第62話 始めから決まってた。

平塚が倒れ、死屍累々となった工場の中。

立っていたのは……


「……………忍…………」


「すいません。私の不手際で………生徒会長の身を危険にさらしてしまい。まだまだ精進が必要ですね。ホントに申し訳ありません…」


「忍。忍、忍、忍、忍…………しのぶぅ~」


ほどかれた手のヒモが取れた途端忍に抱きつくアリス。


「うわぁぁぁぁぁぁん!!!」


彼女の泣き声は寂れた工場の中に響いた。


何で忍がここにいるのか。

何で忍が分かったのか。

何で忍が力を解放してくれたのか。

疑問はたくさんあるが………今はとりあえずそんなことはどうでも良かった……

目の前にいるアリスのヒーロー、アリスの

好きな人。その事実だけが頭をぐるぐる回り。


「忍………」


「はい。何ですか?生徒会長?」



「好き。大好き。私と付き合って………」



「アリス~!大丈夫~!って何この人の数!」


誰もいないはずの工場に響いた彼女の声。

その声は…………





「香織………ちょっと待て。ちょっと待てよ?バレないようにしないといけないだろ?」


「今はそんな場合じゃないでしょ!ってホントにどうなってるの?この人の数は?血の飛んでるのは何?」


「………………忍先輩がしたのか?」


「…ホントだ。血がバットに……」


「てかアリスさん、何か睨んでないか?」


「あ、ホントだ。どうしたの?あり」


「香織!今私不意に告白しちゃったのよ!」


「え?」

「へ?」


「そこに上手いいやいらないタイミングで香織の声が被って………どうしてくれるの?」


「いや、どうしても何も、私は心配して来ただけで。」


「それは知ってるよ!だから怒りにくいんだよ!」


アリスさんは何とも言えない顔で言葉を吐き出す。


「助けに来てくれたのは理解してるけど……タイミングがぁ」


「もしかして私タイミング悪かった?」


「その話をアリスさんは長々としてるんだよ。」


「でも!タイミングとか分からないし!」


「バカだしな。」


「晃太くん!キスするよ!」


「したいだけだろ。」


「もう!いちゃつくのもやめてよ!私はまだ答え聞いてないし。まずこんな形で告白とかしたくなかったし。」


「それはわかる!」


「わかる、じゃねーよ。お前がそれをハナから折ったんだよ。理解しろ。」


「もっとちゃんと告白したかったのにこれじゃ……」


「大丈夫ですよ。」


「大丈夫じゃないし。もうフラレるよ……」


「ふりませんよ?」


「だって。ふりませんだって。どの口がそれを言うんだろうね?」


「この口です。生徒会長、いやアリスさん。ちゃんと見てください。」


「この口だって。この口。この口。この口……へ?」


そこにあったのは忍の口が。


「アリスさんの気持ち分かりました。なら私も自分の気持ちを伝えます。」


「へ?」


「私、五十嵐 忍は生涯をかけてアリスさんを守りきることを決めています。もちろん

あの時から。

だから一生そばにいさせてください。」


おいおい………それって………


「スゴッ!まるで結婚の言葉みたい!」


「けっ!こ……ん……あへ。」


「アリスさん?アリスさん?」


キャパがオーバーしたアリスさんは気絶する。


………つまりどうなったんだ?



「晃太くん!」


「あ?」


「夫仲間が増えたね!」


「…………それ喜ぶべき点?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る