命の使い方

@Gpokiu

第1話

田中「夢を叶えられるかどうか。それは、その夢にどれだけ強い思いを持っているかで決まるんだ。」

またお得意の精神論ですか、先生。

田中「ああそうだ。精神論だな。」

先生……、自分はもっと具体的な指導を受けたくてここにきたんです。そんな抽象的な言葉ばかり聞かされても困ります。

田中「おいおい、勝手に困るんじゃない。君が今無駄に思っているそれは、いずれ君の助けになる。必ずな。」

いつくるんだ、そんな時は。


林「そうですね。まずは身体を鍛えてみるというのはどうでしょう。」

き、筋トレ!?いや、それは無理です、先生。

林「ふむ……。何かを始める前から無理だと決めつけるのは、少し勿体無いような気がしませんか。」

もったいない?別に何か失ったわけでもない。無駄な時間を過ごさなくて良くなると考えたら、むしろ得ですよ。

林「はっはっは。それはとても面白い意見ですね。」

先生、自分は本気で言ってるんですよ。

林「だから、面白いんじゃないですか。」


佐藤「自分磨きはな、全て歯から始まる。」

いや、別に自分磨きの方法を聞きにきたわけじゃないんですが。

佐藤「いいか、歯が終わったら次は毛だ。体のあらゆる毛に気を遣え。」

先生、聞こえてますか?

佐藤「髭はもちろんのこと、脛、腕、陰部に至るまで。全てに気を遣え。」

はぁ、そんなの本当に意味があるんですか。


渡邉「あなたは、体無しですネ。」

体なし?なんですか、それは。

渡邉「口無しの反対ですヨ。自分がアドバイスをもてめているというのに、まるっきり実行しようとしなイ。」

いやでも、ちっとも実用的に聞こえないので。

渡邉「実用的に聞こえるか、聞こえないか。それはそこまで重要なことですカ?」

実用的じゃなかったら、意味がない。自分は意味がないことは嫌いなので。

渡邉「はぁ、違いますヨ。実用的かどうかではなく、そう聞こえるかどうかなのです。あなたは少し自分を信じすぎている節があります。自分の持っている情報だけで、全ての物事を判断している。」

それはそうかもしれませんが。全てを鵜呑みにするわけにもいかないでしょう。

渡邉「そうですネ。だから、あなたにひとつ助言をしましょう。」

助言?

渡邉「そうです。あなたが他人の意見を受け入れるかどうかを決めるための、指針づくりをするンです。」

へぇ、指針ですか。

渡邉「そのために、経験をしなさい。いろんなことを経験するのです。一度全てを鵜呑みにするのもいいでしょう。全てを拒絶してもいい。その経験を元に、自分の指針を作るンです。あなたは過剰に失敗を怖がっている。いいですか、この世に失敗していない人などいません。それも、経験ですね。確かに、人生は短い。しかも一度きりだ。私も、全てに挑戦し、命を燃やすなんて熱血じみたことは言いませんヨ。ただ、何にも経験しないのは、命の無駄遣いだ。」

ありがとうございます、先生。

渡邉「はい、どういたしまして。」

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