第2話 危険なお仕事

ピピピ

電子音で起きニカイドウは目をこすりシャワーを浴びる。

準備を終えトウマに指定された場所へ向かう。


「や、ニカイドウ昨日はよく寝れた?」

「へとへとだったんですぐ眠れました」

「ははは 今は疲れて無さそうだし大丈夫だね」

「まあ体調は大丈夫ですが今日は安全なんですか?」

「うーん私といる以上それは望めないかな?」

「ですよねー」

つかつかと歩き食堂へと向かう2人。


「最後の晩餐にならないようにね」

「怖いこと言わんでください」

「はははごめんごめん」

2人は食事を盛りもぐもぐと食べ始める。


「今日の箇所はどこなんですか?」

「ちょーっとだけ危険かな まあ私のいう事聞いときな」

「怖いなぁ」

「まあそんな怯えなくてもいいよ マニュアル通りに動いてリスクを最小限に抑えて後はやることを確認してからチェックリストみたいに動けば大丈夫」

「基本的にそういうものなんですか?」

「ああ そう思うのか 全ては当てはまらないよ何事にも例外はあるさ」

「例えば・・・?」

「うーん君の職員レベルではまだ考えなくていいかな?でもいずれ死ぬかどうかの作業が来るからその時は覚悟しときな」

「はい・・・」

「ははは ご飯が不味くなっちゃうね こういう話は休憩時間にするよ」

「確かに喉の通りが悪くなったような・・・」

「ははは 面白いねえ君」

死がちらつく会話を食事中にすることは今までなかったニカイドウにとってトウマの会話は常軌を逸する物であり食事が途中から美味しく感じなかった。ニカイドウにとっては食事中になんてしてほしくない会話であった。


「「ごちそうさまでした」」

「今日も美味しかったな~」

「俺は今から死ぬかもしれないと思うとあまり食が進みません」

「何言ってんの こっからこんなのばっかりだよ?」

「うへぇ・・・まあ覚悟はしときます」

「まあ肩肘張らずにね」

「まあいざとなったら助けてもらえるんですよね?」

「え?そんなことするわけないじゃない 自分が助かる方法を模索するの 下手に助けてSCPに何か起きたらどうなるか分かんないもん」

「うあ・・・肝に銘じときます」

「良かった良かった そんな考えだったらたぶん死んでたよ君は」

「お互いに生き残るのではなく自分が生き残るか・・・」

「あ!・・・私が死んだら施設の部屋が封鎖されるから君は若干運の要素もあるかもね!ははは そうなったら終わりだから気を付けてね」

「お互いに生き残りましょう!」

強く決心したニカイドウは今日の仕事場へトウマに案内されながら歩いていき説明を受けた。

今日は生きている鞄のような物の部屋の掃除と点検を行うらしい姿形を変えたりして近づいてきたものを食べてしまうというシンプルに危ない物らしい。

これより恐ろしい物が・・・と思ってしまったがとりあえずは目の前の作業を意識することにして廊下を2人でテクテクと歩いていく。


「SCP-101・・・つきましたね」

「さっき言った通りうかつに近づかないでね」

「わ、分かってますよ」

「よろしい じゃあ行こっか」

ドアを開けると中に2人おりコーヒーをすすっていた。おつかれーなどとトウマが言うと姿勢を正しこちらに挨拶をしてくれた。どうやらこのSCPは警備が必要なようで常にここでレベル2以上の職員が警備をしているようでかなり厳重な管理が伺える。


