第27話 点線


「だって、全部ウソだもの」


「え?」


「あやまりに来るとかどうでもいいに決まってるじゃん。覚えておきな?大人は子供をおこりたいから、おこるんだよ。それだけで支配できるからね」



 ボーっとしているおれのポケットから、林田さんはティンブラーのカードをぬき取った。



「これ、もらうね。どうせ返す相手はもういないからさ」


「ヤジマ君は…?」


「殺したに決まってるじゃん。これは記念品としてもらって来たものだよ」


「自殺の手伝いっていうのは…?」


「あれもウソ。知らないやつがたまたまマヌケな自殺をしてたから手伝ってあげただけだよ」



 林田さんはおれのシャツをぬがした。



「へえ、君、ぎゃく待されてるんだ」



 おれのアザだらけの体を見て、林田さんは自分の顔を手の平でぬぐった。口元がニヤついていた。



「ボクがすくってあげよう」



 林田さんはおれの両うでの付け根と両足の付け根と首をノコギリでなぞった。



「ここに点線があると想像してごらん?」



 おれはバラバラにされて殺される。


 あの赤カブトみたいに手足をもがれて殺される。


 こんな時なのに、手の平にまたさすようないたがゆさがおそってきた。


 これはのろいだ。ばつだ。


 だから、赤カブトみたいに手足をもがれて、ついでに首ももがれて殺されるんだ。



「君はよく泣くねぇ」



 林田さんはおれの頭をなでた。


 おれの目からはまたなみだが流れていた。


 どうにか、かわいそうに思ってもらって、生き残れないだろうか?という考えが頭にうかんだ。


 おれはほんとうに自分は死んだ方が良いと思った。


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