めすがきちゃんは幸せになれない

星月 猫

❶幸せと辛さ

辛いという字と幸せという字はなぜ似ているのだろう──

私はどこかの家の室外機の上に座ってそんな考えを浮かべていたらいつの間にかうたた寝をしてしまっていた


なんでだろう足があったかい

暗闇で足が…もふもふしてる?

目を覚ますと

足元には黒猫がいた


ボロボロな…大人猫?にしては小さい気がする


「かわいい…じゃなくて!!」

私は自分の荷物や身体を誰にも襲われて居ない事を確認した。

よかった…ゆーかいもされてない!…


周りをよく見ればそこまで時間も経ってない

荷物もぜんぶちゃんとある

きっと起こしてくれた黒猫ちゃんのおかげだろう

多分私が持っていた誰かの捨てたご飯の匂いに釣られて来たのだろう

出来れば飼いたい…かわいいし…


でもエサをあげたりお世話する余裕は私にはない…

持っていたご飯を黒猫にやり

「ごめんね?…ありがとう!」

と言い残しその場を後にした。


この街では少しの油断も命に関わるかも知れない

だから本当に黒猫ちゃんには助けられたなぁ…


今日はどこで寝よう…今のうちに安全な所を探して身を隠しておきたい

ご飯ももう無いけど今日は諦めよう…

夜は危ないから、、、

また起きた時と同じ感覚が足に触れた

「えっ?」

立ち止まって足元を見るとまた…黒いもふもふが居た。

「にゃー」

「私お世話出来ないよ…」

エサをやったせいで懐かれたのかもしれない…

「どうしよ…」


よし…!走って逃げれば着いて来れないはず!

よーい…どんっ!

私は走り去って黒猫と別れを告げた───

ハズだった…


「なんで付いてくるの!?私お世話出来ないよ?」

「にゃー」

分かっていないはずなのに返事が来て驚いたが引く気は無い

猫に対して更に畳み掛ける

「エサあげれないよ?」

これなら流石に…いくら猫でもエサ、という単語はきっと理解しているはず

「にゃー!」

真っ直ぐな黒猫の眼差しに私はつい

「それでもいいの?…」

と言ってしまった。私の負けだ…

「にゃっ!」

いつの間にか言葉が分かるはずの無い猫と会話していた。

そもそもエサをあげてしまった時点で私の負けだったのかもしれない

仕方ないなぁ…


「これからよろしくね?」


こうして1人の生活に1匹の仲間が出来た。

私には初めての仲間だった。

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