第30話 ゾッとした話


 おれは坂上といっしょに森を出た。


 坂上の首はたしかに切れていたが、ノコギリがなまくらだったらしくそんなに切れていなかった。強くおされた感じで、アザにはなっていた。


 森から出ると、朝の散歩中のおじいちゃんおばあちゃんにすぐ見つかって、スマホで警察ときゅう急車に電話された。


 病院で治りょうを受けながら、事情を警察に話していると、坂上の両親が来てアメリカ映画のようにハグをしていた。坂上は泣いていたし、両親も泣いていた。


 おれの両親も来た。両親はまわりの人たちにあやまって、父親はおれをにらみつけるとどなりちらした。


 おれは泣きたくなったが、その時ガーゼの下のオオスズメバチにさされたところがピキッといたんだ。


 そこはイボのあったところでもあった。オオスズメバチはよりにもよってイボをさしたらしく、イボは消えていた。代わりに特大のはれが出来ていた。


 イボとはちがって、その特大のはれを見ても泣きたくならなかった。むしろ、ずっと見ていたく思った。


 まだ父親はどなりちらしていた。警察が一応まあまあと止めに入るが、意味はない。


 おれはシャツをぬいだ。アザだらけのおれの体。



「このアザは全部父親にやられたものです」



 父親がなぐりつけようとしてくるのを、警察が止めて、警察は父親を別の部屋に連れて行った。


 母親はやっとおれのとなりにすわって、おれをだきしめてすすり泣いた。


 おれは母親がかわいそうになって泣いた。



 明るいニュースを一つ。


 ヤジマ君は生きていた。


 首をだいぶ強くひねられて、アワをふいて気絶していたのを発見された。だけどひねっただけで命に別状はないそうだ。


 ヤジマ君の家にお見まいに行ったらあやまられた。あと「やっぱティンブラーへの愛がおれを助けたと思うんだよね。クビナガリュウの仲間だし」と意味不明なことをコルセット付きの真顔で言っていた。


 また今度お見まいに行く予定。


 暗いニュースを一つ。


 真っ黒おじさんはいなくなった。


 たおれていたはずのところをいくら探してもいなかったらしく、一時はおれと坂上は警察にウソをうたがわれた。


 首つりおじさんの死体を見て、パニックになったんじゃないかって。


 だけど、真っ黒おじさんの地下室は無事に見つかった。


 そこからはいろんな地域のいっぱいの記念品が出てきたそうで、警察の人には「君たちのウソの方がよっぽど良かった」と言われた。


 もしも穴に入っていたら?改造の意味とは?


 おれはゾッとした。


 真っ黒おじさんはまだ見つかっていない。

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