第8話 きらきらおもちゃ

「あー久々にラーメンが食べたい 麻雀とかした後に油しか入ってないようなラーメンを食べるとたまらない!」

地上に全く出れておらず娑婆の空気を吸いたくなってしまうとニカイドウはとにかくラーメンの事を思い浮かべる。

どうせ今日もSCPを掃除したりテストしたりと散々な目に合うんだろうなと辟易していた。

そこに扉を4回ノックする音がした。


「ニカイドウー 入って良い?」

「いいですよ」

扉はトウマのカードキーであれば開くようになっているため実質鍵はあってないような物ではあるが、プライバシーという物で守られておりニカイドウの情けない姿は見られていなかった。


「今日はラッキーデーだよ!」

「え?そんな日いままで無かったですよね?」

「無い無い 今日はDランク職員さんが仕事するからそれを見るだけ」

「見るだけ?危険性は?」

「無い無い っていうか部屋に入れないしオブジェクト近づくの禁じられてるから」

「なるほどー で、どんな仕事なんです?」

「まあそれは食事をしながらにしよっか」

「了解です」

「あとねぇ・・・部屋は綺麗に使ってね 死んで片付けるのバディの仕事だからさ」

「・・・肝に銘じときます」

「よろしい では食事だね」

「はーい」

カツカツと2人で部屋を出て食堂へ移動する。


「今日って日替わりなんですかね」

「お 日替わりなんて頼むの?私もうあれ周期が分かってきたよ」

「うわー知りたくなかった」

「大丈夫 それを理解できるほどここにいないから」

「そっすね・・・」

「ははは 気にしないで ちなみに今日は焼きサバです」

「ネタバレくらった・・・」

「細かいなー」

「そんな事より前のインタビューみたいなのを今日は見るだけで済むと思うと気が少しは楽ですね」

「はい油断した safeでも絶対油断しちゃダメだよ?私がSCPならもう食べてる」

「こわー・・・まあ大丈夫です仕事してる時は大丈夫ですから」

「二回言った まあそろそろ二回目の死に安い時期だから気を付けてね」

「ちょっと気を引き締め直すかー」

「それがいいね」

食堂につき日替わり定食を頼む。

トウマはビュッフェ形式のコーナーに真っ先に行き目当ての物とたんぱく質が取れる物を多めにとっているようだ。


「日替わりはなんなんだろう」

「はいこれね」

「え・・・?」

「あれ?日替わりでしょ?」

「ああ・・・大丈夫これで大丈夫です」

「?」

(焼きサバじゃない!これはトウマさんに自慢できる!)

下らない事だが毎日の食事が少し変化するだけで嬉しくなるニカイドウであった。

更に言えばトウマの予測が外れたことによるリターンはデカいものである。


「お ニカイドウは焼きサバだったね」

「・・・残念 金目の煮つけです」

「えぇ!?違うの!?」

「こういう美味いものも出るんですな~ どっかの誰かが今日はサバとかなんとか」

「ぐぬぬ 私も食べたい・・・」

「一口ならいいですよ~」

「ありがと!」

食事1つでここまで盛り上がるのも普段からの休憩時間の変わらなさによるものである。

2人は金目がかなり美味い事に驚き次第に取り合いになりながら食べていった。


「いや~金目は美味いねぇニカイドウ」

「俺の金目!」

「まま 細かい事は無しだよ無し無し」

「はぁ・・・まあいいですけどね」

「あーお茶が美味いなぁ」

「あ・・・ってか今日のSCPは何者なんです?」

「おもちゃ箱」

「あー何か危険そうですねぇ」

「まあ何も知らないで見といて 新しい視点が欲しいから今日は君を観察係に置いたわけだしさ」

「大分ショッキングなんだろうけど まあ頑張りますよ」

食事を終え食器を返却棚に返し実験場へ移動する。


「そう言えばなんですけど そんなほぼ死ぬ実験って誰がやるんです?」

「あー そっか知らないかDクラス職員さんだよ」

「へー そんなクラスが」

「まあ死んでもいい人間だから気にしないで」

「あー・・・何をやった人なんです?」

「んー・・・まあいろんな国の死刑囚だよ」

「あー・・・じゃあまあ少しは大丈夫です・・・かね?」

「一杯見る事になるから 心は痛めないでね」

「はい・・・じゃあ仕事モードに入りますか」

「うん そうだね」

帽子をかぶり直し気合を入れ直すニカイドウ。

トウマもラフな態度は変わらないが目が心なしか引き締まっている。


「お 来てくれたね」

「博士 今日は依頼の通りこのニカイドウと一緒に観察を行いますね」

「うん 頼んだよ」

「はい」

「博士 被験者のリストを見ても?」

「ああ これこれ見ていいよ」

「ありがとうございます」


D-1897

名前:ノガタ

性別:男性

身長:185㎝

体重:78㎏

年齢:38歳

前科:殺人


補足1:28人殺害ののち2年逃亡 逃亡中2人殺害

補足2:死刑囚

補足3:[編集済]


