なんだこのギルドネカマしかいない! Ψギルドごと異世界に行ったら実は全員ネカマだったΨ

剣之あつおみ

旅立ち編

第1話 まさかの異世界に!

MMORPG〖ソーサラーマスターオンライン〗こと〖SMO〗は日本で作成された世界初の音声認識変換マイク付きフルフェイスマスク型インターフェイスを装着し没入感溢れるVRMMOオンラインアクションが楽しめると話題を呼んだゲームである。


超有名声優を200名以上起用し好きな声優にそっくりな声でボイスチャットが出来る機能が有り、発売当初は国内外問わず「同時接続数400万人」を突破し社会現象にもなったゲームである。


しかし無課金状態ではキャラクターメイクの自由度が低く、微妙に高スペックパソコンが必要。


パソコン性能や接続環境によっては戦闘中のラグも多く、操作性の難しさやゲーム内インターフェイスも出来も古臭いと口々に言われる様になっていく。


そしてクエストはお使いイベントが多く、非課金状態では追加イベントも少ない上にレイドクエストも「新規お断り!」とボイスチャットで罵声を浴びせるユーザー達が多数増え治安は悪化。そのくせ高額ガチャだけは毎週更新という素晴らしいゲームであった。当然、新規プレイヤーが増える事は無く徐々に接続人数は減り、SMOは少しずつ衰退していった。


サービス期間3年が過ぎた頃に「オンラインゲームサービス終了」の告知が発表された。


しかし、そんなゲームでも仲間と共に好んで続けている酔狂な人々がいた。


仲の良いメンバー6人で形成されたリアル女性限定小規模ギルド〖深紅の薔薇〗。


最大人数は52人だったが、あまりに微妙なゲームの為次々と引退者が続出し最後に残ったのが仲の良い6人。


デバッグもろくに出来てないクエストが増え、毎回緊急メンテナンスが当たり前になりつつ有り、常時接続人数が減り続ける。


ガチャによる資金回収も減り運営採算に限界が来たのか約三年半続いたこのゲームにもサービス終了の日はやってきた。


〖深紅の薔薇〗主要メンバー:プレイヤースキルS(高)~D(低)


●ミカエル=アルファ:人間種ヒューマン♀ 

職業:ロード ◇ギルドマスター

東京都出身。21歳女子大生。総合接続時間5500時間以上、天使長をモチーフにしたキャラクターメイク。金色のストレートヘアーにベース衣装は白に統一し黄金色の鎧を装備し白銀に輝く天使の翼。全身が輝くエフェクトのオプション。聖剣【ウリエガノン】を装備。丁寧な口調と穏やかな中に芯がある性格でギルドメンバーからの信頼も厚い。攻撃力特化にカスタマイズされた生粋の前衛職。プレイヤースキルA、累計課金額20万円以上。


DOSドス機械種アンドロイド♀ 

職業:スナイパー ◇サブマスター

大阪府出身。36歳自営業既婚。総接続時間4700時間以上、細身アンドロイドタイプ。赤い髪の短髪に全身黒ラバースーツタイプのボディスーツに黒色をメインにした迷彩マントを羽織ったキャラで長距離ライフル【シャランガーナ】装備。基本冷静沈着で無口。射撃力重視にカスタマイズされた攻撃特化型スナイパー。プレイヤースキルS、累計課金額280万円以上。


SAKURAさくら人間種ヒューマン♀ 

職業:サムライ

北海道出身。21歳会社員。総接続時間2500時間以上、黒髪ポニーテールで額に鉢金を装備。桜模様の武士衣装に身に包んで、長刀【乱れ桜吹雪】を装備。桜の舞い散るエフェクトのオプション。口調も武士ロールプレイでギルドの「いじられ役」兼「お笑い担当」。攻撃・敏捷を重視したカスタマイズ。近距離物理攻撃主体。プレイヤースキルB、累計課金額100万以上。


●暗黒神ハーデス:闇妖精種ダークエルフ

職業:ソーサラー 

千葉県出身。26歳会社員。総接続時間15000時間以上、浅黒い肌の色に黒色ストレートの長髪。全身黒の法衣を装備、暗黒オーラのエフェクトがキャラクターを覆っている。長杖【カドゥケウス】を装備。性格は厨二病を拗らせているロールプレイで自称暗黒神の生まれ変わりらしい。攻撃魔法特化にカスタマイズ。範囲・単体攻撃魔法を得意だが防御力は紙。プレイヤースキルC、累計課金額400万以上。


