第55話 暴走モードに入ったら抜け出すまで結構かかるからめんどくさい。
香織の行動が分からないままただただ裏声でアリスさんと忍先輩の横のプリクラの筐体に立つ。
「おい。何するんだ………」
「ビリビリの餌食になりたくなければ私に同調して話して。」
「…………たちの悪い脅迫 恐喝だことで。」
「ア、プリクラってスゴいよね~!」
「うんうん。」
「だって500円で何種類の絵柄から選べて写真が取れてしかも可愛く撮れるんだから!これはスゴい!しかもスマホや携帯にデータを送れるんだから!スゴい!スゴい!ね?スゴいよね?ダーリン!」
「あースゴいネー。」
「これは撮らなきゃ損だよね!?」
「アー、損ダね。」
適当に相槌をうつ晃太。もちろん裏声で。
その声は隣の先輩方に届いたみたいで。
「………だってさ!めちゃめちゃスゴい筐体みたいだよ?一回撮ってみない?」
「あー、か、会長……じゃなくてアリスさんがそう言うなら……」
少し疑問視しながらだが500円を投入する忍先輩。
「と、言うかさっきの声。どこかで聞いたことがあるような……?」
「そう?私は知らない声だけど?」
正解ですよ~。一回会ってます。てか一回であの瞬間だけ会っただけで覚えてるってスゴいな……忍先輩。
で、アリスさんはたぶんホントに分かってないっぽい。しっかりしてくださいよ。貴方のためにしてるんですよ?
プリクラの操作は何か香織がデカイ声でいちいち説明してる風、あ、俺に。晃太にむけて説明してる感じでやってる。それも不自然だけどな?
でようやく写真撮影になる時………香織の本能が暴れだした。
「ア~これはお姫様抱っこで撮らないといけないな~!」
「「は?」」
聞いていた忍先輩と晃太はたぶん同時には?と言った。
「あのー画面にはハートマークを2人でつくろうってかいてあるけど?」
「知らないの?ダーリン?その通りにやると呪われるんだよ?」
「うな………」
うな訳あるか!ってツッコミたかったけどツッコミをいれると裏声がきれそうなので小さくツッコむ。
「うな訳ナイヨー。」
「もっぱらの噂だよ?だからここは私の言う通りに………隣の方も私が言うポーズで撮ってくださいね?これは人命救助なんですから!」
「あ、あの………」
「わ、分かりました!何処の誰か知りませんが人の命のためにありがとうございます!ほら忍、言われる通りにするよ!」
「え、え、あ、は、はい………」
忍先輩………否定してくださいよ。
「よしっ!まずはお姫様抱っこ!Let's Go!」
「………レッツって………」
「ビリビリバットで殴られるところをプリクラで撮る?ある意味スゴくいい記念になると思うけど?」
「そんな記念はいらない………」
溜め息混じりに腰を落とす。
これが暴走の始まりだとよーく晃太は知っていたから。
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