第一章 令嬢やめます①
豊富な資源、国土の面積の大きさは富を生み、たった数年ほどで他の
その国で、軍事貴族である
貴族に序列があるように軍事貴族にも序列が存在し、国軍
ロティシュ家は伯爵家でありながら貴族の序列で
そのような名家の
その
それに、まだ幼い私の代わりに、伯爵家を取り仕切る女主人として居てもらえれば良いと。
同情なのか、都合が良かったからなのかは分からないが、義母ソレイヤはとても
そのため、母親が亡くなったばかりで内心は
問題は、義妹だった。
私よりひとつ
そっと
仲良くなりたいからと初めて二人だけにしてもらった午後のお茶の時間、ミラベルは態度を
「今のうちにセレスティーアには言っておくわ。私はこの世界のヒロインなの。
何が起きたのかと周囲を見回したあと視線を
大人ぶっている子どものようで
テーブルをバンバン
「……まぁ」
それ以外に何と言えば良いのか。
厳しくマナーを
「なによ、その顔!? 私は、お、お
お義姉様と口にしたときだけ少し小声でモジモジしていたけれど、やはりご立腹なのかミラベルは再びテーブルを叩きはじめてしまう。
「王族になるのだって夢じゃないんだから……って、
友人たちもお茶会で頬を染めながら同じようなことを口にしていたので、同意するように頷いたのだけれど失敗だったらしい。
「その顔が気に入らないの、って、
「あら……」
顔が気に入らないと言われたので表情を消せばそれも
ミラベルとの対話を
「信じないなら、これからお義姉様に起きる事を予言してあげる」
王子様と結婚する予定のミラベルは、どうやら予言も出来るらしい。
「セレスティーアは来年七歳で婚約するわ。相手は侯爵家の次男フロイド・アームルよ」
我が家はお
けれど、
「でもね、フロイドは婚約者であるお義姉様ではなく私に
「ミラベルはフロイド様のことが好きなの?」
「え、
ミラベルの話はとても良く出来たロマンス小説のようで、もしかしたらそれに自分と好きな人を当てはめているのかと思って
「ミラベルは王子様と結婚するのよね?」
「そうよ」
「フロイド様は王族ではないし、どうしましょう?」
アームル侯爵家は現
けれど、いくらアームル家とはいえ王族にはどうしたってなれない。
顔に当たる前にクッキーを手で掴みお皿の上へ戻し、
「ど、どうもしないわ! 十三歳になったら王都の学園に通うことになるでしょ? そこで私は王太子と運命的な出会いを果たすから」
貴族は皆、十三歳から十七歳までの間は王都にある学園に通うことになっている。それは王族であっても例外はなく、将来に備えての人脈づくりの場としても利用されているので、ある程度の
そもそも、運命的な出会いとはなんなのだろう?
学園の中とはいえ王族には護衛が付く。
王太子
疑問が顔に出ていたのだろう。スコーンの上にたっぷりジャムをのせ
「……ん、王太子は、私に
八年後、十三歳のミラベルに一目惚れをすると言われても、これから数年かけて国で一番の美女にでもならない限り無理な気がする。それなら
「フロイドと王太子の
恋は常識や理性をなくしてしまうものだと言われるくらいなのだから、婚約者ではなく義妹に好意を持つこともあるかもしれない。
でも、家の為に婚約するのだとしたら折り合いをつけ貴族としての義務を果たすべきだし、どうしても無理ならさっさと婚約を解消して私を巻き込まずに二人で支え癒し合えば良い。
王太子殿下に
まだ他にもミラベルは何か言っていたが、
● ● ●
「彼がセレスティーアの婚約者だ」
朝から侍女に
「フロイド・アームルです」
「セレスティーア・ロティシュです」
しかも、よりにもよってフロイド・アームル様。
お父様の対面に座って居るアームル
それをこそばゆく感じながらも、私の対面に座るフロイド様をそっと観察した。
(
貴族の婚約は
一度結ばれた婚約が
先日ミラベルが言っていたことを思い出し、まだ話し続けているお父様を
予言なんてものは信じていなかったが、こうしてフロイド様が婚約者として私の前に現れてしまった。お父様とお
でも、だとしたらミラベルはどうやって情報を得たのだろう。
「もうすぐお誕生日ですね」
「……はい」
笑顔を保ちながら
「婚約
「そうですか」
「セレスティーア嬢の
「はい」
フロイド様が
そして
婚約披露を終えた私は、真っ赤な薔薇のブーケを手にしたまま一人立っていた。
広間の中央では私の婚約者であるはずのフロイド様とミラベルが仲良く
何が起きたのだろうか……?
フロイド様とファーストダンスを踊ったあと、ミラベルが「将来のお
婚約者の
それなのに、お父様もお義母様も招待客も、
「ミラベルに……
まさかと否定してみるが、踊り終えたフロイド様は私のことなど忘れたかのようにミラベルと中央から
「確か、ミラベルが
唖然と立ち
● ● ●
婚約披露から数ヵ月後──。
何度かミラベルをお茶に
『お
『お義姉様は学園で取り巻きを沢山引き連れて、まるで女王様のように
『あとは、フロイドと仲の良い私に
『学園の卒業パーティーでは断罪イベントが……あ、婚約
見て来たかのように事細かに語るミラベルが
そのどれもが妄想ではなくこれから起こることなのだと言われ、前のときのように軽々しく相槌を打つことも、妄想だと聞き流すこともできない。
だって、
微笑みながら私の
婚約してから一年
何度か「
お父様は
お茶会の席はフロイド様とミラベルが並んで座り、私の席は二人の向かい。
そして、一年に一度ある音楽祭。
湖の
● ● ●
そんな
フロイド様とミラベルが小さなお茶会をしている庭園に向かい、アームル家の
「いったい、どういうおつもりですか?」
べったりとフロイド様の
「セレスティーア……、ど、どうとは?」
「そのままの意味ですが? 今日は婚約記念日だからと我が家へお
「うん……だから、その薔薇を」
「本人からではなく、何故侍従から渡されたのでしょうか?」
「えっと……その……」
「本来であれば、こういった物は婚約者本人から
前はそうでもなかったのに、最近のフロイド様は私と目を合わせるだけでこのように委縮してしまうから。
「お義姉様?」
私が悪いのだろうか……と心が折れそうになったとき、ミラベルが悲しげに私の名を呼んだ。
「……何かしら?」
「フロイド様はお義姉様をお待ちしていたのですよ?
「私が言っているのは、プレゼントのお花が」
「直接手渡すのが
「でも……」
「最近のお義姉様は少し怖いです」
「……え?」
「こんなに
「お義姉様はフロイド様から直接貰いたいみたいですよ?」
「うん」
「悲しまないでください。お義姉様は最近ご
「ありがとう、ミラベル」
どうしてこうなってしまうのか……。
婚約したからには仲良くしたいと思っていた私の心を
「はい、セレスティーア」
「良かったですね。欲しかったのでしょう? お義姉様」
婚約者から
ほくそ
答えは
常識的に考えて私が言っていることは
お父様やお母様のように
「
フロイド様の手を
振り返ることなくその場を
そのままお母様が使っていた部屋へ向かい、いくつか思い出の品をハンカチに包んだあと、計画に必要なとある人物のもとへと急いだ。
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