「お疲れ様ですトウマさん 今回のゴミは持ってきました?」

「いやいやとても運びきれないからレベル2の職員が後で持ってくるよ」

「では先に点検を?」

「うーんそうだね 点検は私がやるし掃除はこの新人君がやるんだ」

「大丈夫なんですか?そこまで危険ではありませんが・・・」

何やら不穏な会話が聞こえてくる。流石に無視はできない。


「えっトウマさん俺大丈夫なんですか?」

「あはは へーきへーき 失敗しても片腕無くなるぐらいだよ」

「一般にそれは大損害です」

「そう?ここは一般なんかと一番かけ離れてるから忘れちゃった」

「うぐっ・・・確かに・・・」

「ははは じゃあ掃除をよろしくね 私の周りには絶対近づかないで」

「はい」

機械的な扉を開けると中には聞いていた通り学生カバンのような物が置いてあった。

ニカイドウは部屋の隅へ歩きトウマの様子を窺いながら掃除を始めた。


「うんうん 問題なさそうだね ゆっくりでいいから部屋の掃除綺麗にやっちゃってね まあこの後少し汚れるんだけどね」

「了解です まあ早めにやらせてもらいます」

学生の時ぶりに真面目に掃除をやるニカイドウであった。

一方のトウマというと鞄に飴玉を投げ込んだ。

次の瞬間カバンは飴玉を飲み込むと形を変えキャンディの袋になった。


「ど、どうなってるんです」

「ほらほら掃除掃除」

「は、はい・・・って、え?あれって俺が高校の頃無くしたポーチか?」

「おいおいニカイドウくん 今の飴玉のくだり見てたろ?こいつは変化するんだ相手の欲しいものとかを察知してね」

「あ、ああ・・・すいません・・・すぐ掃除します・・・はい」

「よろしい 惑わされないようにね」

再び掃除を始めるもトウマが何かを与えると姿をころころ変えトウマはそれで遊んでるようにしか見えない。

20分ほど経ち乾拭きを終えニカイドウはトウマに報告を行うと一旦部屋を出ることになった。


「うわっ!?また消毒か!?」

「ははは 慣れなよいい加減」

「・・・すいませんね」

「落ち込まない落ち込まない!」

「なんだか慣れてきたらダメな気がする」

「ははは 大丈夫死ぬか慣れるかだから」

「あー怖い」

部屋に戻るとゴミ袋や明らかに汚染されてそうなマークのついた袋まである。

触りたくないと思っていたがトウマが机の上にあった手袋を装着した所を見て腹を括ったのか諦めて近くにあった手袋をはめる。


「ははは 流石に察してくれたかい」

「まあ・・・はい・・・これ絶対危ないですよね」

「大丈夫大丈夫破かなきゃ大丈夫だから 防護服もあるから着てね」

「ワカリマシタ」

「何故に片言 笑えるな」

「はぁ・・・これですかね?着ますよ」

「それ私用」

「え?これ男性用って」

「ああ 胸がその・・・ね?」

「あ!いや~・・・すいません」

「たはは・・・それ着るだけでいいからさ・・・」

「は、はい・・・」

予期せぬ気まずさに守衛である2人も目を伏せている。

ニカイドウは全力で何故そんな事を聞いたのか後悔していた。


「じゃあこれ運びますね」

「うん お願い」

「さっきはその・・・」

「いいからいいから ほら行こ?」

「はい」

扉が再度開き鞄の前に2人で来た。

姿を変え女の子が好きそうなピンク色のランドセルになった。


「嫌味な奴・・・」

「え?」

「あ ごめんごめん じゃあその袋をこいつにおしつけて 半分食べたら手話していいからさ 食われないでね」

「は、はい」

トウマに言われたまま袋を慎重に鞄に押し付けるともしゃもしゃと食べ始めた。

半分ほどで手を離すと自動で食べてくれた。


「ほらほら次いいよ」

「は、はい」

「どんどん食べさせろ こんな奴いいように使え」

「俺はしたくないんですからね~」

「ほらほら 早くはy・・・あっ!」

急かされながらやっていると転びそうになってしまった。

その一瞬の隙をトウマは見逃さずニカイドウを横に蹴り飛ばし心配そうにかけよる。


「たはは ごめんね?骨折れてないよね?」

「がはっ・・・うっ・・・」

「あー 私やっとくね?」

痛がってるニカイドウを横目にトウマが全て終わらせ荷台にニカイドウを乗せ前の部屋に戻る。


「見てましたけど いい蹴りでしたね」

「ははは 黙っといてね」

「了解です」

「悪いね」

「いえいえ それよりこの新人はどうします?」

「ちょっとここで休ませる」

「わかりました」

痛がるニカイドウも徐々に痛みが無くなっており服を楽にさせられ水を飲むと徐々に体力が回復してきた。


「うぅ・・・完全にあばらがいった・・・」

「あ~・・・医務室行かなきゃだね~」

「場所教えてくれればいけますよ・・・」

「大丈夫大丈夫ほら 持ってあげるから」

「すんません」

肩をかつがれながら医務室へ行くことになったニカイドウ。

他の局員の目線は「またか」と言ったような反応だ。


「また?トウマあんた優しいけど力の加減しなきゃ」

「たはは・・・まあその・・・治せます?」

「あばらぐらいならまあ二週間あれば大丈夫でしょ」

「じゃあ二週間後また来ます じゃあねニカイドウ」

「トウマさん・・・ありがとうございます」

「え?」

「俺のためにすいません ここまで」

「あ・・・いや こんな事初めて まあゆっくりしてなよ」

扉が閉まりトウマはどこかへ行ってしまった。


「あなたトウマのために頑張りなさいよ」

「了解です」

「まあ鎮痛剤打ってレントゲンとって包帯巻いて終わりね」

「お願いします・・・」

痛みも薄くなりレントゲンを撮ると綺麗に折れてるとのことで二週間かからないかも?とのことで安堵できその日はゆっくり休ませてもらった。



「なんであんなものを見せたんだ101・・・」

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