第16話 魔族転移ゲート閉鎖

 ゲート前


 ズンズン進んで魔族の残党とか脱走兵も蹴散らして、斥候部隊も全員「ヒャッハアアッ!(動詞)」して魔界転移ゲート前。


 大きさからして数人から大型の魔獣まで通過できるが、超大型の魔獣は通過できない。


 まあ、強力な魔物が通るにはコストが足りないとか魔力が大き過ぎるとか、そんなレギュレーションなんだろう。


 本隊と言うか、各国の軍隊はコシヌケ揃いなので、俺らの後をついて来ることしかできない。


 精々魔獣狩りぐらいしかできないが、大型のが来るとこちらに救援要請するぐらい弱い。


「ついに…… ついにここまで来たっ」


「やったんだ、俺達はやり遂げたっ」


 ヨーロッパで言うと、聖国がポーランド辺りで、決戦の地と転移ゲートがフランス辺り、さらに奥の方まで侵攻されていて、スペインポルトガルまで魔族領域。


 カエサルのガリア戦記ぐらい遠征して来て、ここでも最終決戦があったらヴェルキンゲトリクスでも倒した状態だが、この周辺の魔族は人類側の略奪と殺戮と病原菌を恐れて、転移ゲート奥まで逃げ込んだ模様。


 この先は魔物の生活範囲なので、もし全員で侵攻すれば瘴気も濃いし病気の一つでも患うだろう。


 普通なら各国先陣を争って行くはずだが、聖国勢以外には無理な相談。


 他の国はエンガチョ、ゲートを超えて魔国に行くほどの根性も健康もない、ここを爆破してゲートを壊してでも閉じてしまおうとか、そういった意見が普通。



「さて皆さん、ご精勤ご苦労さまでした。え~、これ以降魔国方面に行くのは、私と同行して頂ける方は別として、一旦解散とさせて頂きたいと思います」


「え? どうして……」


 受話器でも握った現場猫みたいに、全員「どうして……?」な表情。


「この先は瘴気も濃く、水まで汚染されています、普通の人間が行ける領域ではありません。ですが、リッチやヴァンパイアにまでなった人物なら可能です」


「おおっ、行こう、奴らに目にもの見せてやるっ!」


 元細菌研究所勢はやる気十分。でも第三騎士団連中は断られたも同然なので意気消沈。


 SF小説の系統なら、エンディング前で敵の星にでも攻め込む所で、今まで散々思い通りされた復讐をしに行く場面だが、ちょっと休憩。


「ここで、各国が話し合ったように、私達が通過すれば一旦ゲートは閉じてしまおうと思います。そこで問題となるのが残された魔族討伐。可能な限り皆さんには残って貰い、故国に帰ってお家再興、国家再興を果たして頂いて、私の分体も同行しますので、領地の浄化、魔物魔獣魔族の討伐をお願いしたいと思います」


「え? それなら……」


 故国の再興と言う所が効いて、迷い始める人物も。


「ゲートの向こうに行った者達が討たれても、魔国とて閉じられて厳重に施錠されたゲートは開けないでしょう。ここは一旦閉鎖とさせて貰います」


 またレイズナー的にこの転移ゲートは閉じて、二度と人間領域にはゲートを開けないようにして行く。


 向こうに行って帰れなくなるが、俺なら通行のためだけに短時間開けない事もない。


「ここで、ゲート前にて勝利の勝鬨を上げたいと思います、御唱和下さい(CV:アントニオ猪木)」


 アントニオ猪木方式で、魂のゴングを鳴らして猪木ボンバイエ! ヒンズースクワットしながら「シャアーーッ!」と叫んで立って「1,2,3,ダーーーッ!」でビンタ入れて精神注入。


 ねぶた祭りでも、よその団体に割り込んで精神注入していた奴がいた、酔っ払いかメンドクサイのがいたが、あれは暴力行為ではなく精神注入。同団体なら問題なかったが、別の団体に許可なくやったので問題になった。


「1,2,3,ダーーーーーーッ!」


「ダーーーーーーッ!」


 拳を振り上げて日本式の勝鬨。マリオ君リタちゃんはまだ若いので恥ずかしそう、でも亡国のオッサン連中と第三騎士団は、込み上げる物があったのか、感動の涙を流している。


「勝ったっ、魔族ども追い払ってやったんだっ!」


「ゲートまで取り返してやったぞっ」


「俺達の勝ちだっ!」


 一旦ケリが付いたので、故郷に帰るつもりでオイオイ泣き始めて、抱き合ったりする者もいた。


 転移ゲートを閉じればミッションコンプリーツ、魔王は倒せなくても浄化を続ければ大地は蘇る。


 ここにいる連中は英雄だ、共に戦った心の強敵(とも)だ。



「さて、一旦解散です。故国が無い方も立ち去って、亡国の再興を。そして土地を浄化して回り、魔物魔獣を駆除して、いつか故郷を緑が満ちた大地へと返そうではありませんか?」


「ああっ!」


 迷っている者もいる模様。故国は大事だが、魔族を魔王を倒しに行きたいと迷う心。


 しかし、現地で討たれると帰っては来れない、戦闘中生き返れば良いが、天命が尽きて死ぬ者もいて、後衛のヒットポイントでは不足する。


 実は足手纏い、戦闘中ずっと死んだままで、一戦闘で大ダメージを食らって死んで、毎回復活させてやらないといけないので、そのまま放置になる。


 魔王討伐の推奨レベルは三億以上。それに到達しているのは俺だけ。


 魔星では星が割れてもキニシナイので、ブラックホールでも反物質でも使い放題だが、ゴクウさみたいにナメック星が無くなると呼吸できるのか自信はない。


 悪魔だから呼吸しなくていい? ソルジャーブルー(CV:志垣太郎)みたいに空気の膜でも作ってたら呼吸できる?


「俺も連れて行ってくださいっ」


 マリオ君はヒットポイント的に心配だが、大英雄にしてやって、勇者を名乗れるほどの大型クエストを完走させてやりたい。


「大変だぞ、それでも行くか?」


「ハイッ!」


 うん、マリオ君も男にしてやろう(性的な意味で)。いやいや、性的な意味ではエルフのオネエサマと言うかオバハンで筆おろししてるし。


 二つ隣の部屋でリタちゃんも気付いてたけど邪魔しなかったし、頬っぺた膨らませて「お兄ちゃんフケツ」とも言わなかったし。でも俺の部屋には邪魔しに来た。


 忘れ形見で孕んじゃってるオバハンもいるようだし、ハーフエルフと言うのは、100年程しか生きられない、人間と同じぐらいの寿命らしい。


 でも命の水を摂取していると延長可。


「わ、私も……」


 リタちゃんの場合、女の子的な問題が。飲み水と料理の水はこっちから持って行かなければならない。体は洗えないし洗濯出来る回数は少ないし、着たきり雀で一か月とか、男以外にはとても要求できない。


「いや、向こうでは身体洗えないし、洗濯も碌にできないし、着替えも…… 兎に角女の子的に難しい」


「でも……」


 ここは、気まぐれオレンジロード劇場版的に、ヒカルちゃんから「だってセンパイ、アタシにキスしたじゃないっ!」と問われている。


 まさか三角関係をダラダラ続けるだけの原作から、劇場版だけキッツイのを食らって、鮎川まどかの方も「私、馬鹿な事しちゃった」とか電話かかって来て「浴衣を着てしまったからセキニンを取って祭りや花火に行くのに迎えに来い」とかハードな要求をされるとは思っていない。


 ダーティーペアのオープニングが、同じ中原めいこだからと言って「ほらプリキャアみたいな奴?」と車に同乗中の嫁に聞かれて、否定し続けていると発狂して「降ろして~~~っ! 降ろして~~~っ! ギャオオオオオオン!」を開始されてしまう。


