第363話 言葉の急スピードにはお気をつけください。

「うん?」


「どうしたの?愛梨?」


「何か今優くんから助けてって聞こえた気がする」


「愛梨。」


「何?」


「ずっと助けてたら進藤は成長しないよ?ほっておくのも手だよ。」


「なるほど。香織のアドバイスは役に立つね!」


「でしょ?だからそのアドバイスを……

お姉さまに与えようと!」


「い、いや………私………求めてな……」


「お姉さま。恋愛経験は?」


「へ?」


「恋愛経験は?」


「恋愛経験…………は………」


「無いですよね。ゼロですよね。皆無ですよね。」


「言い過ぎ………」


心音だってちょっと傷つく。だが。


「どれだけイケメンの内科の先生に告白されても断り、皆が羨むような塩顔イケメン主治医に告白されても断り、お金いっぱい持ってる大病院のボンボンに告白されても断った貴方が恋愛経験があるとは言えないと思いますけど。」


「何で………そのことを………」


「企業秘密ということで。」


知ってるヤツって晃太くらい………晃太からの伝達だろ…………


「まず貴女は晃太くんに本気で恋をしていた。そこは間違いないですか?」


「う、うん………それは………ホン」


「そこから間違ってるんですよ。お姉さま」


「え?」


「晃太くんへの想いは愛、恋愛、かと言われればそれはそうじゃないだろうということになります。」


「な、何で?しっかり愛してた………」


「所詮は親族。愛を伝えるにも限度があります。その中で愛、恋愛か、と言われればそれはそうはいいがたい。」


「な、ちゃんと!ちゃんと!ちゃんと晃太のこと好きだったし!」


「いや、無理です。」


「無理ですって…………」


「所詮親族。愛も幻想だった…………」


「違う!」


大きな声で叫ぶ心音。


「私の人生の中で一番長く恋をしていたのは晃太よ!それは間違いない!」


「ホントですか~?」


「ホントよ!」


「じゃあキスとかしたかったんですか?」


「したかったよ!めちゃくちゃディープなヤツを!」


「セックスもしたかったんですか?」


「したかったよ!本気で赤ちゃんつくるつもりだったんだから!」


徐々にヒートアップする心音。


「ホントに~?本気ですか~?」


「茶化すようだけどホントだから!ホントのことだから!」


「じゃあもう1回聞きますよ?」


「何回でも答えるわよ!」


「お姉さまはキスやセックスを

黒井 和虎 としたいんですか~?」


「もちろん!したい!したいから!したいんだから…………って………アレ?」


「はい。録音成功。」


スマホの録音機能のボタンをポチっと押し、ニヤニヤと笑う香織の顔は悪ガキそのものだった。


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