異世界ミリタリー~~ガンズハーレム~~
@yuuki009
第1章 冒険の始まりと最初の仲間
第1話 チート付き転生
『ミリタリー』。
それは軍、軍隊という意味を持つ単語であり、複合系では軍隊の、軍人の、という意味を持ったりもする英単語だ。そして日本ではそう言ったミリタリー系の物、例えば銃や大砲、戦車、戦艦、戦闘機から迷彩服などなど、そういった物が大好きな人たちの事をミリタリーオタク、略称『ミリオタ』なんて呼んだりしている。
そして、俺もそんなミリオタの一人だ。ゴツい戦車に憧れを見出し、音を切り裂き飛ぶ戦闘機の姿に見惚れ、雷鳴のように砲声を轟かせる戦艦の姿に歓喜で打ち震える。
そんな中でも、俺は銃器が特に好きだった。
『銃火器』。現代戦争及び戦闘や紛争における人間の武装。中世以前の歩兵や騎馬による集団戦闘に幕を引いた武器だ。
その登場以降、数多の進化と発展を繰り返し人の武器のスタンダードとなった銃。それが、俺の特に好きな物だ。
そんな銃大好きミリオタの俺に、ある日転機がやってきた。それは唐突で、本当に突然の事だった。
それは学生の俺が、ある日学校から帰宅している時に起こった。
夕暮れの都市部。駅へと向かう大通りの交差点には、俺と同じように学生服姿の者や重そうなスーパーの袋を下げた子ずれの主婦らしき人。仕事終わりなのかスーツ姿のサラリーマンらしき人たちが集まり、ごった返していた。
皆それぞれの家に帰るために、駅を目指していた。信号が変わって、皆歩き出した。そんなの夕方の駅前じゃいつも通りの光景だ。
けれど、その日は違った。 そんないつも通りをぶち壊したのは、暴走したトラック。
途端に悲鳴が上がり、皆我先にと逃げ出す。
「あっ!」
そして人の波が、女の子を突き飛ばしその場に倒した。残された道の真ん中で泣き出しそうにしている女の子。
「あっ!!」
母親らしい人が子供が居ない事に気づいて振り返り声を上げた。戻ろうとしているが、人の波がそれを押し返す。
そしてトラックが女の子に迫ったその時。……俺が彼女を突き飛ばして、結果俺の方が死んだ。
~~~~
「ほれ、早う決めんかい」
「わ~ってるってっ!ちょっと待ってっ!」
そんなテンプレ的な、最近のよくありがちなラノベの死に方をした俺を待っていたのは、これまたテンプレ的な展開だった。
死んだと思ったら真っ白な空間に居て、そこに突如として現れた『神』を名乗る謎のおじいちゃん。そして神様は俺にこれまたテンプレ的な事を言った。
まぁ要約すれば、『子供助けたから『
これまたホント、テンプレ的な展開だわ。……正直、最初は家族の事とかいろいろあって取り乱したけど、今はもう大分落ち着いてる。……というより、考えないようにしてるって言った方が良いんだけど。
ともかくっ、俺は今転生に当たって、どんな能力を持っていくか思案していた。が、案外悩む事は無かった。
「なぁ神様」
「ん?なんじゃ?」
「例えばの話だけどさ。俺に『あらゆる軍事兵器や軍事物資を召喚する能力』と『それらを扱う知識』の2つをセットで俺に与える事って出来る?」
「ふむ。別に不可能ではないが、理由を聞いても良いかのぉ?」
「理由?まぁ別に大した事じゃないけどさ。俺はミリオタなんだ。だから銃火器とかはエアガンとはいえ触った事はあるし、大体の構造だって分かる。片や剣や弓、槍なんて触った事も無いから使える気しないし。魔法の適正、とかで少し悩んだけど、やっぱり俺はミリオタなんだ。だから、そういった軍事兵器や軍事物資を召喚できる力が欲しいのと、知ってると言ってもすべてに精通してるわけじゃないから、知識が欲しいんだ」
「成程のぉ。まぁ、それくらいならよかろう」
「えっ!?マジでっ!じゃあそれで頼むわっ!」
実質、特典2つだから無理かな?って思ってたけど神様からOK出たから良かったわっ!
