番外編第1羽♡ 不機嫌な天使達
天気のいいある日の放課後のこと……。
「どうしたリナ……わざわざ学校で俺を呼び出すなんて」
「ごめん兄ちゃん実は気になってることがあって、天使同盟のことなんだけどさ」
「おう……」
緊張感が一気に上がる。
天使同盟、堕天使遊戯、非公式生徒会、天使メール……これらついては堕天使遊戯の関係者同士でも話してはならない。
それが堕天使遊戯のルールだからだ。
たとえ俺とリナが兄妹のような関係でもそれは同じ。
こうしてリナが接触を図ってくること自体が非公式生徒会のシナリオでは? と疑ってしまう。
これまでの経緯から、良くないパターンばかり頭に浮かび警戒心だけが増していく。
リナの表情も緊張してるように感じる。
「あのさ……わたしの『気ままな天使』っていう天使名なんだけど……」
ゴクっと喉が鳴る。
「なんていうか……」
ん? リナは何を言おうとしてるんだ?
「アホっぽくない?」
「……はぁ?」
「だってさ、赤城さくら『
気ままってなんだよ!? 普段は何も考えてないみたいじゃんか!」
「今まで何か考えて行動してたのか?」
「いいえ……全てその場のノリだけでやってます」
「じゃあ別に良いじゃないか、でも学校の勉強とか将来の事は真面目に考えろよ。
それはそうと『気ままな天使』だと何か問題があるのか?」
「学園内を歩いてて突然『あれは気ままな天使!』とか『おはよう気ままな天使ちゃん』とか言われるのを想像してみて、どうリアクションして良いかわからないから」
「確かにそれはきついかも」
「そぉーナンス! そもそも天使名って微妙に
でも一番の問題は他の天使達と比べて『気ままな天使』ってネーミングが雑すぎない?」
「言われてみるとそうかもな」
「どうせならもっとカッコいい名前つけろよぉおコラぁ! 責任者出てこーいや! このボケがぁ」
天使名を決めたのは非公式生徒会だよな。
リナが叫んだだけで非公式生徒会が出てくれば苦労はないけど。
「大人しくしなさいなリナ、淑女は常に華麗に振舞るべきだわ、下品の物言いは以ての外よ」
「出たな『櫻花の天使』赤城さくら!」
「もう一度その名前で呼んだら
「さーせんでしたぁあ!」
「さくらも天使名に不満があるのか?」
「不満も何も……赤城さくらで『櫻花の天使』ってそのまんまなのよね。さくらが
「そう言われると微妙だけど、さくらも学園内で『櫻花の天使』って呼ばれることがあるのか?」
「天使同盟が発表された五月初旬は、興味本位で何度か呼ばれたけど、耳障りだから腕力で黙らせたわ」
「……できれば問題解決をする場合は平和的な手段を使ってほしいな」
「無用よ! わたしは『引かぬ! 媚びぬ! 顧みぬ!』をモットーに拳だけで前に進むわ!」
「俺的には『友情! 努力! 勝利!』で頑張ってほしいんだけど」
「悪い……緒方、オレも『放課後の天使』っていうのはちょっと」
「前園? お前もなの?」
「いつも終業後は大抵アルバイトがあるから、さっさと教室を後にするんだけど、『放課後の天使』って名前のイメージからか、遊び回ってると勘違いしてる人がいて、毎日のようにゲーセンやカラオケに行くのを誘われる」
「なるほどな、毎日付き合うのはさすがに無理として、たまに息抜きで付き合えばいいんじゃないか?」
「緒方はオレが他のヤツと遊びまくっても平気なのか、寂しいな~」
「えっ!? それは……」
「言いたいことは、はっきり言ってくれ、遊ぶのは俺とだけにしろとか」
「じゃあ……」
「ダメよ! お凛……前園さん! 緒方君はエロエロポンコツ腐れ男爵なんだから! 校外でふたりきりは全面禁止!」
「おぃすずすけ~別にいいじゃん。というかオレより緒方とふたりきりでよく会ってるだろ?」
「わたしはいいの幼馴染だし、何よりド変態緒方君のキモい生態を把握してるから」
「ふーん、つまり緒方のことは何でも知ってることか……なんかエロい響きだな」
「そんなことない! 保育園の時、一度だけお風呂に一緒に入っただけだし」
「へ~そうなんだ。やるじゃんすずすけ! お風呂のこと聞いてないけど」
「う~」
「宮姫も天使名に不満があるのか?」
「うん……『癒しの天使』とか言われても、何をどうすればいいの? 誰にでも優しくできるわけじゃないし癒しなんて与えられない」
「すずは兄ちゃんにいつも塩対応で優しくないよね」
「リナそれは違うわ、すずはカスミ君とふたりきりの時は恐らく超デレデレなのよ」
