第13話 それは非常識という
「おい。聞いて良いか?」
猿だから、表情が読みやすいのか、凄く怪訝そうな顔に見える。
「なんだ?」
「さっきから、どこから物を取り出している?」
カウンターに積み上がった、角ウサギを指さす門番。
「うん? 亜空間収納庫だよ」
「亜空間?」
頭の上に、大量にクエスチョンマークが浮かんでいそうな表情。
「ああ。この黒い渦の先は、自分が創った世界になっている」
その一言で、いきなり緊張の様相とガクブル状態。
よくよく考えると、教会とかもあるし。今思えば、とんでもない事を暴露した瞬間である。
「ちょっと待て。今、自分が言った言葉を、理解しているのか?」
「当然だろ」
その言葉に、おまえは何も分かっていない、という感じで反論が来る。
「世界を創るのは、神の御業だ。人がして良いものじゃ無い」
「出来たし。便利だから、良いだろう?」
お気楽にそう答えるが、許してくれないようだ。
「おまえそこにいろ。絶対逃げるな」
そう言い残して、お猿さんは駆け出していく。
そのやり取りを見ていた、犬のお姉さんも、あきれたような顔をしながら、一応角ウサギを査定してくれる。
「この二十羽で良いですか? どれもこれも、毛皮は駄目で食肉用。銀貨二十枚です」
「はい。ありがとうございます」
コインを受け取るが、鋳物感丸出し。
これはあれだな、国どころか町単位できっとレートが違うんだろうなぁ。
まあ良い。
ついでに、ついストックしたウルフのことも聞いてみるか? でもこの人犬っぽいから崇拝の対象だったらいやだな。
すこし気を使いながら聞いてみる。
「すみません。フォレストウルフとかも買い取りが出来るのでしょうか?」
そう聞くと、またかよ、焦がしていないだろうなと言う顔で対応してくれた。
「はい。できますよ。焦げていなければ、一メートルほどの小型の物で銀貨五枚。焦げていれば二枚ですかね」
しっかり、情報をくれた。俺だと焦がすの前提か。
一メートル五十センチメートルの、大きさの個体。
基本的に、冷凍をしてある。
一から二カ所に、アイスニードルが刺さった穴があるが、どうだろう?
「まあ、焦げていないし、成体。冷たいのは魔法ですね」
そう言って、今度はニコニコ顔だ。
「銀貨八枚で、いかがでしょうか?」
「じゃあもう一匹出します」
そう言って、カウンターへ出す。
「はい。では二匹分銀貨十六枚です。ご確認ください」
「ありがとうございます。それと、此処のギルド。獲物を捕るなら、ハンターでしょうけれど。入るには、どうすればいいのでしょうか?」
「ハンターなら、今受付できます。互助会会費が年銀貨五枚。病気とか怪我のとき一時金が出ますので、この会員証はなくさないでくださいね」
そう言って、金属のプレートを貰った。
真鍮ぽい。
「依頼とかの達成実績で、ランクが上がります。むろんランクが上がれば、各種優遇措置や先ほどの一時金の金額が上がります。年会費は銀級以上は、無料ですので頑張ってください」
「ランクねえ」
そう言って、会員証を見る。
「それは、黄銅級カードです。未成年初心者用の、木札から始まり、黄銅、銅、鉄、銀、金、白金、その上は運営に関わるクラスになるので一般には秘匿です。それでギルド員の証明書を発行するので、この二枚にサインをお願いします」
そう言って、かなりごつい紙と、葦ペンを渡される。
漢字で、サインをする。
「では、このプレートの上に用紙の一枚を置いて、その上に会員証。その上に手を置いて魔力を流してください」
出されたのは、真鍮に幾何学模様と文字が書かれた板。
言われたように、用紙を乗せ、次に書かれている四角に合わせるのだろう。会員証を載せる。
手を重ね、魔力を流す。
ポワッとプレートが光り、横にいつの間にか黄銅製のプレートができあがっていた。さっきの用紙の写し。
ただこの、総合能力という項目はなんだ? 『九十八』と書かれている。
「うわ。私初めて見たかも。凄いですね能力九十八ですか。普通の成人で十二とか十三なのに」
そう言って、犬のお姉さんの目が、キラキラになった。
普通の成人で十二とか十三が、九十八で良いのか?
「これ、壊れているのじゃ?」
「そんな事は絶対ありません」
断言された。
そうして、用紙の控え分と、自分のサインがいつの間にか浮き上がった、黄銅のカードを受け取る。能力値は表示されていない。
「今ので、全世界のギルドに登録されました。カードの端に、剣とボアが書かれた丸い記号が出ているのが、ハンターギルドのマークです。所属ギルドが増えればギルドマークが増えます。ランクが違うとカードが増えますのでご注意ください。それと、依頼が来たときには、そのカードのマークが青くなりますので、赤くなる前に、なるべく早く。お近くの対象ギルドへ出頭をしてください。手続きが出来ないと降格もありますので」
そんな、事をしていると猿が帰ってきた。
何故か、五人も仲間を連れて。
「おとなしく居たな。こい。この町の代官様と、丁度査察に来られていた、辺境伯様がお会いになる」
そう言って、周りを囲まれる。
そして、俺はドナドナされていく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます