水面のうたかた、余すことなく

maria159357

第一泡【冥】

水面のうたかた、余すことなく

第一泡【冥】



       登場人物




         竜崎 巧 りゅうざきたくみ


         高本 信彦 たかもとのぶひこ


         岡部 真治 おかべしんじ




































 第一泡【冥】




























 「はあ・・・」


 竜崎巧は、ため息を吐いた。


 転職を2回ほどしてようやく落ち着いた今の職場だが、ストレスがないかと問われれば、決してそんなことはない。


 むしろ、ストレスのない仕事などこの世に存在するのだろうかと質問したい。


 前職はどちらも早めに辞めてしまったため、もう今の仕事も10年目に突入したわけだが、そんなこんなでリフレッシュ休暇という、必要なのか必要じゃないのかよくわからない休暇をもらうことになった。


 しかし、やることがないのもまた事実。


 趣味なども特にない竜崎は、その無駄に長い休暇とどう使えばよいかわからなかった。


 45にもなる男だが、未だ結婚もしていないため、家族とどこかへ出かけるということも出来ない。


 とりあえず休暇の1日目、映画でも観ようかと出かけたのは良かったのだが、いざ映画館に行ってみると観たいものが無く、そのまま公園まで来ていた。


 自分が住んでいるアパートからそれほど離れていないアパートでぼーっとしていると、公園に1つしかないベンチに、老人が近づいてきた。


 「あの、ここいいですか?」


 「ええ、どうぞ」


 白髪を携えながら笑顔で近づいてきた老人に、竜崎はベンチの隅に移動して、老人が座れるように席を空ける。


 「ありがとうございます」


 老人は丁寧に竜崎に御礼を言うと、その空いた場所に「よっこらせ」と言いながら腰を下ろした。


 遊具があるのに、子供がいない公園。


 最近の子供はどこで遊んでいるんだろうと思っていると、老人も同じことを思ったのか、こう言ってきた。


 「最近は、子供たちの声が聞こえませんねぇ。小さい頃から勉強勉強言われていて、なんだか可哀そうになってきます」


 「そうですね」


 「私が小さい頃は、毎日泥だらけになって遊んでいたものです。怪我をして喧嘩をして、近所の大人によく叱られました」


 当時の事を思い出しているのか、老人は小さく笑いながら話した。


 竜崎は相槌を打ちながら話を聞いていると、公園に1人の若者がやってきた。


 長めの髪を茶色に染め、耳にはピアスをつけているその若者は、ベンチに座っている竜崎と老人を見ると、そちらに向かって歩いてきた。


 老人と知り合いだろうかと思っていると、若者はこんなことを言いだした。


 「ちょっと歌聞いてもらっていいですか!」


 「は?」


 「俺バンド組んでるんですけど、今日の練習ドタキャンされちゃって!アカペラで歌うんで!」


 「普通こういうときは弾き語りとかするんじゃないのか」


 「俺、楽器弾けないんで!ボーカルなんで!」


 なんだこいつ、と竜崎は呆れて何も言えなくなってしまったが、若者はこちらがまだOKを出していないにも関わらず、マイク、のような形をしたお菓子を取り出すと、それをマイクのように口元へ持って行き、よくわからない歌を歌いだした。


 もともと音楽などあまり聞かないし、そもそも、歌を聞くなんて言っていない。


 老人も最初は驚いていたようだが、若者が歌いだすと、最近はこういう歌が流行っているんですか、と呑気なことを言っていた。


 若者は1曲分を満足気に歌い終えると、竜崎と老人に感想を求めて来た。


 「俺は音楽聞かないからよくわからない」


 竜崎はそう冷たく言い放ったのだが、同じようにその歌の良さなどわかっていないだろう老人は、真剣に答えていた。


 「そうですねぇ。少し激しすぎるといいますか、私は年寄りですので、もう少し落ち着いたものが好きなのですが、歌はお上手だと思いますよ」


 「おお!ありがとうございます!・・・ところで」


 若者は、竜崎と老人を交互にみて、聞く。


 「こんなところで何してるんです?」


 そんなことを聞かれる筋合いも、答える筋合いもないのだが、老人はそれに対してもちゃんと答える。


 「家でじっとしていてもやることもないので、とりあえず公園に出て来たんですよ」


 「奥さんと出かけたりしないんですか?」


 「妻とは死別しました。今は1人暮らしなんです」


 若者は悪いことを聞いたな、というような困った顔をしていた。


 後頭部をかるくかいたあと、竜崎の方を見て竜崎の答えを待つ。


 「・・・長期休暇中だ」


 「長期休暇中!!つまりは長い休み!じゃあ、3人で出かけましょうか!」


 「は?」


 いきなりそんなことを言われ、竜崎はふざけるなと言う口を作っていたのだが、隣にいた老人が先に答える。


 「良いですねぇ。天気も良さそうですし」


 「ですよね!?ここで会ったのも何かの縁ですし、時間があるなら出かけるにこしたことはありません!!あ、俺は岡部真治です!」


 「私は高本信彦と申します。よろしくお願いします、ええと、岡部さん」


 「真治でいいですよ!俺は信さんって呼びますね!」


 2人揃って竜崎の方を見るものだから、竜崎は思わず名乗ってしまった。


 若者、真治は「竜さんですね!」と勝手に呼ぶことになり、竜崎はどうしたものかと考えていた。


 真治も近くのアパートで独り暮らしをしているらしく、すぐに準備をしてくるから30分後にまた公園に集まろう、ということになってしまった。


 しかも、竜崎が車を持っていることをしった真治は、竜崎の車に乗って出かけようと言いだしたため、逃れられなくなってしまった。


 老人、信彦も準備と家族に少し旅行に行くという手紙を残して行くということで家に向かって歩き出し、残された竜崎は休暇中だと言わなければ良かったと、額に手をつけて後悔していた。








 「よし!集まりましたね!それじゃあ行きましょう!!レッツゴー!!」


 「車の中汚すなよ」


 竜崎が30分より少し前に公園に到着したときには、すでに真治も信彦も着いており、真治にいたっては手をブンブン振っていた。


 このまま通り過ぎてしまうことも出来たのだが、それは出来なかった。


 四駆の黒光りする車に乗せると、真治は興奮したように座席に座りながら、お尻でジャンプしていた。


 「かっけー!!!俺も車欲しいなー!!これって幾らくらいします?ローンどれくらい?500万以上するのかなー?軽でもいいかなー」


 それに答えず、どこに向かうのかを聞いてみると、真治は忍者屋敷に行きたいと言いだした。


 何処にあるのか聞いて住所をナビにセットすると、そこに向かって走りだした。


 「竜さんって仕事なにしてるんです?」


 ずいっと、後部座席から身体を乗りだして竜崎に聞くと、不機嫌そうに口を噤んでいた竜崎だが、ため息を吐いてから答える。


 「車の営業だ」


 「へー!すげー!やっぱ、売るとすげーボーナスとかもらえるんすか?いいなー。俺はずっとバイトだからなー。早くバンドが売れればいいけど」


 「バイト?お前バイト休んで出かけるなんて言ったのか?」


 なんとなく社会人の年齢だとは思っていたものの、まさか言いだしっぺがバイトだとは思っていなかった竜崎は、怪訝そうな表情で尋ねる。


 真治はCDを持ってきたらしく、鞄の中から何がいいかなーと探しながら答える。


 「バイトですよー。でも、俺さぼったことは無いですからね!学生時代からずっと同じところでバイトしてて、シフトもめちゃ入ってるし、有給もほとんど使ってないから、休ませてもらえたんですよね!!」


