修羅場のさなか突然異世界に召喚されたら番が迎えにきました。今忙しいんですけど!

アキヨシ

第1話

※日本語のみの単語は【】で囲ってます。


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今、人生で最大の修羅場に遭遇してます!


なんでこうなったのか。

ただ運が悪かったとしか言いようがないのかもしれないけど、冗談じゃないってーの!


たまたまよ?

学校帰りに立ち寄ったコンビニで、そんな事件に遭遇するって誰が想像できる!?

いや、無理でしょ!


レジにいるコンビニ店員さんに、「金を出せ!」と包丁を突き付けている強盗。

たまたま店内にいたお客さん。

そして、たまたま店内に足を踏み入れたわたし。


急いで回れ右をしようとしたら、足元が眩しく光ったもんだからつい目を瞑ったよね。

で、気づいたらコンビニも歩道も街路樹も消えていたってわけ。


なんで!!!




「「「おおっ! 召喚は成功だ!

 異世界からの客人が四人!!」」」




わーわーざわざわ、なんか賑やかで、きょろきょろ見回してみた。

現代日本から、突然昔のヨーロッパとかに場面転換したみたいに、人種も服装も違和感ありまくりな人たちがたくさんいたー!!


なんで!?


でも、あれ?

黒い鞄を盾に、後退っているサラリーマンのお兄さんがいる。コンビニ店内にいたお客さんだよね?

そしてコンビニ店員のお姉さんもいた。そして――

視線を転じると、あの強盗が包丁を持ったまんま、周りを威嚇してた!!


え? 待って! つまり、あの時コンビニに居た四人がそのままここに!?


「なんなんだ!? どうなってんだよ!! 金出せよぉ!!」


「いやちょっと、それどころじゃないでしょ!!」


コンビニのお姉さんがもっともな事言った。

だけど強盗は聞いちゃいないみたい。


「なんと血気盛んな勇者様だ!」


はぁ? 勇者とか何言ってんの!

強盗だよ! 強盗犯!!


「大神官! どなたが勇者なのだ!?」


「あのを振り回しているお方です!」




「「「はぁぁぁ!? 【強盗】が『勇者』!?」」」




コンビニのお姉さんと、サラリーマンのお兄さんと、わたしの声が被った。

てゆーか、今この場所にいる人たち誰!?

ここ何処!?


あっ、白いぞろぞろした服を着たおじいちゃんが、強盗犯に無防備に近づいて行くんだけどぉ!?

こうゆうの蛮勇って言うんだよね。


「勇者様、どうかお静まり下さい。ぎゃっ!」


落ち着かせようとしたのか、両手を相手に上下に振って見せたのに、その手を包丁が掠めていったの。

血が飛び散って、おじいちゃんが悲鳴を上げて、別の男の人が引きずって行った。


血を見てパニックになったのか、強盗犯は増々包丁を激しく振り回して、なんか喚いてる。


「金を出せ!! 早くしろ!!」


「無理だって言ってるじゃん!!」


もうレジも商品棚もないのに、“コンビニ強盗”から抜け出せないみたい。

対するコンビニのお姉さん、言い返してるとかスゴイ。

それでもじりじりと距離を取ろうと後退りしている。


うん、本当は一目散に走って逃げたいよね。

でもね、分かる。本能が背中を見せてはいけないって言ってるの。

多分、熊に遭遇した時の注意事項とか思い出してるのかもしれない。熊に遭遇した事ないけど。


「誰か、勇者様をお止めしろ!」


被っていたキャップは脱げたけど、サングラスとマスクで相変わらず人相が分からない強盗犯。

ぶん回してる包丁が、何故だか光り始めているのは気のせいかな!?

まさか、勇者の力が覚醒し始めている……とか? ええ~。


チラッとお姉さんと目が合った。

ムリムリ! こちとらか弱い女子高生。自分の鞄をぎゅっと抱きしめる事しか出来ないからぁ、ごめん、助けるのなんて無理!!


で、チラッとサラリーマンのお兄さんを見た。

変わらず鞄を盾にしてじりじりと後退っているだけで、おそらくお兄さんも戦う事は出来そうもない。


しかし、何だか分からないけどこれだけ人が大勢いても、誰も強盗犯(勇者)を取り押さえようって行動しなくて、ただ右往左往している。

鎧みたいのを着てて、腰に剣らしきものをぶら下げている男の人達がたくさんいるのに!

それ、警棒じゃないよね? まさか木刀とか?

それでも武器らしき物を持っているって事は、それなりに訓練を受けている人たちじゃないの?

まさか本当に映画のエキストラ役だとか言わないよね!?


ちょっと失望していたら、突然ドカン!! ガラガラガラ! と大きな音が鳴り響いて、天井が明るくなった。

びっくりして、何事って振り仰ごうとしたら、目の前に黒くてデカイ人が立ち塞がっていた!

誰っ!?


「こんな所にいたのか。ようやく見つけたぞ、我が唯一、我が『ツガイ』」


「――は?」


突然現れたデカイ人が、目の前で唐突に跪いてそんな事を言い出したら、わたしの取るべき行動は何だろう?


「何者だ!?」とか騒いじゃってるから、ここの人達の仲間じゃないのは分かった。

そして頭に角が生えているのも分かった……てぇ!? 鬼? ええっ!?


しかし呆気に取られている場合じゃない。

まずは強盗犯(勇者)から逃げる方が肝心だ!

なのに――


「我が『ツガイ』、どうか俺の手を取って欲しい」


「今忙しいんで、後にして下さい!」


そう言ったのも仕方がないと思うの。

今、強盗犯(勇者)がどうしているか確認しようと目を逸らしたから、その鬼(?)さんがどんな顔をしていたか分からない。


「……忙しいとは?」


「あれですよ、あれ! 包丁を振り回している【強盗犯】が『勇者』で困ってるんです!!」


何かしらおかしな言葉になっていたけど、構っていられない。

わたしが強盗犯(勇者)を指差したら、あちらもちょっと呆然として立ち止まってたのに、我に返ってこっちに向かって突進してきた!!!


「ぎゃーっっ!!」


可愛くない悲鳴を上げて逃げようとしたのに、鬼さんにぶつかってぽすんと腕の中に飛び込む形になっちゃった!

アッと思ったら視界が真っ暗になって、ドカンと大きな音だけが聞こえた。


あれ? 衝撃が来ないぞ?


「我が『ツガイ』に刃を向けるなど、万死に値する!!」


えっと? もしかして、鬼さんが助けてくれた?

いい人、いやいや『人』じゃなくて、『鬼』かもなオニーさんは、わたしをふんわりと腕の中に囲っている。

初対面でこの状態ってあり得なくない?

でも緊急事態だから仕方ないか?


「このような物騒な所では、落ち着いて話も出来ないな」


わたしの混乱を知る由もないオニーさんがそう言うと、ふわっと体が浮いた。

えっ? なに!? うえ、何か気持ち悪っ。


「ああ! 聖女様ーーー!!」


そんな声を後に、意識が遠退いた。




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※一話目でタイトル回収~(汗


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