文字警備員
ツーチ
文字の秩序
みなさん、こんにちは。文字警備員です。
ん? 文字警備員とは何か? ……そうですね。文字警備員とは今皆さんが見ているこの文字を警備し、安全で健全な文字を皆さんが書けるように整備をしている存在です。
……分かりにくいですかね。実は皆さんが使っているこの文字。これは私のいる文字の世界から送り出しているのです。日本語だけでなくすべての国の文字が私のいる文字の世界から送り出されます。
その文字の量は膨大です。その文字たちがもし勝手な行動をしたらどうでしょうか? 皆さんが「今日はあついですね」と書いたつもりが「今目はおういてすれ」などとなってしまう可能性があるのです。
特に「あ、お」や「ね、れ」などの似ている文字は私たちがしっかりと警備しなければ勝手にそちらの世界へ行ってしまいます。文字たちが勝手な行動をしないようにするために私たち文字警備員が存在しているのです。
本日はそんな文字警備員の私の仕事をお見せしましょう。
♦ ♦ ♦
「テレビを付けよう」
……通って良し! 上の文字は問題のない文字でした。
「このテレビはいくらですか?」
はい、ストップ! ……危ない危ない。上の文字は私が先日止めた文字です。今皆さんには正しい文字を送っていますが私が止めた時はこの「テレビ」問題がありました。
何が問題だったのかといいますとこの時のテレビ、実は〒とヘビの混合文字だったんです。「〒」の下の部分を上手く曲げて「テ」に見せかけ、ヘビの「ヘ」を器用に回転させて「レ」に見せかけていました。
実は近年、ヘビという文字の出番がそちらで少ないようでして「ヘビ」が勝手にそちらの世界へ行こうとしてしまうのです。出番が少なく寂しい気持ちも理解できるのですが、私は文字警備員。心を鬼にして「ヘビ」の文字化けを防いでいます。
「このテレビ番組面白いよね」
はい、ストップ! こちらも問題ですね。上の文字も私が先日止めた文字です。何が問題だったのかといいますとやはり「テレビ」の部分でした。この時のテレビ、実は「テ」の部分が「エ」でした。
どういうことかと言いますと、「エ」の下の部分を取り外し、上に持ってきていたんですね。まぁ、「テ」の上の棒が頭でっかちだったのですぐに分かったのですが、最近は悪質な工事業者が勝手に文字を切り貼りしてしまうので困ったものです。
その他にも「ニノ」をくっつけて「テ」、英語の「TI」の「I」を「T」の上に持ってきて「テ」、「トー」を器用に組み合わせて「テ」にしていたものもありました。
中でも一番驚いたのが「キ」を「テ」にした不届き者がいたことですね。どうやら「キ」の縦棒を執拗に何回も叩いて横棒から取り外して「テ」を作ったようでして元の「キ」に戻すのにも一苦労でした。
♦ ◆ ♦
ほかして項はたでレょうか!
……おっと、失礼いたしました。つい話に夢中で警備が疎かになってしまった隙に文字たちが勝手にそちらの世界に行ってしまいましたね。
分かって頂けたでしょうか?
それでは、また。素敵な文字たちを見たら私たち文字警備員のことを思い出していただければ辛いです。……幸いです。
でほ。
……では!
文字警備員 ツーチ @tsu-chi
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