「分かった。しかし良いのか?」
「ん?何が?」
「お主がこれから転生する事になる世界については、先ほど話したな?」
「あぁうん。魔法あり、モンスターあり、世界観のベースは中世前後の、ありふれたファンタジー世界だろ?」
「さよう。しかしそれなら魔法への適正という選択肢もある。実際、お主らの日本男児ならそう言った物に憧れるであろう?今時のラノベ的に」
「はは、まぁなぁ」
なんで神様がラノベ知ってるんだ?なんて思いつつも俺は笑みを浮かべる。
「まぁ確かにさっきも言った通りそれで悩んだりもしたけど、やっぱり俺はミリオタだ。それにこんな機会でも無けりゃ現代日本に住んでた俺には、本物の銃に触れる機会なんてまずない。それに、ファンタジー世界で銃火器を扱えるとなりゃ、それは他の誰にも持ちえない俺一人の持ち味にもなるし。まぁ、1番の理由を上げるなら俺は魔法より銃火器の方が好きってだけさ」
「成程のぉ。まぁ、それがお主の望みなら叶えてやるだけじゃわい」
神様は頷くと、手にしていた杖を振るった。すると俺の足元に魔法陣が現れ、その魔法陣から現れた2つの光球が俺の中に飛び込んできたっ!
「お、おぉっ!」
次の瞬間、『理解』したっ!今まさに俺の中に力が与えられたっ!
「さて、これで準備は整った。お主を異世界へと転生させるが、良いな?」
「あぁっ!やってくれっ!」
「では……」
神様の杖の石突が真っ白な地面をたたいた。甲高い音が響き渡った直後、俺の意識は一瞬にして途切れた。
そして……。
『おぎゃぁっ!おぎゃぁっ!』
次に気づいた時には、俺は赤子として新たな世界へと転生していた。
『ははっ!本当に転生したんだっ!よしよしよしっ!』
魂は前世のまま。けれどまだ体が赤ん坊のままだからか、体の方は思い通りには動かせなかった。けれど俺の心は、歓喜に打ち震えていた。
『本当に異世界に転生したんだっ!やったぜっ!ははははっ!』
体を動かす事は出来なくても、心だけはその現実に喜び震えていた。
そうして俺は、テンプレ的な異世界転生を果たす事になった。
その転生が何を意味するか、予想外の戦いが待っている事など、知りもしないまま。
~~~数年後~~~
元ミリオタ日本人で転生者の俺、『カイト』。あの日異世界に転生した俺を待っていたのはファンタジーに満ちた世界だった。
文明レベルは俺の世界の中世ごろ。魔物と呼ばれる怪物が存在し、冒険者と呼ばれる職業が存在し、魔法が存在する、王道的なファンタジーの世界だった。
俺はそんなファンタジー世界の農村に生まれ、第2の両親、第2の家族の元で育った。そんなある日。
ある日の昼下がり、俺は一つ下の弟である『リック』を連れて村から少し離れた所にある川に、魚釣りに来ていた。もちろん食材確保のためだ。こんな田舎の農村じゃ、食料は殆ど自給自足。肉は獣を狩り、魚は皮で釣って来る。野菜は畑で育てる。 んで、今日俺は弟を連れて魚調達の為に川に来た。
「ねぇねぇカイト兄ちゃん」
「ん~?どうしたリック」
2人して岸辺の少し大きな岩に腰かけながら川に向かって釣り糸を垂れていた時。隣にいたリックが話しかけてきた。
「どうしてカイト兄ちゃんはいっつも腰に、その変なの下げてるの?」
純粋な好奇心に満ちた瞳で、可愛らしく小首を傾げながら問いかけてくるリック。しかし。
「おいおいリック、そいつは聞き捨てならないなぁ。こいつは変なの、何かじゃないぜ」
我が弟の言葉を正すように俺はゆっくりと首を振りながら、腰に巻いたベルト、から下がっている『ホルスター』に収められていたそれ、『M1911A1』を取り出した。もちろん弟に銃口なんか向けないし、セイフティも外さない。
「こいつの名はM1911A1。俺が知る限り最も有名なハンドガンだっ!」
「有名なの?どうして?」
我が弟リックは小首をかしげて問いかけてくるっ!うむっ!問われたからには答えないとなぁっ!
「良いかリックッ!そもそもM1911A1というハンドガンはだなっ!銃器設計における天才、ジョン・ブローニングが生み出した傑作自動拳銃なんだよっ!このM1911が生産される前、アメリカ軍は米西戦争においてそれまで軍の標準装備だったリボルバーと38口径の弾丸では相手を止めるストッピングパワーが不足している事を実感したっ!そこでより威力の高い弾丸を作ろう、という話になりそこからM1911が作らわれた訳なんだが、そして1911年に米軍で正式採用されると、その座をM9に譲る1985年までに実に70年以上の間米軍正式拳銃として使われ続けたのさっ!ちなみにこれはかなり異例で、軍に置いてこれほど長く正式装備となっていた銃は少ないんだぞぉ!後はまぁ採用当初から今も現役のM2重機関銃くらいかぁ?いやまぁ軍の正式装備として息の長い銃は他にもあるが、しかしそれでもM1911の70年以上という数字は、やっぱりちょっととびぬけてるんだよなぁっ!……って事で分かったかリックッ!」
「……ぜ、全然?」
熱い口調で語っていた俺は弟の方に振り返るが、肝心の弟は大量のハテナマークを浮かべながら小首をかしげていた。……どうやら俺の銃の知識口座は意味が無かったようだ。うぅ、それはそれでちょっと悲しい。誰も銃のすばらしさを分かってくれない。……まぁ、銃なんてものがそもそも存在しないこの世界だと、仕方ないんだけどなぁ。
「僕、お兄ちゃんの言ってる事の半分も分からなかったよ」
「そ、そうか。まぁリックにもいずれ分かる時が来るさ」
ため息をつきたくなるのを必死に抑えながら、俺はそうつぶやいた。
その後も、魚を釣りある程度の数を捕まえると俺はリックと共に家に戻った。こんな風に俺は、新たな世界で農家の息子の一人として暮らしていた。
だが、それも後少しだった。
それから1年後。俺は16歳になった。その時、俺は親父たちに聞かれた。『これからどうするんだ?』と。
この世界では16歳で成人とみなされる。そして農村部では成人となると、そこが一つの分岐点となる。こういった農村部だと、選択肢も限られている。それは大まかに分けて二つだ。
一つ目は育った家に残り、両親や兄弟と共に農家を続ける事。二つ目は育った家と村を出て、外の世界。つまりこことは違う場所で仕事を探す事。親父たちのどうするんだ?というのは、詰まる所どっちを選ぶんだ?と聞いてるような物だ。
「俺、冒険者になるよ」
そして俺は、後者を選んだ。
「……そうか」
俺の言葉に、親父はそう頷くだけだ。それ以上は、親父も兄貴たちも何も言わなかった。
実の所、俺が冒険者になるって話は前々からしていた。だから親父や兄貴たちは、ただ頷くだけで、何も言わない。ただ、弟のリックと母さんだけは、悲しそうな表情を浮かべていた。
それから数日後。俺は村を出る準備を自分の部屋でしていた。
「え~っと、リュックの中に水、MREに治療用のキットだろ~。後は~~」
俺は部屋で床に置いた、こんなファンタジー世界には不釣り合いな迷彩柄のリュックの中を覗き込み、荷物を確認していた。
俺に与えられたチート能力は、あらゆる軍事兵器や軍事物資をリスクなしで召喚する事が出来る。俺はこれを『兵器工廠』なんて呼んでる。そしてその中には、現代戦の兵士が身に付けるような道具、荷物を入れるリュックやボディアーマー、ヘルメットや電池式のヘッドセット、暗視ゴーグルなどに肘や膝のパッド、グローブから迷彩服も含まれている。
とはいえ、流石に迷彩服は目立つから着ない。流石にファンタジー世界で悪目立ちするそんな恰好は恥ずかしすぎて出来ない。
今の俺の恰好は、私服の加えて膝や肘などにパッド。軍用のコンバットグローブとヘルメット、ヘッドセット、マガジンなどを装備するタクティカルリグを身に付けている程度だ。
で、荷物の確認を終えた俺は、次に右足ホルスターからM1911A1を取り出した。マガジンを一旦抜いて、チャンバーをチェック。初弾は入ってない。それを確認するとマガジンを戻してセイフティを掛けおく。
本当なら即応戦出来るように初弾をチャンバーに装填しておくこともありなんだが、まだ俺は銃に慣れ切っている訳じゃないので、安全のために初弾は装填しないでおく。
M1911A1をホルスターに戻すと、俺はベッドの上に置かれていた銃を手に取った。こいつの名は、『H&K MP7』。PDW、パーソナルディフェンスウェポンと呼ばれる種類の銃だ。
PDWを日本語に訳すと、個人防衛火器となる。このPDWは個人防衛、つまり自衛用の銃という事だ。戦争形態の変化に伴い、戦争において最前線から離れた軍事施設が攻撃を受ける事も多くなったため、そう言った施設で働く、後方要員の兵士たちが自らの身を守るために、という感じの目的で作られた。
それ以前までは主力のライフルやそれを短くしたカービン銃や拳銃、短機関銃が後方要員の自衛用として使われていたが、ライフルやカービン銃は大きくがさばる。逆に短機関銃や拳銃では、それらの問題をクリアできる反面威力や射程に難がある。
結果、小銃よりも携帯性に優れ、短機関銃のように咄嗟に片手でも操作でき、且つ敵のボディアーマーにもある程度の効力を持つ銃、という中々に矛盾している銃が開発される事になり、この定義に当てはまる銃がPDW、という事になった。
MP7はそんなPDWに属する銃の一つであり、伸縮式のストックを畳んだ状態での全長は415ミリ。この大きさであれば、リュックなどにしまって持ち運ぶ事も出来るくらいだ。だからこそ持ち運びしやすいし、何より銃が存在しないこの世界じゃ、ライフルを手に持ち歩いたら目立つ事必死だ。
なので俺はメインをそこそこ威力があり、尚且つ隠し持ちやすいMP7にした。さて、とりあえずこのMP7もリュックにしまって。
俺は最後に大き目のローブみたいな外套を纏ってから、リュックを背負った。これで準備は完了だ。
俺は部屋を出て、家の外へ。 外では両親と兄貴たち、リックが待っていた。
「行くのか、カイト」
「あぁ。行ってくるよ、親父」
「そうか。……辛くなったら、帰って来いよ」
親父は、ただ静かにそういうと家の中へと戻って行った。その去り際、目尻に涙が見えたような気がしたが、頑固親父な所もあるし、俺に涙を見せたくなかったんだろうな。
「カイト、絶対生きて帰って来いよ」
「手紙くらい書いて寄越せよ」
「あぁ。兄貴たちも、元気で」
次いで、少し心配そうな兄貴たちと別れの抱擁を交わす。
「カイト兄ちゃん、行っちゃうの?」
「そんな心配そうな顔するなってリック。兄ちゃんは必ずまた帰ってくるからさ」
今にも泣きそうな弟のリックを抱き寄せ、優しく頭を撫でる。
「絶対だよ?約束だよ?」
「あぁ、分かってる」
弟を安心させるために、俺は優しい声と共に頷く。
最後は、母さんだ。
「それじゃあ、母さん。行ってきます」
「えぇ。どうか、無事に帰ってきてね?時間がある時で良いから、たまには戻ってきて、顔を見せてね?」
「うん。分かった。時間が出来たら、ちょくちょく戻って来るよ」
「お願いね、カイト」
最後に、涙を流す母さんと抱擁を交わすと、俺は家族たちに見送られながら育った家と村を出た。
家族と離れる事はやっぱり悲しいし寂しい。新しい生活にも不安はある。けれど、それでも俺は前に進む。
冒険者になる、これは転生すると分かったその時から、俺の夢だったのだから。だからこそ俺はその日夢を追うために、生まれ育った村を出て旅立った。
これが、俺の物語の始まりだった。
第1話 END
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