 選択肢


1,サイケラス王国で、俺と結婚して家庭を持って欲しい

2,聖国の細菌研究所で俺の子供を産んで欲しい

3,追い返す

4,秋子ちゃんと愛の逃避行


 未亡人下宿で名雪ちゃんのお母さんの、秋子さんと愛の逃避行したい所だが、ここは1番で。


 もし三番を選ぶと「ばか~~~っ!」と叫ばれて、撲殺天使ドクロちゃん的にメイスで撲殺される。


 マリオ君に聞かれないように、一番の内容を耳元で囁く。


「ボンッ!」


 おぼこいリタちゃんは、忽ち茹蛸になって真っ赤に。


 JSかJCになったばかりの子供に言ってはならない事を言ってしまった。


「ハイ、ワカリマシタ……」


 もう背徳の指輪も身代わりの指輪も渡して、求婚扱いで「お受けします」と言わせてある。おさわりまんここです、事案発生です。


 ダイスキなお兄ちゃんとは一旦お別れになるが、マリオ君には漢(おとこ)になって貰う。


 もう変わり果てた姿にはならないと思うが、やっぱりオーラによって身長5~10メートル、いやもっと大きい(サイズ的に?)男になって帰って来てもらおう。


「団長には付いて来てもらう」


「ええっ?」


 不可能任務なので、解散して聖国に帰ろうと思っていた団長だが、意外な言葉で困惑している。


「だって、何があったか武官が督戦して見ておかないと、聖国にも報告できないだろ」


「ハア?」


 まさか、正義の人で戦隊レッドでも、市民を守る人情警官ぐらいの人が「魔王討伐」とか言う、とんでもないクエストに参加させられるとは思ってなかった模様。


「四天王とか魔王と戦う時、後ろで見てたらいいから」


「は……」


 納得したのかしていないのか? でも魔王殺して帰ったら大英雄。


「お供します」


 あ? リッチの一人だけど、コイツ魔王の前で死ぬつもりだ。爽やかすぎる笑顔だから、魔王討伐し終わったら今度こそミッションコンプリーツだから、親兄弟女房子供の所に行くんだ。