伊集院咲耶いじゅういんさくや妖精種エルフ

職業:アークビショップ 

岩手県出身。29歳デイトレーダー。総接続時間10000時間以上、色白の肌色で緑色のショートボブに赤い【OLスーツ】を着用、武器は電撃属性の大槌【雷槌ミョルニル】を装備。「です、ます」調の丁寧な口調で喋るが攻撃的趣向が有る。攻撃力特化カスタマイズしたヒーラーで物理攻撃、回復魔法、補助魔法を得意とする。プレイヤースキルA、累計課金額不明。


忍人忍にんにんしのぶ人間種ヒューマン

職業:忍者 ◇主人公

鳥取県出身。17歳女子高生。総接続時間2000時間以上、黒髪ショートに黒い忍者装束を身に着け懐に小太刀【五月雨さみだれ】、背中に長刀【村雨むらさめ】、【クナイ】や【手裏剣】を多数装備。忍術等の多彩な特殊技能スキルを使う。性格は明るく、話が大好き。物事を深く考える割に軽率。このゲームを約1年間存分に楽しんでいる。敏捷性特化・回避重視のカスタマイズ。プレイヤースキルS、累計課金額11万円。


SMOはフルフェイスタイプのヘッドマウントディスプレイを装着し臨場感あふれるサウンドとリアルなグラフィックが売りのVRタイプのアクションMMORPG。


人気声優200名を起用しボイスチャット時に設定した自分好みの声優の声に自動変換される機能が画期的でサービス開始時は大ヒットした。


驚く事に男性が人気女性声優の声、女性が人気男性の声で喋れる。


その機能を悪用して卑猥な台詞を言ったり、本人のなりすましや犯罪に活用されたりと参加声優にマイナスイメージを与えるなどの問題も発生した。


悪い意味でもバズり、裁判等も起きて小さな社会問題にもなった話題のゲームだった。


私こと〖相葉忍あいばしのぶ〗は商業課の有る高校入学祝いにパソコン込みフルセット価格で約30万円もするSMOを親に頼み込んで買って貰い、このゲームが「本当人生」とも思えるくらいハマっていた。


学校では特にイジメられていた訳でも無く、かといって仲の良いグループや親友と呼べる存在も無く目立たない、ただ教室に居るだけの存在程度の扱いだった。


学校が終わると即行で帰宅し、宿題・食事・トイレ・睡眠以外は常にログイン。ゲーム開始当初はネットストーカー被害等を想像して怖かったが加入条件が「リアル女性限定」という珍しいギルド〖深紅の薔薇〗を発見し所属する。


年齢差を気にせず様々な世代の人々と楽しく会話をしながらゲームが出来るので、その世界感に没頭していった。


約2年ゲームを続けレベルもカンスト、プレイヤーとしての操作スキルもかなり上達した矢先に、3周年を迎えたこのゲームはサービスを終えようとしていた。


-サービス最終日-


ゲームサービス終了まであと5分。


この日ばかりは引退した人や普段ログインしてなかった人も挙ってログインし普段とは比べ物にならない位賑わっていた。


大きなロビーや各種フィールドに集まり思い出や世間話、次にどのゲームに行こうか等オープンチャットで盛り上がっていた。


声優機能によるボイスチャットが主流だが、キーボード入力による通常チャットもプレイヤー人数の10パーセント程度は存在する。


〖深紅の薔薇〗のメンバー6人は思い出を語りながらストーリーモードをプレイしていた。


ストーリーモードは専用のフィールドが用意されておりサーバー自体別けられていた。


物語の大筋は宇宙を飲み込む程の力を持った〖暗黒神ザナファ〗が封印されている惑星で生活を営んでいるプレイヤーの〖惑星レナスディア〗。


約100年前から暗黒神の封印が弱くなり始め、暗黒神の封印した土地より湧き出したモンスターが跋扈するようになる。


暗黒神の力が徐々に増大し封印装置の劣化し始めた事も有り暗黒神復活が危惧される様になる。


暗黒神の復活が近い影響でモンスターが活発に活動を始め街の人々に危害を加えるようになり、その鎮圧をする所から物語が始まる。


様々なミッションをクリアしていく中で「暗黒神ザナファ」はプレイヤーキャラクター達が引き金となり封印が完全に解け復活してしまう。


クエストは最大40人まで参加可能で途中参加も出来る。ストーリーモードに関しては、「難易度設定」も選べるし参加人数・プレイヤーレベル合計によりボスの行動や能力値が変化する。


