第3話 何かにさされる


第一のポイントは低い木がグネグネ曲がって生えているやつだった。


え、いるじゃん。


おどろいた。いないと思って見たら、カブトムシのオスとメスが一匹ずつとノコギリクワガタのオスが一匹、コクワガタのオス一匹とメスが二匹いた。


一本の木でこれは大量だった。


しかも、カブトムシのオスは赤カブトだった。ふつうのカブトムシは黒いけど、たまに赤いやつがいる。かっこよくてレアだ。


おれは一気にテンションあがった。


大人の足あとは木のまわりをウロウロしていたから、てっきりとられたと思っていた。


もしかして、この大人、シロウトなんじゃないか?と思った。


それかヘタクソか。


虫をつかまえるのにも、なぜかヘタクソっている。


見るポイントをわかってなくて、てき当に見ただけでやめてしまう。木をけりもしない。ちょっとかい中電灯で照らしただけで次に行っちゃう。もったいないことをしているのをわかってない。


シロウトでヘタクソはそういうことをする。


いや、もしかしたらヨワムシかもしれない。


赤カブトの横にオオスズメバチがいたからだ。もしかしたら大人はこれにビビッてせっかくの赤カブトたちをとれなかったのかもしれない。


だとしたら、ヨワムシだ。


おれは木の枝を拾って、その木の枝でオオスズメバチを地面にたたき落とした。地面に落ちたオオスズメバチを何回もふみつけて殺した。楽勝だ。


楽しくなってきた。


大人のとれなかったものを、オレはよゆうでとってやる。もしかしたら、すれちがうこともあるかもしれない。そのときに、ビニールぶくろにパンパンにカブトムシやクワガタが入っていたら、大人はおどろくかもしれない。


もしも欲しいって言ってきたら、コクワガタを一匹くらいならあげてもいいかもしれない。そいつが良いやつそうならだけど。


おれは持ってきたビニール袋にカブトムシとクワガタを入れながらそんなことを考えた。


おれはもう一度ぐるりと木を見て、根本もちょっと掘ってみた。


おっ!メスカブトが出てきた!しかも元気だ。動きが速い。メスカブトって、なぜかオスカブトよりも動きが速いことが多い気がする。


おれはそいつをつかまえて、ビニールぶくろに入れた。


すごい!第一ポイントでもう七匹もとった!


やっぱり今日は当たり日だ!


はやく第二ポイントに行こう!


…いや、第二ポイントではさすがにとられてるかもしれない。


なら、道になってない草むらのなかを突っ切って行けば、第五ポイントに着くから、そっちから行こう!


おれは草むらのなかに突っ込んで行った。


昨日の夜の雨しずくが草に残っていて、服がどんどんぬれた。でも、そんなことは気にしない。だって、いっぱいのえものがおれを待ってるんだから!


「てっ!」


手が何かにさされた。


けど、手には何もいなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る