霞脳内SSDに保存、上書きされちゃっいました。なお一度保存すると削除不能です。
「でもまぁ……良かった」
理性は本能をギリギリで勝り何とか抑えたので何とかセーフのはず。
かなり危なかったけど。
「……何が良かったのカスミン?」
「え――!? ツカサさん?」
いつの間にか、さくらと似た美貌を持つさくらママことツカサさんが目に前に立っていた。さくらとの違いは、さくらの方が身長が高いことと、髪の色がさくらがレッドブラウンなのに対しツカサさんは黒髪、さくらが控えめなのに対し、ツカサさんは特盛。
「さくらちゃんが真っ赤な顔で浴場から飛び出してきたのに、カスミンがなかなか出てこないから様子を見に来たんだけど……どうかした?」
「何かあったも何も……ふたりでお風呂は超絶気まずかったですよ」
「で、若気の至りで行くところまで行ってしまったと」
「行ってません!」
「え? うそ? マジで!?」
信じられないという顔をしたギャル口調のツカサさん、女子大生と言われても何ら違和感がない見た目をしている。初めて会った時からこんな感だけど、セレブは秘薬でも飲んでて歳をとらないのか?
「大マジです!」
「え――――――――――!? 最近の若い子大丈夫? ムラムラは? 大丈夫ジャパン!?」
「……大丈夫です。あとジャパンは関係ないです」
「ありえない、ありえないよカスミン! なので追試を課します」
「何ですかそれ!?」
「これからもう一度わたしとお風呂に入って、パパにも好評な秘密の手管、ご奉仕をします。カスミンは眠れる野生を覚醒させてその後、入浴後、勢いのままさくらちゃんの寝室へ! というわけで脱ぎ脱ぎ~」
「ちょっと何を言ってるんですか!? いきなり脱ぎはじめないでください! こんなところさくらに見られてたら余計にややこしくなるでしょうが!」
「うーん。それもそうね。カスミン頭良い~でも一緒に脱ぎ脱ぎ~♪」
「だから俺を脱がそうとしないでください!」
「え~~~~~~どうしてよ!?」
「どうしてもこうしてもありません。俺そろそろ行きますんで、じゃあ」
「ちょっとカスミン~」
脱衣所にツカサさんを残し俺は飛び出した。
全く何を考えるんだ、この人は……
あてがわれた寝室に戻る途中で頭の中を整理する。
先に脱衣所を出たさくらは自室に戻ってるはず。
今すぐ会うのはきまずい……。
でも明日になれば普通に話をできるかと言えばそうでもない気がする。
考えがまとまってなくても、寝る前にもう一度さくらに会わなければいけない。
俺は明後日までに少しでもさくらとの距離を縮めるために今ここにいる。
距離が広がっては意味がないのだ。
さくらをもっと知って仲良くならなければならない。
よし――
コンコン――。
覚悟を決めた俺はさくらの部屋をノックする。
――返事はない。
あれ? ひょっとして部屋にいないのだろうか?
時刻は午後10時を回っている。こんな時間にどこへ行ったのだろう。
「緒方様、お嬢様でしたら執務室にいらっしゃいますよ」
恐らく30代くらいの女性の使用人さんにそう声をかけらえた。
「ありがとうございます。すみません執務室ってどこですか?」
「2階の一番奥になります。宜しければお連れしますが」
「お願いします」
四階建ての赤城家の母屋は何部屋あるかわからないほど沢山部屋がある。
以前はもっと多くの人が暮らしていたし、住み込みの使用人さんも沢山いたらしい。
最近は夕方になるとほとんどの使用人さんは普通の会社員と同じように帰宅するそうだ。
コンコン――。
「失礼します。お嬢様よろしいでしょうか」
「ええ。大丈夫よ」
歴史を感じさせる執務室のドアの向こう側で、机の上にディスプレイを4つほど並べ、黙々と仕事をこなすさくらがいる。
「悪いさくら、ちょっと良いか?」
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