金髪緑眼の彼女は関西弁が強すぎる。

白鷺雨月

一月 道に迷い彼に出会う。

スマホの画面と周囲を交互に見る金髪緑眼の女性。彼女の名前は難波なんば零子れいこ。職業はモデルである。祖母がイギリス人のため、このような外見をしているが、生粋の日本人で大阪育ちなのである。

「ほんま、ここどこやねん。池袋の駅からすぐやってメールにあったのに歩いても歩いてもたどりつかへんやん」


とことことスマホの画面を見ながら歩きだす。


「なんで、なんでや。地図の矢印通りに歩いてるのになんで、とおざかるんや。ほんまにわけわかられへんわ。こんなんさっぱりサラダわけわかめやで‼️」

一人ぶつぶつと言い、スマホの画面を見ながら歩きだす。


「あたっ‼️痛たたぁ……」

歩きスマホのため、誰かにぶつかってしまった。

「あっごめん、ごめんなさいね。うち無駄に背高いから痛かったよね。お兄さん大丈夫。歩きスマホなんかやったらあかんのに、ちょっと余裕なかったねん。ほんまにすんません……」


スーツ姿の青年は手をふり、大丈夫ですよと答える。道に迷っているのですかと青年はきいた。


「そうやねん、ちょっと道に迷ってしまってね。いや、ちょっとちゃうな、めちゃめちゃ道に迷ってるねん。東京なんて高校の時の修学旅行以来やからな。うんっどうしたん、そんな鳩が豆鉄砲食らったような顔して」


「日本語上手ですねってお兄さんおもろいわ。うち正真正銘の日本人やで。大阪生まれの大阪育ちの二十六歳。職業はまあ一応モデルみたいなことしてんねん。まあ、せやな、こんな見た目やからよう外人と間違えられるけどな。アハハッ」


「って笑ってる場合ちゃうわ。もうすぐ撮影の時間はじまるわ。ほんまどうしよう。遅刻なんかしたないのに……」


「へっお兄さん道案内してくれるって。ほんまに。いやあほんまお兄さん神やわ。でも、お兄さんかて用事あるんちゃうの」


「就職の面接あるって。そんならそっち優先せなあかんて。うちのことはほっといてそっちいってよ」

そう言いながらも不安気な表情を浮かべる零子。


「時間あるから送ってくれるって。そう、ありがとう。ほんなら甘えるわ。うち甘えん坊なんやで。ほんま助かるわ」


「あ、あの……ほんまごめんやけど東京って人多いやん。まあ大阪も多いんやけどあっちは慣れてるからええねんけどこっちはようわからへんから不安やねん。で何が言いたいかと言いますとお兄さん手つないでくれへん?」


「どうしたん、お兄さん顔赤いで。熱あるの? 大丈夫? 大丈夫なん。はーよかったわ。じゃあ、ちょっと失礼します」


「お兄さん手固いね。やっぱり男の子やね。しっかりした手してるわ。なんかお兄さんと手つないでたら安心するわ。えっもう着いたん。なんやうち道迷ってまわりうろうろしてただけやねんな。うーん、でもお兄さんともうちょっと手つないで歩いていたかったかも……」


「せや、お兄さんこれも何かの縁やしライン交換せえへん。ほらこれうちのID」


「はいっこれで登録完了やな。へえ、お兄さん宅間君って言うんや。宅間たくま優一ゆういち君って言うんや。お兄さん、うんうん、宅間君ほなな。ほんま、ありがとう。ほんま助かったわ。宅間君いつでもラインしてくれてええからね。うち宅間君のこと気にいったわ。何かまた会えるような気するわ。ほなな、ほんまにありがとう。宅間君も面接頑張ってな。これ、ありがとうのハグやで。って宅間君顔真っ赤っかやで‼️」

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