「中々の経歴をお持ちですねー・・・ってかノガタってあいつか!」

「こらこら ここで話さない」

「あっ・・・すいません」

「まあいいよトウマくん」

「すいません博士」

「じゃあ観察を始めようか」

「「はい」」

観察室へ入り施錠を行い元いた部屋を見る。

話をしていると銃を突き付けられたDクラス職員ノガタと思われる男がやってきた。


「はやくあの扉の前に行け」

「はいはい 分かってるよ」

「手錠を外すが変な真似はするな この仕事を終えたらお前の刑罰は減るよう国へ申請してある」

「あーうぜえ 早くしろ」

「博士 手錠を外しました 部屋に入れても?」

スピーカーの音が入り「中へ入ってもらえ」という合図をするとDクラス職員が入っていく。


「じゃあ始まるよ 目を離さないでね」


SCP:SCP-173

被験者:D-1897

日時:2024/2/25 12:23:50


D-1897「なんだ・・・このおもちゃで遊ぶだけか?おい いいんだよな?」

1分ほどSCP-173に動きは無くノガタは警戒しつつも観察を行っている。


カチャカチャという音と共におもちゃの恐竜の形をしたSCP-173が自立運動を始める


D-1897「おい これなんだ もういいだろ」

D-1897「あ?この音って昔遊んでた・・・」


D-1897が突如SCP-173に興味を示しだし警戒心が無くなったのか触り出す。


D-1897「あー・・・懐かしいなぁこのよくわからん汽車のおもちゃで遊んだなぁ」


この部屋に遊んでいたおもちゃがあるという異常性を全く感じないのか何も疑わず手に取って眺めたり台の上で汽車のおもちゃを走らせている。


ここで監視役ニカイドウが中止を申し出るも続行。

それに続きトウマがデータベースから汽車のおもちゃを特定した。


会社名:ハナニラ

発売日:1978年

汽車の形をしたプラスチックのおもちゃ。1986年まで製造しており小売店などの景品、玩具として一定の需要がある。

事故などの報告は無い。


博士も目を通すが異常性は見当たらない。


D-1897「あれ?これもあるのか 楽しかったなぁタカハシとこれで遊んだなぁ」


SCP-173が動いている事や自分の遊んでいたおもちゃが出ることに対しての警戒心というものは全く見受けられず楽しんでいる。

とても30人近くを殺害した凶悪犯には思えない。


D-1897「あー・・・このボール懐かしいなぁ これで確かミヤタを壊したんだったか 上手く隠せて結局誰が犯人か分からずじまいだったけどアレが一番最初か・・・タノウエ、ムラタ・・・色々壊したけど初めてには劣るな」


思い出を引き起こす能力なのか独り言を言い過去の殺人歴を語っていく。

一部未発覚のものに繋がる可能性があるが、外部へは出せないため非公開。

他のおもちゃをガサガサと漁りながら様々な事を呟いていく。


D-1897「おもちゃは高校生になってからヒトになったからなぁ・・・チマチマ壊すのはダメだ 28人の時はいっぱい遊べた逮捕ってのは納得いかないが、こういう昔のおもちゃと」


突如言葉を中断し漁っていた手が早くなっていく。

ガサガサと探す音が徐々に早くなっていく。


D-1897「これもあるこれもあるこれもあるこれもあるあれもあるこれもあるこれもあるあれもあるこれもあるあれもある」


壊れたラジオのように漁って行き次第に顔を近づけていくと肩から上が30㎝程度であったはずの恐竜型のおもちゃに入って行く。

漁る事をやめないためガサガサと漁る音がどんどん早くなっていき次第に腰まで入って行く。


D-1897「あった!76人全員いる!サトウミヤノタナカイノウエナグラ・・・」


そこから声はほぼ聞こえなくなっていったが小さくではあるが笑い声を発するのが聞こえそれを機に声は一切聞こえなくなった。


ガサガサとする音も徐々に聞こえなくなっていた。

恐竜のおもちゃは180㎝程度まで膨らみガタガタと自立運動をを行っていった。


ピー!


ビープ音が聞こえた後に部屋の四方から機関銃が出現しSCP-173を破壊していく。


30㎝も無いほどの大きさになったが、中からD-1897は発見されなかった。

その後SCP-173は再生し30㎝の大きさの元の形に戻り再度カタカタと動き出した。


実験終了


D-1897:不明(収容された際は鑑みると死亡)

SCP-173:依然危険性が見受けられるEuclidを維持



「トウマさんあれどうなったんですか・・・?」

「そんな事より何か興味深い事は見つかった?」

「あぁ・・・あれは対象の”おもちゃ”だと思ってるものが出てくるようですね」

「やっぱそうか じゃなきゃ人名は出てこないもんね」

「さらに言えば恐らくですが転送ではなく圧死したんじゃないですか?とんでもなく小さくなるぐらい」

「うん そうだね どうです博士?大体の意見は初見の人間でも同じようです」

「やはりそうだね まあ大きい成果は得られなかった」

実験室を後にし何とも後味の悪い観察を終えたニカイドウはいつもの実験より精神的ダメージを負っていた。


「ニカイドウ落ち込んじゃだめだよ~?」

「トウマさん・・・まあ大丈夫です」

「うんうん ならいいいよ」

「じゃあ今日はもう戻ります」


「じゃあね・・・明日死なないようにね」

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