 「お前幾つだ?」


 「29です!今年30になります!」


 「・・・大丈夫なのか、それ」


 何に対しての大丈夫なのかがわからなかったのか、真治は取りだしたCDを聞いて良いかと竜崎に聞いてきた。


 承諾すれば、手際良くCDを入れる。


 五月蠅い騒がしい曲なのかと思ったら、バラードだった。


 なんで公園ではあんなに激しい歌だったのかは分からないが、信彦も綺麗な曲だと言っていた。


 「真治くん、親御さんは心配してないんですか?」


 「大丈夫です!というか、俺の事は見限ってるっていうか。弟がちゃんとした仕事についてて、結婚もして子供もいるから、俺は夢に向かって頑張ってるんです!!」


 「それでも心配でしょう。親は」


 「まあ、国立の大学まで行かせてもらって、こんなことしてるのは申し訳ないと思いますけどね。でも、会社とかそういう場所は俺苦手なんです!金が無くても、好きなことをしたいんです!!」


 「そうですか。夢を追う事は大事ですね」


 「もったいねぇ・・・」


 国立の大学に入ること自体難しいというのに、そこに入れるだけの頭がある真治に対し、竜崎は思わず呟いた。


 続くようにして、信彦が自分の話をする。


 信彦は奥さんとお見合い結婚で、高校を卒業後そのまま小さな部品を作る工場に就職。


 技術職一筋、その仕事を全うした。


 娘が2人と息子が1人、孫も合計4人いるそうだが、今は遠くにいるため、1人で年金生活をしているそうだ。


 「寂しいですね。遊びに来たりしないんですか?」


 「まあ、年明けに一度来るくらいですかね」


 「お年玉目当て!俺なんてばあちゃんっ子だったから、しょっちゅう遊びに行ってましたよ!」


 「それは喜んだでしょうね」


 後部座席で、真治と信彦が和気あいあいと話している間、竜崎はナビを確認しながら、信号を右折していた。


 忍者屋敷に行きたいなんて子供か、と思っていると、真治が竜崎の身の上話を聞きたいと言いだした。


 ついさっき知り合った奴になんでそんなことを、とも思ったが、真治に加勢するように信彦がこんなことを言った。


 「せっかくの長期休暇、大切な人とどこかへ出かけたりとかしなくて良かったんですか?」


 「確かに!」


 確かにじゃねえよ、と竜崎は心の中で毒を吐いていたものの、真治がしつこく聞いてくるものだから、しかたなく話した。


 自分は独り身だということを伝えれば、真治は「あー、だと思った」と言ったため、眉間にシワを寄せる。


 真治はまた鞄をごそごそ探ると、そこからお菓子を取りだした。


 「こういう時はお菓子で気分転換ですよ!旅の必需品!!!」


 さきいかの袋を雑に開けると、隣にいる信彦に渡し、それから運転中の竜崎にも、運転席と助手席の間にあるスペースにティッシュペーパーを置くと、そこにひとつまみのさきいかを置く。


 それから自分の口に放り込むと、ビールが欲しくなりますね、と信彦になのか、竜崎になのか、聞いていた。


 曲が替わると、真治の好きな曲になったのか、真治がいきなり歌いだした。


 それを信彦は楽しそうに聞いていたが、竜崎は少し静かにしてほしいと思っていた。


 無事に忍者屋敷に着くと、真治は子供のようにはしゃいで遊んだ。


 「信さんも竜さんも早く早く!!ここめちゃ楽しいんですよ!!」


 以前にも来た事があるのか、真治は1人で走って行ってしまい、変な角度の部屋や隠し扉などがある部屋、手裏剣打ちや走りまわる遊びなど、とにかく、ありとあらゆる場所を駆け回っていた。


 信彦と竜崎は、変な角度の部屋に来ただけで酔いそうになっており、なんとか脱出すると、2人揃って東屋で休憩していた。


 未だ元気に行動している真治を見つけると、思わず竜崎は呟いた。


 「あいつは三半規管がおかしい」


 「若いって素晴らしいですねぇ」


 一度真治が2人のもとへ戻ってきたのだが、もう一度だけ変な角度の部屋に行きたいということで、勝手に行って来いと言った。


 満足したのか、ようやく真治が戻ってきたときには、玩具の忍者用手裏剣を持っていた。


 絶対に子供用だろうと思った竜崎と信彦だが、真治があまりにも満足気にそれを持っていたため、何も言わなかった。


 「あー!楽しかった!!やっぱ忍者はみんなの憧れですよね!俺、前世は忍者だったんじゃないかって思ってるんです!」


 「ああ、そう」


 竜崎は適当に返事をした後今日泊まる宿はどうしようという話になった。


 真治が携帯を取りだすと、ちょいちょいと指で触って画面をいじり、近くに泊まれる場所がないか探していた。


 こういうところはやはり若者で、すぐに見つけることが出来た。


 「夕食も朝食もついてるらしいですよ!予約入れちゃいますね!!」


 3人部屋で空きがあったらしく、さっさと真治がそこを予約すれば、到着したときスムーズに駐車場へと案内される。


 「広い!!涼しい!!」


 料金からは想像出来ないような広い部屋と素晴らしい景観に、信彦も子供たちに渡された携帯で写真を撮ろうとするが、やりかたが分からずあたふたしていた。


 すると、ひょいっと顔を覗かせた真治が、スマホを操作してカメラを出す。


 「信さん撮ってあげますよ!」


 そう言うと、信彦から携帯を預かり、景色を背後にした信彦にピースをするよう求め、シャッターを押す。


 それを信彦に見せると、嬉しそうに笑った。


 竜崎も撮ろうと言ったのだが、断られてしまったため、真治は自分の携帯で自撮りをしたり、信彦と撮ったりしていた。


 夕食も美味しく平らげると、それから温泉に入ってゆっくり過ごす。


 「気持ち良いですねー。やっぱ温泉いいわー」


 「温泉なんて久しぶりです」


 何も言ってはいなかったが、竜崎も気持ちよさそうに目を瞑っていた。


 部屋に戻ると、ごろごろしながら真治は何かの雑誌を眺めていたため、信彦が何を見ているのかと聞けば、明日どこに行こうか考えていたとのことだった。


 竜崎は運転で疲れたから先に寝てしまい、明るくしておくのもなんなので、簡単に目星をつけた真治は、電気を消して寝るのだった。








 「眠い・・・・・・」


 信彦が一番乗りで起きて、それからすぐ竜崎が起き、真治は朝食の時間になっても起きなかったため、竜崎によって布団をはがされ、無理矢理起こされた。


 目を擦りながらも、朝食を目の前にすればすぐに覚醒し、ビュッフェスタイルの食事をどんどん口に放り込む。


 「美味い!」


 「朝からよくそんなに食えるな」


 「若いですねぇ」


 ついさっき起きたとは思えないほどの食欲を見せる真治に、控え目によそっていた竜崎と信彦は感心する。


 部屋に戻って出かける準備をし、会計を済ませると車に乗り込む。


 自分が言ったことだから、と真治がお金を払うと言ったのだが、信彦は自分で決めたことだから自分で払うと言い、竜崎もバイトに払わせるわけにはいかないと、結局それぞれ自分で支払った。


 「今日は恐竜博物館と海に行きましょう!」


 季節は夏とはいえ、なぜ男3人、しかも昨日知り合ったばかりの奴らと海に、とは思ったものの、真治を止める手立てはなかった。


 まずは恐竜博物館に行き、真治は当然楽しそうに見ていたのだが、信彦も竜崎も、小さい頃にはあまり来ることの出来なかったこういった場所に、思わず見上げて声を漏らす。


 「すげぇ」


 誰がいつ掘って見つけたものかは知らないが、とにかくそのスケールの大きさに感動と驚きがあった。


 昔は覚えていたはずの恐竜の名前さえ、今となってはすっかり忘れてしまっている。


 一通り見終えると、真治はちゃっかり恐竜クッキーなるものを買っており、別の物を買えと言いたかったが、部屋に沢山恐竜の本やら小さい模型やらがあるらしく、言いたかった言葉を飲み込んだ。


