第26話 事件の全容
この事件は、愛する母が不幸のどん底に追いやられている姿を見過ごすことが出来なくなった流星の、心の叫び、溜まりに溜まった大人の欲望と身勝手さに、耐えきれなくなった果てに爆発したものだった。
「ママいい加減目を覚ましなよ!」
「一体何の事?」
「俺が知らないと思ってんのか?あんな男」
「……そんな……そんな……子供のクセに何勘違いしているの?」
「ママ俺知っているんだってば。ママと勝のお父さんの関係……ママ遊ばれてるだけだよ。目を覚ましなよ!」
『ピシャリ』
「いい加減にしなさい!今はまだ結婚出来ないけど……いずれは……いずれはちゃんと結婚するって言ってくれてるのよ。そんな人なのに悪く言わないで!」
「そう言ってもう何年経つんだよ……ただ遊ばれてるだけじゃないか?お父さんからの仕送りだけで生活は出来るんだから……もうそんな男」
「ウウウ(´;ω;`)ウゥゥワァ~~~ン😭ワァ~~~ン😭そんな……簡単に片が付くく問題じゃないのよウウウウッシクシク(´;ω;`)ウゥゥ」
母を只々延々と結婚を餌に弄ぶ隆史。こうして犯行は実行される事となった。それは理生にしても勝君に対しての恨みは今も消えない。LINEでゲイである事を暴露した事によって一時は学校の生徒全員から総スカンを食らった。だから、その恨みは流星同様だった。
だが理生のそれは今は形を変えて流星を繋ぎ止めるための手段となっていた。それは友樹も同じ理生を繋ぎ止めるための手段となって行った。
(勝君の父を殺害すれば理生を一生繋ぎ止めることが出来る。それこそあんなに優秀でイケメンで自分にはもったいない理生は、今もこれからも絶対に、こんなゲイの俺の目の前に現れる訳がない。だから……どんな事をしても理生を自分のものにする!)
こうして首なし死体連続殺人事件は始まった。
***
廃墟に到着した流星と理生と副社長隆史の3人だったが、その時後ろから友樹が一気に副社長の頭を金属バットで強打した。
「フン!ママを散々苦しめやがって……一気に殺してくれ」
「流星分かったけど流星の望み叶えてあげるけど……私の望み忘れないでね!絶対よ!もし守れなかったら……もし守れなかったら……お仕置きよ!フフフ……」
その時隆史の意識が回復した。
「ウウウ……何故……何故……こんな……こんな……乱暴な真似をするんだ」
「じゃあ言いますが、あなたのせいで一家はバラバラになり、そして……未だにママの望みである結婚は果たされていない。僕の大切なママをどうするつもりですか?」
「そっそそそれは……当然……いずれは……けけ結婚するつもりだ」
「そんな言葉、今まで何回、何十回、何百回、ママに言って騙して来たのですか、もう遅い!」
「そう!そう!流星この後は私達2人に任せて!あなた今日塾の日でしょう?」
「そうだった。俺帰る!」
流星は、バス停まで歩いてから電車で岡崎にある塾に行った。
理生は凛音の格好で流星とこの廃墟にやって来た。それは流星が幾ら男だと薄々気が付いていても、凛音の姿しか知らないから当然凛音の姿でやって来た。一方の友樹の方はと言うと、私立中学からの付き合いで、同じゲイ同士という長い付き合いの中で、友樹は美しい少女凛音姿の理生も何度か見て知っていた。だから少女姿に何ら違和感が無い友樹だった。
こうして殺害は実行された。
「それから……あんたの息子勝は学校で理生をゲイだとバラシて理生はそのせいで、皆の笑いものにされて仲間はずれにされたんだよ。フン!」
「そうだその通りだ……もう良いだろう。オイ!友樹こいつヤレ!」
隆史は見たこともない少女に、恨まれる筋合いが無いのに「ヤレ!」と言われて恐怖で一杯だ。
「エエエエ————————ッ!お前一体誰?」
「嗚呼……俺女装しているけど……本当は男で、あんたの子供勝の友達でよくあんたんちにも遊びに行った理生です。友樹コイツ殺して!」
「分かった!」
「タタタ タスケテクレ————————ッ!」
「うるせえ!死ね!ちょっと待って!俺もカッパ着るから……オイ!猟奇的殺人に見せかけて首をちょん切って殺そう。友樹ヤレ!」
「ギャギャ————————————————ッ!」
こうして理生が押さえ付けて友樹が、電動のこぎりで手っ取り早く首を切り落とした。じゃあ「金文」のノコギリはどうなるのか?
高級品「金文」の特注品に目が行くように仕向けられたものだった。店名のシ-ルはわざと落として置いたのだった。
友樹の父親は〈グレイト株式会社〉産業廃棄物処理業を経営していた。
廃車される車が山積みになっていて中には車検切れ、乗らなくなった車、乗れなくなった車、不要な車があるので、いずれは廃棄処分される車だった。その車で家族に内緒でこっそりやって来た友樹。それは……産業廃棄物処理業者なので、例え車に血痕が残っていたとしても必要な部分だけリサイクルして、残りの部品は跡形もなく解体され廃棄処分にされ、証拠隠滅が出来るからだった。
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