 もうアッチの世界にしか家族がいないから、心置きなく旅立てるんだ。


 そいつ多分オマエの子じゃないから、死亡フラグ立ってる奴連れて行くと巻き込まれる。


 リッチとヴァンパイア連中は連れて行っても死なないが、相手は魔王なので灰にされてロストすることはある。


 故国に錦を飾れと言っても聞かないで、やっぱりサンドウィッチマンの同級生みたいに、望みを果たし終わったのであの世に行くつもりのが数名。



 編成が決まり、俺の分体とマリオ君、高レベルのリッチが五名と騎士団長がゲートを超えた。


 リッチの残り七名程とヴァンパイア二十数名が居残って魔物魔獣魔族の討伐。俺の分体も同行して農地を浄化して回る。


「それではしばしのお別れだ、魔王や四天王を倒せれば連絡する」


「「「「「「「「「「行ってらっしゃい」」」」」」」」」」


 ゲートの向こう側で閉鎖の手続きを済ませて、施錠の操作もして転移ゲートを完全に閉じる。


 ここからは魔国、魔星。似たような生物がいる世界ではあるが、食べ物も違う。


 まずは退避所として出来るだけ大きなストーンゴーレムを作成する。



 ゲ-ト周辺


「エンヤ~コラ~、ユッコイショ~~、エンヤ~トトオ~~ッ、ハアア~~ドスコイ~ドスコイ~~(ヘブライ語)」


 暗黒魔法の文言で周囲を浄化、派遣した分体の方も視直径の範囲、地平線まで程度を浄化する。


 四股など踏んで、現人神として体に綱など巻いて不知火型で土俵入り。


 如何にレベル八億と言えど、この広範囲に至るまでの浄化には予備動作や儀式が必要。


 塩など撒いて土俵入りと浄化が完了、まずは転移ゲート周辺から浄化を始める。


「サイケラス王国、王都はどちらの方角ですかな?」


「多分、あちらの方になります……」


 山を指さすリッチから、大体の方向を示される。


「では、故郷を目指す方はこちらに、聖国に帰る第三騎士団はあちらへ」


 惜別の時が来た、短い期間であったが、共に魔族と対面して戦った仲間。


 リッチやヴァンパイアになり果てた復讐の鬼たちも、戦時任官されて一旦第三騎士団預かり、同じ制服を着て同じ釜の飯を食って、同じ目的の為に戦い抜いた。


「お元気で、王国復活を願っております、また会いましょう」


「ええ、また……」


 握手などして片手ハグなどもして別れを告げる。冥府魔道に堕ちて、人の心など失っていた者達だが、一人だけ新しい家族の元に戻り、他の者は家族の墓を立てに戻る。


 そして王都を浄化して行き、魔物魔獣がいれば討ち果たす、魔族の集落が残っていれば残らず殺す。


 他の王国の援助もあるので回復も早いだろう。多くの人の命が失われた場所だが、人は戻って来るだろうか?


 俺の分体も他国の浄化と魔物魔獣討伐のクエストを消化しに転移して行く。


「さらばだ、友よ」


「また逢おう」


 第三騎士団は聖国を目指した。この経路は魔物魔獣は駆逐してある、魔族の集落ももう無いだろう。遠回りして寄り道しなければ。


 故郷を目指す復讐の鬼たち、もう元の人間に戻ることは無いだろう。基本食料も水も必要無いが、血液は必要。


 やあん(オネエ声)、ヴァンパイアとかヴァンパイアロードにケツ液吸われちゃう、いや、血も涙もない悪魔だから、俺も食料必要ないのか?



 カリオテ皇国、最前線軍令部


「と言う訳で、魔族領域に到達して、転移ゲートは封鎖してまいりました。魔物魔獣魔族はまだ残っておりますが、新たにやって来ることはないでしょう。そこでお約束していた領地の浄化と、魔物魔獣の討伐をさせて頂きます。サイケラス王国の英雄達は旧王都を目指しました、再建の御援助のほどを……」


 皇国のエロい人を頼ってきたが、こちらも甚大な被害を負っている、果たして滅びた国如きにどれだけか援助して貰えるやら?


「英雄だ……」


「き、救世主……」


「は?」


「救世主だ~~っ! あの魔族を追い払って、やって来たゲートまで閉じて下さった~~っ!」


「勝ったっ! 魔族に勝った~~~~~っ!」


 居並ぶ重臣、他国の司令官、帽子放り上げて熱狂。何故かエルフさんの里に続いて、こちらでも救世主扱い。


 沼展開しながら空飛ぶ絨毯で飛行しただけだから、こちらではそんなに苦労してないので感慨が無い。


 ドラクエのエンディング前みたいなので、マリオ君とリタちゃんにも、こっちを回らせてからにすれば良かった。


 結局、こちらでも数十年掛けて、何万人も送り込んでも帰って来た奴はおらず、せいぜい脱走兵か敗残兵、ズタボロに叩きのめされて逃げて来れた負傷兵だけ。残りは全員食われた。


 魔族への怒りが濃縮し過ぎて、トルーマン大統領みたいに日本からの怨念(おんねん)が送り込まれて、寺で読経して怨敵折伏の祈祷が行われて、呪殺されるレベル。



 臨時テントの軍令部でも、急遽「ウェ~~~~~~~イ!!」の集会が開催され、戦勝記念。


 まだガミラス本星は滅びてないし、冥王星基地をコマンドー(ぱんつはいてない)部隊で破壊出来た程度、バラン星基地も叩けていない。


 まあ、コスモクリーナーD(俺)はある。


 こっちでも土地の浄化全部やって、池の水全部ヌイてやると、住民から「神への信仰」にレベルが上がって、青き衣の人にされて「その者、青き衣をまといて金色の野に降り立つべし、おおっ、あの言い伝えは本当であったっ」とか、また急遽風の谷のババアのモノマネしなければならない。



