第151話 眠れる保健室の彼氏

今見えるのは真っ白い景色。

それ以外何もない。

何があったっけ?何があったっけ?思いだそうにも思い出せない。

あ、確か綾崎の腹を刺すのを止めるために俺が割り込んで刺されて……アハハ……死んだか?意外と簡単に死ねたな。色々な経験をしてきたけど死ぬときは一瞬なんだな……アハハ……悔いがないと言えば嘘になるがもう死ぬなら仕方……

うん?何か苦しい。何か首を絞められているような?いや、口をふさがれているような…そんな感覚が……アレ?死んだはずなのに…何か苦しい……あれ?何でだ?あれ?……めちゃ苦しい。息が出来ない……あれ?息が出来ない?てことは俺生きて……


「っぱぁ!」


頭がクラクラになりながらも目を覚ますとそこは保健室だった。そして周りにはアリスさんと忍さんと保育の先生、新川 誓(しんかわ ちか)先生が……そして


「あ、目を覚ましたぁ……良かったぁ……」


泣きまくった後が残る香織が横に……


「痛い痛い……痛いから……」


「あ、ごめんぅ……」


喜んでくれんのはいいのだが流石に痛みが…


「てか俺が倒れた後どうしたんですか?」


その答えは忍さんが答えてくれた。


「急に中から悲鳴があがったから予備のため持ってきていたマスターキーで中を開けたら血まみれの晃太くんと震える綾崎さんがいて……」


「それで急いで保健室まで来たわけ。」


「ホントに。今の若い者はよく分かんないね?カッターナイフで人刺すかね?事情はよく知らないけど。」


はぁ……っと溜め息をつきつつ新川先生はタバコに火をつける。


「先生……今勤務中……」


「まぁ、昼休みだし。ばれないからいいだろ。」


フゥ~っと気持ち良さそうに煙を出す新川先生を見てうちの学校にはこんなヤニカスしかいないのか?と疑問に思ってしまう。まぁ、校長がアレだったからな……


「イタタ……」


「あ、まだ動かない方がいいよ。カッターナイフの刃は全部とったけどまだパックリ開いてる状態だから。」


「え、俺そんな状態で目、覚ましたんですか?」


生命力エグくない?


「いや、まぁ、生命力もあるんだろうけど一番は彼女さんのおかげだよ。」


新川先生が香織をさす。


「香織が何かしたんですか?」


「えへへ……こうたん。童話とかでよくあるじゃん?眠れる姫にキスしたら起きるって」


「あ~。確かにそんな話あるな……うん?待て。て、ことは?」


ニコニコ笑顔の彼女はハツラツとこう告げる。


「起きるまで。何分だろ?5分?いや、10分!くらいずっーとキスしてた!これこそ愛による結果だよね!」


「……」


真っ白い景色の中で感じた息苦しさはこれだったのか………なるほど………


うん。何か嫌だな。生きてる時も死にかけの時も手綱は香織が持ってるのかよ………

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