第27話 千崎と
千崎夫婦の夫が支払の期日を聞いてきた。
「お子さんを引き渡す前に、一括で振り込んでいただきます」
と花子は、答えた。会社の規定であり、変更は認められない。
「子どもに障害が見つかった場合は、どうなるの」
と千崎夫婦の妻が、大事な点を確かめた。
花子は、障害が認定された時点で、対応が異なると説明する。
「妊娠中に、契約された場合は、新型出生診断により染色体検査を行い、何らかの障害が認められる場合は、御相談します。誕生した時点で、先天的な障害が認められる場合も、御相談します。お渡しして、二~三歳になって障害が認めらる場合もございますが、そのために、斡旋した子どもを返されても当方でも困りますが」
そうだろうなという顔で、仙崎夫がうなづいた。
先ほどの質問を忘れたかのように、千崎妻が、
「手許に赤ん坊が抱けるのは、いつになりますか」
とさも楽しみだといわんばかりに、訊ねてくる。
「通常、一年間は、お待ちいただきます。あるいは、育児者が育児困難という理由で、子どもの引き取りを依頼してくる場合も少なからず、ありますので、一概にいうことはできませんが」
これまた、理解が難しいケースだ。
仙崎の夫が、
「できるかどうかは、分かりませんが、頭のよい子を望むことはできますか」
「そのようなご要望は多いのですが、父親や母親の学歴は申告制ですので、確実に保証することができません。もし、自分で、誰かの精子をご用意なさるのなら、別ですが」
この手の質問は、日常的にあるので、花子は、マニュアル通りに回答する。
「それでは、お任せするしかないですね」
理解していただいて、嬉しかった。
「わかりました」
千崎夫「いくらになりますか」
花子「おそらく三百万円はいくかと」
千崎夫「やむをえないでしょう」
花子「契約書を作成して、お宅に送りますので、よろしければ署名捺印して返送して下さい」
千崎夫「わかりました」
K夫婦は、里子として預かっていた子どもを養子とすることにしたと言ってくれた。私の中の小さなこどもは、だいぶ小さくなって静かにしている。
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