 冒険者ギルド


「すいませ~~ん、まず魔族の転移ゲート閉じてきました~」


 聖国のギルドなので、エルフ解放戦線の護衛と不遇系令嬢が同伴、魔王討伐のクエストのチェックシートの最初「魔族が最初に出現した転移ゲートの破壊、閉鎖」クエストに封蝋でも貰いに来た。


 でも前回、オーガとかトロールとか始末して行くと、どんどん受付嬢の顔色が悪くなって、ドラゴン三羽程度始末しただけで「ごめんなさい、ごめんなさい」状態になって「妹の部屋で全裸で大便してた人」みたいに話通じなかったが大丈夫だろうか?


「え……」


 ほら、やっぱり今回もイミワカンナイ。


「魔族が、最初にやって来た、ゲートを、閉じた……?」


 単語の意味は一応通った。


「ええ、そうです、厳重に施錠して閉鎖して、奴らが二度と来れないように閉じてきました」


 そう言うと不愛想な受付嬢は、エルフの長老みたいにドバアアッ!と泣き始めた、


「うああああああああっ! 魔族のゲートが閉じたあああっ! 悪魔が来たゲートがあああっ!」


 あ、悪魔は貴方の目の前にいますよ、あしからずご了承ください。


 そうしていると、周囲の冒険者なんかもヤバイ雰囲気になって行って、膝から崩れ落ちて騒ぎが広がって行った。


「もう、魔族が来ないだって?」


「ゲートが…… もう奴らはやって来ないっ、瘴気に満たされて滅びないで済むっ」


 こいつらの常識では、エルフの里と一緒で、瘴気は浄化不可能で、自分達は滅びると思われていた模様。


 俺達が1999年、アンゴルモアの大王がやって来て、地球人類は必ず滅ぶと思っていたが、ノストラダムスなんか日本ローカル過ぎて、本国フランスでも誰も知らないなんて思いもしなかったのと一緒。


 五割増しの聖女様が、第三騎士団の美形の騎士団長を助けるために、何かキラキラ光って森の奥の瘴気だまりを浄化して行く程度ではこの国は飢饉で滅ぶ。


 でも弊社なら、年内施工も可能です(ヨシッ!)。



 大体騎士団長ってのは、俺が同行してたオッサンと一緒で、くたびれた腐ったハゲ散らかしたオッサンでないと成れない。


 年取って現場が不可能になって、肩叩きされて退職するか、出向させられて出て行くか、長年の信用で座り仕事の役所に転属させて貰えるか、残った奴がやっとこさ副団長。


 貴族のボンボンか、腰掛けの次男三男のオッサンが名前だけの団長になる。


 魔法騎士団の方も美形の団長で若いなんて無い、腐り果てたお貴族様で、平民の聖女など夜伽の相手程度にしか思っていなくて、お持ち帰りされて東洋人で若く見えるからって、処女でも何でもない三十路の使用済み中古事故物件で「あのちゃん」みたいな左手リスカだらけ、パパ活円光中絶歴あり性病持ちHIV感染中なんて知られると即殺される。


 日本ではツルーペターチビーでも、サイパンでは美人~と言われるように、女平均身長130センチの世界で、160センチ以上ある巨女で、東南アジア程度の栄養素でババアみたいに乳が垂れさがってるのが標準の世界で、ブラでバストアップしてたら、日本人女優のロケみたいに、タイの少年でも頬っぺたに白いのタップリ塗って化粧して田植え手伝いに来る。



 無愛想な受付嬢がラウンジに出て来たと思ったら、聖国式の祈りを始めた。


「我らは天と共にあり、御使い様に願いを捧げる者なり」


 アッチのセカイかあの世に焦点合わせた目付きで、ボロ泣きしながらドゲザスタイルし始めて、頭の上で合掌。


 真面目な冒険者達も右へ倣え。今回は「御使い様」悪魔なんだけど?