「うわっ、そうなのか……すずはデレデレエロスだからそのうち勇者パーティから追放されるけど虎視眈々とざまぁを狙うと……メモメモ」
「リナちゃん……その意味不明なメモ何のため? あとわたしは全然エロくないから!」
「ねぇ皆仲良くしようよ……カスミも黙ってないで、皆を止めて」
「すまん楓、ちなみに『月明かりの天使』って天使名をどう思う?」
「皆と同じで急にそう呼ばれるようになったから困ってる、これまであだ名を付けられたことがないし」
「いいわね望月さんは……わたしなんて『櫻花の天使』の他にも『鮮血の死だれ桜』とか『ミス・BADエンド』とか呼ばれて散々よ」
「赤城さんは確かに大変そう」
「さくらは、入学早々血生臭い武勇伝を次々と作ったからな」
「何か言ったかしらカスミ君?」
「いえ……何でもないです。楓は天使名のどんなところが気になる?」
「わたしの天使名は恐らく苗字由来だと思うんだけど、カスミとすずちゃんは知ってる通り、ちょっと前まで"望月"じゃなかったから変な感じ」
楓は一年前に両親が再婚して、望月姓になった。
連れ子同士の再婚のため、お姉さんとは血の繋がりはない。
「望月じゃなかったらどんな天使名になってたのかな?」
「ふっふっふっ、その問いにはこの天使同盟一翼『気ままな天使』のわたしが答えよう。楓ちゃんはずばり『爆乳の天使』になる予定でした!」
「えっ!? そんなのやだよ!」
「なるほど……楓のおっぱい、デカいし柔らかいしで女のオレから見ても超エロいから納得」
「ちょっと凛ちゃん何を言ってるの!?」
「異論はないわ……それに望月さんのこれまでの言動からして、わたしたち五人の中で一番エロいのも間違いない」
「ちょっと赤城さんまで!? すずちゃんはそんなこと思ってないよね!?」
「もちろんだよ楓ちゃん! でも更衣室で着替える度に思うんだけど下着の持ってる枚数、多すぎじゃない? 毎回違うヤツだし」
「それは姉さんにいつどんな時でも困らないようにかわいいのを沢山持ってた方が良いって言われたから」
「楓、困るシチュエーションってどんなの? 詳しく教えてくれ」
「意中の人の前で服を脱がなければいけないくなった時に……ってそんなこと言えるわけないじゃない!」
「楓ちゃんはムッツリドスケベですな。大人はこわい、わたし良い子」
「そうよリナ……大人なんて頭の中は皆、ピンク一色なのよ」
「ちょっとやめて! そこの女子サッカー部のふたり! カスミはそんなこと思ってないよね。わたしのことどう思う?」
「え? 俺はそう……あれだ」
「うん……」
「すみません。黙秘します」
「ふむ、黙秘は肯定と見なすよ兄ちゃん。これにて裁定は下された。『月明かりの天使』こと望月楓はムッツリドスケベである、本日より天使名を『爆乳の天使』とする。これは決定事項なので
「どうしてそうなるの!?」
「キミがちっぱいの苦しみを知らず、いつもその推定Fカップをプルンプルンさせているからだよ! ……いいもん。別に羨ましくなんてないもん。
ゴホン失敬……さてそんな罪深き『爆乳の天使』よ、早速だがキミに最初の試練を与えよう。
このちょっとずれるだけで色々と見えてしまいそうな神具『スーパーマイクロ堕天使ビキニ・チョベリグむっちり透け仕様タイプホワイト』に着替えて縄跳びの交差二重跳びを連続で百八回やりなさい。
「楓~このビキニだけどマジ凄いぞ。素っ裸と大差ないというか素っ裸よりエロいかも、オレには無理」
「スタイルのいい望月さんなら大丈夫よ。がんばってくださいな。わたしも無理ね」
「楓ちゃん……ごめんね。わたしもこれは着たくない」
「ちょっと待って凛ちゃん、赤城さん、すずちゃん! やだよ! わたしだって無理だよ!
ねぇリナちゃん、冗談だよね?」
「決定事項だ爆乳の天使。諦めたまえ」
「いや……こんなの着るの。
交差二重跳びできないし、この水着姿を誰かに見られたらもうお嫁に行けない。
やだ。やだ。いや――絶対いや~!
カスミのエッチ~バカぁ――!」
――バチィイ~~ン!
「何で俺ぇえ!?」
楓から繰り出された強烈なビンタが俺の頬を叩いた。
「すげぇ! 兄ちゃんが三メートルは飛んだ」
「ん~楓を怒らせると恐いな、気を付けよう」
「えぇ……そうね」
「緒方君生きてる? 首の角度がおかしいけど」
今日も天使たちは俺を悩ませる。
翌日以降、楓のことを『爆乳の天使』と呼ぶヤツはいなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます