夏祭りに行こう その2
アリサと手を繋いだまま人混みの中をゆっくりと歩く。
「うわぁー! いろんなお店がありますねー! どこから行きますか?」
「はいはい! アタシはかき氷が食べたーい!」
コハルが大きく挙手をして、提案する。
「今日も暑いしな。いいんじゃないかな?」
「はい、ではかき氷を食べましょう!」
屋台に並んでかき氷を食べる。
「くぅ〜キンキンに冷えてるね! 暑い夏にはかき氷がたまりませんなぁ!」
「う〜ん、冷たくて甘くてシャキシャキしてて、いくらでも食べられますね〜!」
「うん、うまい!」
アリサは美味しそうに、シャクシャクとかき氷を食べ進める。
「あっ、そんなに急いで食べると──」
「うっ!? 頭がキーンとしますぅ……!」
アリサは頭を抑えて、頭痛をこらえている。
「ごめん、言うのが遅れたね……。食べるのを焦ると、頭が痛くなるから気をつけて」
「焦り過ぎました……」
「あはは、頭がキーンてなるのもかき氷の
コハルも頭を抱える。
「頭痛が痛いって意味が
俺は冷静にツッコミをする。
「出たー!
コハルがガァーとまくしたてる。
「まぁ、そうだけどさ……。でも大判焼き呼びだけは譲れないぞ?」
「今川焼きだってば!」
「私は回転焼きって呼んでますよ!」
「ふっ、どうやら。どれが正しい呼び方か、決着をつける時がきたようだね……」
「いいだろう、コハル……」
「そんなにこだわるところなんですかね……?」
その後も、大判焼きの呼び方に対する議論はちょっぴり白熱したのだった。
♢
アリサがふと、俺たちのかき氷を見ている。
「かき氷にはいろんな味があるんですね。イチゴにレモンにメロン。どれも美味しそうですねー!」
「実はかき氷のシロップって、全部同じ味なんだよね。知ってた?」
俺はネットで聞き
「え!? そんなんですか? コ、コハルちゃん、一口よろしいでしょうか?」
「うん、いいよー!」
アリサは、コハルからレモンのかき氷を一口。
「レモンの味がしますよ! 酸っぱさがありますよ?」
「そうだー! そうだー! ビタミンCたっぷりなんだぞー!」
2人はどうも信じられないという顔つきをしている。
「見た目の色と香料で、味を錯覚するみたいだよ。試しに目をつぶって、匂いをかがずに食べた見たら?」
俺の提案に、2人は目をつぶったまま、かき氷をパクリ。
「確かに、ただの甘いシロップの味になりました……。目に見えるものだけが真実ではないんですね……なんと……」
「アタシ達は今まで騙されていたんだね……。世界には知らなかった方がいいこともたくさんあるんだね……。美味しくなってリニューアルだと思ったら実は量が減ってるみたいな……」
♢
屋台を散策していると、お面屋の前でアリサが立ち止まった。
「あっ、他の人がしてたお面。こんなところに売っていたんですね! ひとつ記念に買いましょう!」
「いいねー! アタシも買うー!」
アリサはキツネのお面、コハルはひょっとこのお面を購入していた。コハルがひょっとこのお面を装着する。
「クスクス、コハルちゃん、面白い顔のお面ですね〜」
「どーお? お兄ちゃん。似合ってる?」
「ああ、似合ってるよ」
「ひょっとこが似合うって、バカにしてんの!?」
「理不尽にキレるなよ!? じゃあ、どんな風に答えりゃよかったんだよ!?」
「正解は〜お面を外して、『やっぱりお前の素顔をずっと見ていたい……』でした!」
何を言ってるんだ、ウチの妹は……。
「あっ、信じてないな〜! これをされたら女の子は一撃なんだゾ?」
こんなんで落ちる単純な女はいる訳ねーだろ……。
アリサも続いて、キツネのお面を装着する。
「ど、どうですか?」
「うんうん、かわいいね〜、アリサお姉ちゃん!」
俺はここで、ふと思いついた。さっきコハルに言われた通りにやってみたら、場の流れ的にも面白くなるのではないだろうかと。
俺はアリサのお面をそっと、横にずらす。
「え?」
「やっぱりアリサさんの素顔を見ていたい……から」
「〜〜〜ッッッ!?」
アリサはさっとお面を被り直す。
「アハハッ、早速試してるじゃん! ノリがいいねぇ〜お兄ちゃん!」
「こんなんで、ときめく訳ないよね? アリサさん」
「そ、そうですね〜! この程度では! あはははは…… (めっちゃキュンキュンしました〜! あ〜心臓破裂しそうです! 顔真っ赤だから、お面外せないじゃないですか〜!)」
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