第10話 空の空
「や、ニカイドウ」
「やべっ 遅刻しました?」
「ううん 早めに起きちゃって話したくなって来たの」
「案外かわいいとこあるんですねトウマさん」
「ありがと 元の人格は全く影響を受けてないみたいだね」
「あー・・・まあそうですね 何であんな殺したかったのか不思議です」
「そう・・・まあいいことだね これあげる」
「いきなりなんですか 弾入ってるし・・・また化物と戦いですか?」
「それで私のこと好きにしていいよ」
「えっ・・・」
脳が一瞬揺らぐのを感じるニカイドウ。
銃が手にあって至近距離とは言え恰好の的が目の前にいると認識する。そっとセーフティを触るとロックがかかっていない。
撃てば楽しい事ができると脳の出てはいけない汁があふれ出す。
「・・・ははっ 撃つわけないでしょ?」
「よかった!これでCクラス昇格だね!」
「へ?」
「それね 偽物 弾が偽物で撃っても出ないよ」
「そんなはずは・・・」
トウマが銃を取って引き金を引くもカチッと音がして何も出ない。
「ね?」
「俺の経験から言うと絶対本物だと思ったけど騙された・・・」
「ま、撃ってたら これで頭を撃ってたから~・・・よかったね」
「笑えねえ・・・流石Dクラス命が軽すぎる」
「ははは 良かったね 私は動きやすいからいつもこのツナギだから疑問に思わなかったでしょ?」
「ええ これが正装ぐらいだと思ってました」
「Cクラスを祝ってご飯行こう!」
「はーい」
なんとなく騙された気がしないでも無いがCクラスになったからいいかと思いながら食堂に向かう。
「そういえば俺って死刑でしたけど、どうなったんです?」
「無期懲役になったよ 良かったね」
「やったー・・・でいいのか?」
「ここで多大な貢献をすればエージェントになってある程度自由になれるよ!」
「夢が広がる!タバコを吸いたい!」
「やめときなよ体に悪いよ~」
「いいんです 心の栄養ですよあれは」
「そういうもんなんだねぇ」
どうでもいい話をしながら食堂に向かい今日のSCPは何だろうなぁと考えながら料理を取る。
「トマトかぁ・・・あまりサラダ食べないけど美味そうだ こんな綺麗な赤色のトマトは滅多に食べれないだろうなぁ」
トマトを1個とり丸かじりをしようとトレーに乗せる。
久々に野菜でも食べるかとおもいつきみずみずしい野菜をセカセカと取られるわけでもないのにトレーに乗せていく。
席に着きトウマを待つとトウマもトマトや野菜を持ってきていた。
「いやぁ今日は野菜が当たりだね」
「ですよね なんか美味そうでたくさん食べる事にしました」
「んー・・・よくよく考えればこれもめぐり合わせだね」
「へ?今日は野菜のSCPなんです?」
「そういうのもいるけど今日は違うよ」
「ふーん・・・どういう奴なんです?」
「今日は実験 でも危険性は無いよ?当たり前の事を延々と聞くだけ」
「へぇ・・・まあ安全なら俺は嬉しいですよ」
「ちょっとヒントあげよっか?」
「まあ貰えるなら」
「このトマト何色?」
「は・・・?何色って色盲じゃないですよ俺」
「いいから ほら」
「あ、あか・・・?」
「まあそうだね どう見ても赤」
「色の見え方が変化するって事ですか・・・?」
「まあお楽しみ あんま詳しく言えないんだ実験だから」
「色・・・かぁ・・・ま 美味しく食べよ」
「そうだね それがいい」
もぐもぐと普段あまり食べない野菜をガツガツと食べる。
「あー食べた」
「ですねー いきますか?」
「そだね」
「「ごちそうさまでした」」
「さて行くよ」
「はい」
食器を片付け廊下を歩いていく。
一体今日は何なのだろうとニカイドウは考えるも全く見当はつかない。
色が変わるSCP?精神に異常をきたすのか?色々考えるがトウマが危険はないと言っているため全くわからないまま部屋についてしまった。
「失礼します」
「来たかトウマくん」
「はい 被験者は彼です」
「おお ニカイドウくんだったね?先日の戦いは見事だった」