 「すごかったですねぇ。大きくて」


 「かっけーですよね!昔は発掘する仕事したいって思ってたけど、夏場は暑くて冬場は寒そうだから、こうして見るくらいが丁度いいですよね!!」


 すでにお昼は過ぎていたが、クッキーをボリボリ食べながら海に行こうと真治が言うため、竜崎もそのクッキーのおこぼれをもらいながら、海を目指した。


 この季節、やはりそれなりに海には人が沢山いて、車を停めるのも一苦労だった。


 「お前泳ぐ心算か?」


 泳ぐのは良いとしても、その後のことを考えて首を動かして後ろにいる真治に聞けば、真治は泳がないと言い切った。


 ならどうして海にきたのかと尋ねると、暑かったからとのことだった。


 「俺泳ぐの苦手なんですよね。海で泳げる必要ってあります?海って危険なんですよ?そんな危険な場所に自ら突っ込むってどういう心理なんですかね?俺には理解できませんよ。それに、海パン持ってきてないですし」


 「・・・お前今ここに来てる奴ら全員を敵に回す発言したぞ」


 「クラゲもいますしね。紫外線の浴び過ぎも身体によくありません」


 「でも風が涼しいじゃないですか!!焼そば売ってるし!!」


 海の近くには良い宿がなく、ようやく見つけた宿は素泊まりだった。


 そのため、ここで焼きそばを買うなり、コンビニやスーパーに寄ってご飯と飲み物を買おうということになった。


 泳ぐ為ではなく、ただその風を受ける為だけに運転をさせられたのかと、竜崎は真治をバックミラー越しに睨みつけた。


 本人は窓の外から吹き込んでくる風を受けて、気持ちよさそうにしているが。


 しばらくそこでゆっくりした後、車を出して店が無いかを探す。


 コンビニしか無かったため、そこに入ってお弁当やみそ汁、お菓子にビールなどをカゴに入れて買い物を済ませる。


 宿について部屋に入れば、レンジにお弁当を入れて温め、その間にビールを開けて、何に対してか分からないが乾杯をする。


 「っかー!!美味い!ビール美味い!」


 「久しぶりに呑みました」


 ぐびっと喉を通り過ぎていくその刺激に、3人は顔を緩ませる。


 テレビは備え付けてあったため、それをつけて何か面白いものが無いかと探す。


 温まったお弁当を食べ、ビールを飲み、それを交互に続けていれば、ビールの方が先に無くなってしまうため、また新しいビールを開ける。


 ぐびぐび呑んでいると、途中真治が立ち上がる。


 部屋で走らないだろうな、と竜崎が心配しながら見ていると、真治は風呂場に向かってお湯を入れ始めたらしい。


 ざーという音が聞こえてくると、誰から入るかという話になり、竜崎は信彦を先に勧めたのだが、運転で疲れている竜崎が先に入った方がいいと言われた。


 誰が一番先でも一番後でも構わないのだが、竜崎が先に入ることになった。


 風呂から出てくると、真治と信彦が2人で雑誌を眺めていて、明日はここかな、という話をしていた。


 まだ行くところがあるのかと思っていると、信彦が風呂に入る準備をする。


 信彦が風呂場に向かうと、真治は竜崎の前に雑誌を広げて、目的の場所を指さしながら告げる。


 「竜さん!信さんが花の展覧会に行きたいんですって!それから美術館!いいですよね?!」


 「・・・ダメっていっても行くんだろ」


 「信さん、亡くなった奥さんと昔行ったことがあるところらしいですよ。それに、ソフトクリームもあるみたいです」


 「わかったわかった」


 適当にあしらいながら、竜崎は自分の寝床を確保して身体を横にする。


 それを見ていた真治は、頬を膨らませて何か言いたげな顔をしていたが、口から静かに空気を吐きだし、それ以上何か言う事はなかった。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る