九月 祭りに行く

 九月になり、零子と優一は岸和田祭りを観にきていた。


「そーりゃあそーりゃあ!!」


「なあ、優君だんじり見るのん始めてやんな。すごい迫力やろ。ほら、ここの交差点なカンカン場言うんやけどめっちゃスピードでまがっていくやろ」


「しかしすごい人やな。優君はぐれんように腕組まへん?」


「ほな失礼して。やっぱり優君の手にぎっていると落ち着くわ。うわっまた人ぶつかってきたわ。むぎゅー」


「もっとくっついてくれるかな。そうそう、うちの手はなしたらあかんよ。岸和田祭りはすごい人なんやから。祭りの期間だけ岸和田の人口越えるぐらい人くるねんって。そやさかい、こうもっとくっつかなあかんねん」


「なあなあっ優君、あのスーパーボールすくいやってみいひん?」


「はい、おっちゃんこれお金なほんならこのポイで」


「あちゃーすぐやぶれてしまったわ。えっ優君すごいやん。もうお椀にスーパーボールいっぱいになってるで」


「しかし優君すごいわ。夜店のおっちゃんびびってたで。桶のスーパーボール全部とるいきおいやったもんな。えっこのスーパーボールくれんの。めっちゃレアなやつやで。ありがとう、優君めっちゃ好きやわ♡♡」


 二人は夜店巡りをおえて、零子の親戚の家に遊びに来た。


「叔母ちゃーん、ひさしぶり。おじゃまするわ」


「うちのママの妹でマリアン姉ちゃんっていうねん」


「せやろう、うちそっくりやろ。ブロンドの髪にエメラルドの目。うちそっくりのべっぴんさんやろ」


「そう叔母ちゃん誉めて、ご飯たべさせてもらおうって魂胆やねん。マリアン姉ちゃんはうちの料理の先生やねん」


「ほんなら、だんじり見てお腹も空いたし、いただこか」


 零子と優一はマリアン家のリビングに向かう。そこには机いっぱいのごちそうが並べられていた。

「うわーマリアン姉ちゃん、はりきったな。えっうちが初めて男の人つれてくるからご馳走つくってくれたん。ほんまにおおきに」


「これこれ、マリアン姉ちゃん特製の関東かんときやん。めっちゃ味しゅんで美味しいねんで」


「せやで関東炊かんとだきっておでんのことやで。ちょっと具は違うけどね」


「ほんで優君、関東炊きの具で一番何が好きなん?」


「うちはな、やっぱり大根とたまごかな。ほら、見てみこのたまご。じっくりにこまれて真っ黒なってるやん。ほれっ半分にきって食べさせてあげるわ。あーん」


「なあ、味がようしゅんでおいしいやろ。大根もなかまで真っ黒にしゅんででて。これも食べさせたるわ」


「優君、鍋の中見てどうしたん?」


「ちくわぶ。ちくわぶって何それ。ちくわやったらここに入ってるで。えっちくわちゃうの。うち食べたことないわ」


「小麦粉でつくったちくわの形したもの。さすがはマリアン姉ちゃんやな。物知りやな。ごめんやけど大阪の関東炊きにはちくわぶいれへんな。せやな、こんどうちがそのちくわぶってのいれてつくったるわ」


「うんっどうしたん? マリアン姉ちゃん。うちらのことずっと見て、にやにやして。何何、なんて。うちら夫婦みたいやなって。ありがとう、マリアン姉ちゃん。うちらの結婚式には来てな。って優君ゴボウ天のどにつまったん。ほら麦茶飲んで!!」

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