「あ、ありがとうございます」
「ははは そんな緊張しないでニカイドウ」
「早速だが実験の数が多くてね 始めてもいいかい?」
「じゃあニカイドウいつも通り着替えて」
着替えを促されサッと着替え行うものの黄色のパーカーに青いジーンズと実験で着るようなものではなかった。
「じゃあニカイドウくん あの部屋に入ってくれ」
「何をすればいいんです?」
「目の検査を先にする この機械に額を押し当ててくれ」
「分かりました」
2分ほどレンズ越しに様々な色や光が発せられ目がしばしばするものの何もなく終わった。
「まさかこれで終わりな訳ないですよね?」
「もちろんだ 物をこちらが提示する 君はその色を詳細に全て答えてくれ」
「色を言うだけでいいんですか?」
「そう じゃあ先にテストだ」
実験室に博士と2人で入り照明の調整が入った後準備が終わった事をトウマがスピーカー越しに伝える。
「じゃあテスト開始だ これは記録に残らないからラフでいい」
「分かりました」
「ここにペンがある できるだけ詳細に伝えてくれ」
「全体的に赤色でキャップの下に薄い白色があります」
「なるほど そう見えたんだね?無いとは思うが適当な事を言って無いね?」
「は、はい 真面目に答えました」
「そうか じゃあテストは成功だ」
「は、はぁ・・・」
「この後奥の壁からベルトで物が一個ずつ流れてくる 君はその色を今の要領で答えて言ってくれ」
「分かりました 危険を感知した場合どうすれば?」
「大丈夫だ 全て地上にある工場で作られたものを見せるだけだ 危険は絶対にないから安心して実験を受けてくれ」
「・・・? よく分かりませんが 私は色を言うだけでいいんですね?」
「そうだ 頼んだよ」
博士が部屋を出ていき部屋がロックされる。
少し待つと部屋の四隅にあるカメラが一斉に動き出す。
(始まったか・・・)
被験者:ニカイドウ
実験日時:2/18 10:00~
SCP-8900-EXに対する実験
「ニカイドウくん聞こえてるなら返事と右手をあげてほしい」
「はい」
ニカイドウは返事とともに右手をあげる。
「緊急時に喋る時は今のように右手をあげて喋ってくれ それを見たらこちらは何か聞こえなくても発声をしていると認識する 30分ごとに3分の休憩を与える 飲み物、手洗いは休憩の際に行ってくれ」
「分かりました」
「ニカイドウ~ 私が今からものを流していくから色を頼んだよ」
「はい」
ベルトコンベアからリンゴが流れてくる。
「全体的に赤 上部に若干の白・・・あとはヘタ?が茶色 以上」
ベルトコンベアからバナナが流れてくる。
「全体的に黄色 若干の黒と緑があります 以上」
ベルトコンベアからサングラスが流れてくる。
「全て黒 反射で白が見えます 以上」
・
・
・
2時間経過
「これで最後だ」
ベルトコンベアからトマトが流れてくる。
「全体的に赤色 ヘタが緑色」
しばらくした後に部屋の扉が開き博士と職員が入ってくる。
アイマスクを被せ部屋から出し地上へ向かう。
カメラは職員トウマが撮影。
「アイマスクを取って 下を向きながら」
ニカイドウはアイマスクを取り下を向いている。
「ニカイドウくん 上を見て空の色を言いなさい」
「青い、青い空です 雲一つない綺麗な青い空です」
「・・・実験は終了だ アイマスクをして再度戻るぞ」
実験終了
我々の状況は変わっていない、閉じ込める事も活動が変化している事もない。
空は我々が見ても青く濁っていた。
これを綺麗と思うのであるという事がある意味成功なのかもしれない。
赤、青、黄色このような物は無かった。
今は技術が遅れていたとされる古くぼけている過去をそのまま残している私の幼少期の家族の写真のような物だけが歴史を教えてくれる。
どうか本来のように戻ってくれることを心から祈っている。
確保、収容、保護
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます