第15話 遊園地で大失態を犯した
加奈と遊園地にやってきた。恋人がやってくるデートスポットに数えらえる場所だ。
遊園地を提案したのは、加奈である。浮気率99パーセントといっていたのに、こういうところに案内するんだなと思った。遊びに行くといっても、公園程度かなと思っていた。不器用すぎる男とは明らかに異なる思考をしている。
加奈は告白した男性に対して、未練は残っていないのだか。すぐに諦めたのだとすれば、未練がましい男とは真反対の性格をしている。切り替えの早さについては、見習っていきたい。
遊園地の中には、たくさんの人が集まっていた。少なく見積もっても、1000人以上はいると思われる。二人でやってきたところは、人気スポットなのかなと思った。
加奈は恋人とやってきたわけでもないのに、とっても楽しそうにしていた。誰とでもいいから、遊園地にやってきたいと思っていたのかも。
「光さん、今日はとっても楽しみだね」
好きな人と過ごせるとあってか、テンションははっきりと高かった。
「うん。すっごく楽しみ」
昨日の夜は緊張して、3時間くらいしか眠れなかった。睡眠不足ゆえに、瞼は少しだけ重かった。
どんなに眠いとしても、今日だけは頑張ってみせる。好きな人と遊園地で過ごせるのは、夢を見ているかのようだ。
加奈はジェットコースターを指さす。
「光さん、ジェットコースターに乗ろう」
しょっぱなからジェットコースター。見た目は穏やかそうだけど、スリル系を好むのかなと思った。
ジェットコースターに乗れば、眠気から解放される。光は前向きにとらえることにした。
「よし、一緒に乗ろう」
加奈は嬉しいのか、光の腕を引っ張ってくる。
「ジェットコースターに向かって、レッツゴー」
急激に力を加えられたために、バランスを崩してしまった。数秒後、加奈の上にかぶさることとなった。
男は手を動かすと、「むにゅっ」という感触があった。何なのかを確認すると、加奈の胸であることに気づく。
三回目の告白で、かすかに雰囲気になりかけていた。今回の失態は、すべてを無にするには十分だった。二度と口をきいてもらえないどころか、警察に突き出されてしまいかねない。
胸を触られた女性は、淡々としていた。光はそれを見て、かえって怖さを感じた。
加奈は立ち上がったあと、服の土などを払った。
「女の子の胸を鷲掴みしたからには、パフェくらいはおごるように」
光は取りつかれたように、頭を何度も下げ続ける。
「パフェで許されるなら、喜んでおごらせていただきます」
頭を下げ続けている男に、加奈はストップをかけた。
「光さん、そんなことしなくてもいよ」
「加奈さんの大切なところを・・・・・・」
「わざとだったら絶対に許せないけど、不可抗力によるものでしょう。今回だけはなかったことにしてあげる」
加奈は手を差し出してきた。
「光さん、ジェットコースターに乗ろう」
「あの、その・・・・・・」
光はおそるおそる手をつかんだ。
「転倒するのは嫌だから、ゆっくりと歩こうね」
「うん・・・・・・・」
加奈は陽気にふるまっているけど、本心はズタズタに切り裂かれている。そのことを考えると、いてもたっても居られない気分になる。
「光さん、未来のことだけを考えていこう」
「うん・・・・・・」
「ジェットコースターのあとは、お化け屋敷に入ろうね。そのあとは、グランモンセラーに乗りたい」
「加奈さんは怖いところが好きみたいだね」
加奈は首を横に振った。
「そんなに好きではないけど、男の人となら乗れそうな気がする。光さんのことを、
とっても頼りにしているよ」
頼りにされた経験がないからか、大いに戸惑ってしまった。頼りがいの男と判断されれば、元から低かった好感度は完全に地を這うことになりそうだ。
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