難しいが単独ソロクリアもできる設定になっており誰もが1度クリアはしている。


「RTA」と略されるリアルタイムアタックや「初期装備、ドロップアイテムだけ使用してクリア」する俗に言う「縛りプレイ」等のやり込み動画を投稿するプレイヤーも居る。


そして私達は今まさにストーリーモードの最終レイドボス戦に当たる暗黒神ザナファと戦っている所だった。


プレイヤーキャラクターの10倍以上の巨大サイズで八本腕に蜘蛛の下半身をした怪物で物理・魔法など多彩な攻撃を仕掛けてくる。部位破壊をする事でレアアイテムを落し易くなるが攻撃力が上がり行動パターンが変化する。


「あと1分超ギリギリだ!」


「ふん、余裕だ!我が深淵を見よ!」


「最高難易度だと慣れていても結構キツイね。」


「右腕破壊!頭部集中!」


「咲耶殿も攻撃に回るでござる!」


「了解です!」


他のオンラインプレイヤーは別サーバーでサービス終了カウントダウンを行っていた。


10、9、8、7、6、5・・・オープンチャットでは「88888888888888888」や「おつかれー!」とか「またねー!」とかこのゲームを楽しんできたプレイヤーの声で溢れていた。


暗黒神のヒットポイントゲージはあと1ミリ、時間ギリギリ!


「トドメを!」「はい!」「了解!」


「りょ」「ああ!」「我が暗黒の力で虚無へ帰してやろう」


ギルドマスターのミカさんの声で、パーティーメンバー全員で1番ダメージの通る特殊技能スキルを使用し暗黒神の頭部へ攻撃を集中したたみ掛ける!


「オオオオオオオオオオオオオオオ!」


暗黒神の雄叫びと共に視界が大きく揺れ、画面が輝く!こんなエフェクトあったかな?真っ白な視界の中で意識が遠のく感じがした・・・


数分?数時間?視界がぼやけ、意識がはっきりしない。


寝落ちしていたのかな?あれ?ヘッドマウントディスプレイを外そうとしたら被っていない事に気が付いた。


それどころか辺りを見渡すと爽やかな風が吹く草原だった。天気は晴天。遠くに森が見え、どこか地元の風景に近い感じがする。自然が織成す草原独特の匂いが鼻腔を擽る。


「あれ?ん?おお?」


良く分からないが違和感が有る。

いや、ゲームしていたのに??掌を見ながら指を握ったり開いたりしてみる。

自分の服装を見るとゲーム内で自身のキャラクターが着ていた衣装に似ている。

黒い忍者装束のマスク部分をずらして頬を抓ってみる。

いたたたた。


「うん、痛い」


夢じゃない。ああ、あれか最近漫画やアニメで良くある異世界転生的なヤツか?それとも転移?「こ●すば」とか「オ●ロ」とか「転●ラ」とかアレだ・・・


ああ、それだ。


そうか!実は知られて無いだけで良く有る事じゃないか?異世界転生とか転移とかって・・・・我ながら馬鹿な事を考えてしまう。「有る訳無いじゃん」で済むから都市伝説とかそんなので片付けられてるだけで・・・


いやいや、無い無い無い!常識的に!

そりゃ「もし」とか「有ったらいいな」とか想像はした事は有るけれども!

もしかしてゲーム中に急死した的な?


あーでも死んで転生って設定が多いから私の本体は死んだのかな?ってかトイレ我慢しながらゲームしてたからなぁ・・・

ゲームしながら漏らして死んでたらヤバイなぁ・・・・

現状の理解が追い付かずに混乱する。


・・・・まぁ、いいか。よーわからん。頭が混乱して考えが纏まらない。


そう、言わずもがな気が付いた時にはゲーム世界の中に転移していたのだった!

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