第4話 小説研究サ-クル




「あの首なし死体事件のあった岡崎市のモーテル「シャチ」の、防犯カメラに映っていた車は、友達に車の廃車を頼まれた男が、廃車処分せずポ-ルに譲った車だった。って事はその車を、ポールに譲った男が何らかの事情を知っているだろう?長瀬刑事と田淵刑事早速この連続殺人事件に当たってくれ!」


「任せてちょうでゃあよ。管理官」


「行って来ます」

 

 そして…廃車を頼まれていたのに、その車を廃車せずポールに売った男のアパートに辿り着いた2人は、早速ドアをノックした。


『トントン』 『トントン』


「あっ」一瞬ドアを閉めようとした男。すかさずドアに足を挟んだ長瀬刑事。


「まあいかん。首なし死体事件のあった岡崎市のモーテル「シャチ」の、防犯カメラに映っとった車の件で伺いたい。おみゃ~さんはいい加減な男だ。車どこにやった!」


「……それが……それが……車を廃車処分しようと思ったのですが……車検が切れていて車運ぶにもレッカー代が掛かったので、丁度知り合いのポールが安い車が欲しいと、しきりに言っていたのでポ-ルに売ったのです。そして…ポールが車を戻しに来たのですが、車を廃車処分しようと運転して中古車販売店に向かったのですが、動かなくなったのです。その時にアルバイトのコンビニから、アルバイト学生が風邪でどうしても人手が足りないと言うので、焦ってたまたま人通りの少ない場所の廃墟が有ったので、少し押してそこに駐車して置いたのです。午後3時に出勤しなければいけなかったので慌てて止めておきました。ここだったら警察にもバレないと思って……そして…アルバイトが終わって帰ってみたら車が無かったのです」


「無断駐車はいけません。それでも……その車誰かが持って行ったって事ですよね?」


「おおちゃくいで手がつけられん。おみゃあさん、たいがいしときゃあよ」

 

 こうして…2人は車を奪った犯人の特定を急いだ。見えてこない犯人像、一体どんな目的が有って猟奇的殺人を繰り返すのか?


  

 ***

 この物語の主人公で高校2年生の立花流星と菊池凛音は共に愛知県岡崎市に生を受けた、生粋の岡崎市民である。だが、こんなに近くにいながら2人はあの雨の日が、最初の出会いだった。まぁ灯台下暗しとはよく言ったものだ。

 

 それでは立花流星君の家庭環境はどのようなものなのか?


 実は…流星の父親は愛知県に5店舗経営する老舗和菓子店の社長だが、豊田店の女店長と不倫の末離婚となっていた。だから…今現在は母親と流星は、岡崎市のマンションで生活をしている母子家庭である。そして…弟は父親に引き取られている。


 そんな両親の離婚という不幸を乗り越え、今現在は母も元気を取り戻し以前の生活が戻りつつある。運動神経抜群の流星は、桜ヶ丘南高校のサッカ-部に所属しているエ-スにして桜ヶ丘南高校のスター的存在。浅黒い肌と白い歯が眩しい爽やかイケメンで、身長は182cmのパ-フェクトボーイだ。


 だから…女子からのアプロ-チの数々にうんざりしていた所だったが、1人変わり種の女子が居た。それは小説が好きで、自ら小説研究サ-クルを発足させた変わり者らしいが、学校では大っぴらにはなっていないが、主にミステリー小説の研究に余念が無いらしい。


 そんな時に、その小説研究サ-クルを発足させた女子黒山幽香に声を掛けられた。

 あまたの女子のアプロ-チの数々に辟易していた流星だったが、小説研究サ-クルを発足させた女子黒山幽香にだけはピンと来た。それは流星自身がミステリー大好き少年だったからだ。


「主にミステリー小説の研究に余念が無いらしい」そう友達から聞いていた流星は、以前からその研究会に興味津々だった。このような経緯から「時間が空いた時だけでも良いから顔を出してね」と言われていたので暇な時間を見計らって顔を出していた。


 そんな時に、日本中を震撼させる「首なし死体事件」が勃発した。それも岡崎市でも無残な「首なし死体事件」が起こった。そんな事件が起きたのに、この2人がオメオメ引き下がっている訳がない。これぞ我らで犯人を追及してみせると意気込んでいる。


 だから…事件が起きてからと言うもの、2人は研究室に籠って必死に犯人探しに躍起になっている。


「オイ!首をちょん切るって、どんな神経しているんだい?だって勢いよく血が噴き出るし、恐ろし過ぎだろう。生きた人間の首をすっぱり切ると本当に出血は噴水状態になるのかい?」


「いや~だって~睡眠薬で眠らせたって、鈍器で殴っても生きているから……人間の首は生きている状態でその拍子にいきなり首切ると、血が首の断切面から噴水のように大量の血が噴出すらしいよ」


「そうだよなぁ。心臓は体中に血液を回すためにすごい力で押しているから……だから…太い血管の動脈、静脈が首にあるから、それを切ったら噴水のように溢れ出すわなぁ」


「でもさ~ノコギリを購入した店が特定出来たんでしょう?それも岡崎市の金具屋さんだったって言うじゃないの?」


「どうして金具屋さん特定出来たんだい?」


「どうも……ノコギリの店名の部分が紙だったので、風呂場で殺害したので剥がれたらしいのよ。それで……ほんの少し1cm程の店名の部分が剝がれたのだけれども、その燕三条産製品は、海外の展示会にも数多く参加し、日本のものづくりの真骨頂として高い人気を得ているらしいの。そして…そのノコギリは特注だったらしい「金文」の文字が、ちぎれて落ちていたらしいのよ。高級品を取り扱うその店は新潟県の有名職人に注文したらしい」


「高級品って事は犯人は金に困らない人物か?金持ちって事かも知れない?だけど内に秘めた狂った人物って事かな……」


「それでも…この一連の犯人は、何かしらの証拠品を残しているって聞いたけど?」


「嗚呼……それ分かる気がする。1950年代ごろにアメリカを騒がせた連続殺人犯のウィリアム・ハイレンズ。彼は、ある殺人現場から立ち去る際、被害者の口紅を使って、メッセージを残していたみたいよ。For heavens Sake catch me Before I kill more I cannot control myself(これ以上だれかを手にかける前に、頼むから僕を捕まえてくれ。もう自分をコントロールできない。このように自身でも抑えることのできない強烈な欲望と、それを何とかして止める手立てを模索して複雑な動機を抱えている犯罪者もいるのよ」


「ねえ幽香今度さ、その岡崎市の金物屋さんに行ってみない?」


「本当ね。言ってみましょう?」


 こうして2人は次の日曜日犯人が購入したと思われる金物店に向かった。その中田金物店は商店街の一角にあった。だが、その時一瞬あの美しい少女凛音らしき女の子が、日曜日で賑わう商店街の雑踏の中を通り過ぎた気がした。


(まさか…俺の見間違いに決まっている?) 


 それでは、あの日高校2年生の立花流星は、偶然にも菊池凛音とお寺の境内で遭遇していたが、その後偶然にもカラオケボックスで会ったが、あれ以来会っていないのか?(それにしても……あの女の子の眼差しには狂気が潜んでいる)


 あの猟奇的殺人鬼首なし死体事件の犯人は、一体誰なのか?



 ※名古屋弁一覧


 おみゃ~さん:お前さん

 ちょうでゃあよ:ちょうだい

 おおちゃくい:わんぱくな

 たいがいしときゃあよ:いい加減にして






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