「我らは天と共にあり、御使い様に願いを捧げる者なり」


 ヤベエ、こいつらもドラゴン退治程度楽勝だってバレてるから、依頼書通りに達成して来たと信じてるから、エルフのお婆ちゃんと一緒で「神への信仰」になってる。


『救世主(メシア)様、何かお言葉を頂戴したいと思います』


 エルフ解放戦線の連中も、跪いて両手の指先を肩に当てる「服従」のポーズ。


「旦那様(////)」


「HAHAHA、ナニカオコトバヲ」


 朝礼好きの上司の霊よ、今こそ我が身に降り給え。


「え~と…… 今日は俺の奢りだっ!」


「「「「「「「「「「ウェ~~~~~~~~イッ!!」」」」」」」」」」


 いつもの片足食いちぎられてる元冒険者のお爺さんとかも、オイオイ泣いて「こいつは儂が育てた」。


 飲んだくれの爺さんも「若い頃から目をかけてやっていた」俺召喚されて来て一年ぐらいっすけど。


『ウェ~~~~~イ(聖国語)救世主様に乾杯』


 エルフ解放戦線も、体は子供なのに45歳越えだから飲酒してるし、心は大人の合法ロリだから扱いが難しい。


「HAHAHA! アナタナラヤレルトオモッテマシタ」


「旦那様(////)」


 こちらでも急遽飲み、最近のお若い奴らはアルハラだと言って参加しないんじゃなかったのか?


「御使い様バンザーイ~~」


 あの無表情無愛想を絵に描いたような受付嬢まで、今日は鼻で笑わないで泣きながら飲んでいる。


 例の「ごめんなさい、ごめんなさい」以降は反省したようだ。


「「「「「「「「「「奴は良い仲間~、奴は良い仲間~、奴は良い仲間~~ 良い友達~~」」」」」」」」」」


 冒険者も歌って踊っている。いつもラウンジでだべっていて上納金収めさせてた奴らは、地球でホムンクルスが大量に必要だったので全員引き上げた。


 故障していると思われるギルドマスターも、すぐに吊るされるリプティリアンに流用した。


 細菌研究所でも、ゲート閉鎖と言う目標を達成したのでウェ~~イ。


 でも、あちらでは魔王討伐を目標にしているので通過点。



 聖国王宮


 聖国にも魔族の転移ゲート閉じて来たのがバレてしまって、ま~たいつものおべっか野郎が御注進したみたいで、またも王宮召喚。


「お、お主…… 魔族の転移ゲートを閉じて来たそうだが?」


 いつもの三十路ビバンダム姫だった。こいつも召喚したセキニンを取らされて、俺担当みたいにされていた。


 ドラゴンもヒュドラもトロールの集団も、オーガの里も全部滅ぼして来てからは非常に警戒されている。


 教会からせっつかれて不可能任務に当てたはずが、全部余裕でクリアされてしまい、恐怖の対象に。


 盗賊ギルドとか暗殺ギルドとか爆殺したぐらいなら人の所業だが、ヒュドラとかドラゴン始末して来たのは、この国では神の所業だったらしい。


 会談の部屋も、椅子と机の間が非常~~に離れている。声届かねえだろ。


 細菌研究所のウェ~~~イ(動詞)でも、故郷に帰れるようになっていて、転移ゲート開閉自由、ついでに大量殺人して経験値が35億ほどあって、レベル八億になっているのもツルッと言ったので、誰かおべっか野郎が御注進したのか、聖国暗部の奴らに聞かれて漏れてる。がキニシナイ。


「はあ、まだ四天王討伐も魔王討伐もできてませんけど、転移ゲートまで俺の分体と、元細菌研究所のリッチとヴァンパイアと第三騎士団が到達したんで、ゲートだけでも閉じてきました。俺の分体と第三騎士団長とリッチ五体と冒険者のマリオ君は、魔族領域に転移して魔王を始末しに行ってます」


 コイツも俺を宇宙人か何かを見る目で見て来た。皇国的にもゲート閉じてしまい、二度と魔族が来なければその時点でミッションコンプリーツ扱いで、誰もゲートの向こうにいる四天王と魔王までぶっ殺して来いとまで言ってなかった模様。


「え~、元細菌研究所員で、サイケラス王国の復興を目指している、今次大戦の英雄達がいますので、復興にご助力いただければと」


 人間らしい要求などしてみたが、俺を宇宙人でも見る目は止めてくれない。


 ゲートの開閉だけで神の所業で、閉鎖とか施錠とか考えられないで、どうにか爆破して消せないか、石積みでもして封印できないかと構想されていた模様。


 コイツラ的には、ゲートの向こうには無限の魔族がいて、延々補充と補給が来て、魔族住人も無限に来る設定だったらしい。


「魔族も無限ではなく、食料にも困っていた模様。前線をあの位置程度で固定し、我らの補充兵や、手持ちの食料まで宛てにしていたはずです」


「そ、それは真か?」


 やっと宇宙人を見る目を止めてくれて、相手方も窮状を抱えていた貧乏所帯だと知った顔に。


「何らかの理由で、災害か飢饉か、新天地を探す必要があったようです。それでゲートから「棄民」を送り込んで、食料も碌に持たせず「人肉」を求めていた模様。奴らは明確に人間を食料と認識しておりました」


 同席していた衛兵とかもガクブル、友好的にやって来たはずの宇宙人がビジターだったような顔して、もう来ない魔族を恐れていた。


「今、私の分体が魔星、魔国に見にいっておりますので、詮索はこれまでで」


 個人的見解を与えてこの話は終了、今は現場を見に行っている(現場ヨシッ!)、災害や飢饉の跡があればわかるし、現地人にでも吐かせる。



「そ、お主は、エルフにも新天地を与え、瘴気で汚染されていない場所を提供したそうではないか」


「はあ、エルフの場合、明確に人類から迫害を受け、里を襲撃されて攫われて性奴隷として扱われ、街でも売られておりましたので、その件で依頼を受けまして」


 順番は前後するが、奴隷として売られていたエルフ達を救出して、独立と言う概念を与え、エルフ解放戦線を設立してから、穏健派の長老などが訪ねて来たので「星」ごと与えた。


 ビバンダム姫がエルフの星を差し出せと言われても、同居させる訳には行かない。


「現状、聖都でもエルフ解放戦線が暴れ回っているそうで、今までの迫害の復讐のようですなあ」


 自分でエルフ解放戦線を主宰していて、警護にもロリ戦闘メイドがガッツリ付いているがとぼけた。


 これも俺を何度も殺しに来た聖国への意趣返しだが、細菌研究所への義理があるのと、ビバンダム姫は良い奴らしいので殺さない。


 俺を殺しに来た連中は、貴族でも大抵ホムンクルスの刑。


「我らにも新天地をくれぬか? この土地は瘴気で汚染されている」


「ええ、星の提供でも、瘴気の浄化でも致しましょう。その前に悪魔の契約を」


 悪魔なので悪魔の契約が必要。地球と一緒でゴミとクズとカスの命を経験値として下さい。この国からは徴収済みで事後承諾だけども。


 ビバンダム姫は俺の考えに賛同してくれて、街中を綺麗にするのを認めてくれた。


 既に清潔にしてあるが、街中の活気を見れば誰にでも分かる答えだ。ここでトチ狂って「善良な市民を返せ」などと言い出したら姫も沼入り。

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