第24話 新たな決意



 城に戻り、ユウリはソファーに体を預ける。久しぶりに力を使ったため疲労が来ていた。

 するとディークがユウリに紅茶を出しながらふっと微笑む。


「? どうしたの?」


 なぜ笑うのか分からないユウリは首を傾げる。


「ユウリ様の意外な一面が見れたなと。まさか治癒魔法、いや魔法じゃないんでしたね。でも魔法と言わさせてもらいます。あのような高度な治癒魔法が出来るとは思いませんでした」

「僕の特殊能力なんだ」

「それは妖力とは別に色々出来るのですか?」

「人それぞれなんだけど、僕は3つあるかな。治癒と結界と探索の能力がある」

「探索?」

「人がどこにいるのかが分かる能力だね」


 よく小さい頃かくれんぼをして、サクラが1人見つからなかった時もすぐに見つけた。サクラが家出した時もすぐに探し出した。


 ――今じゃあまり必要ない能力だよな。


「では、探偵とかになったら便利ですね」

「そう思うでしょ? でもまったくの他人は無理なんだ」

「そうなのですか?」

「うん。その人が持っている妖力を知っていないと無理なんだよね」

「じゃあこの世界の者は無理ということですか?」

「いや、妖力も魔力も僕の感じ方は一緒だから分かるかな。人それぞれ違うから。ディークもかくれんぼしても見つけれるよ。なんならやってみる?」

「遠慮しときます」


 ユウリは苦笑し、そして改めてディークに謝る。

 


「ディーク、さっきはごめんなさい」

「? 何がですか?」

「なんで、そんな簡単に見捨てろなんて言えるのって言ったこと。戦争で生き延びるためには必要なことだってこと、僕は知らなかったから」


 ディークが言った時、ナギの戦争での光景が浮かんだ。

 ナギは何人もの助からない仲間を苦渋の顔で後悔の念を抱きながら見捨ててきた。まだ戦争に参加した当初は、弱かったため、ある時は泣きながら、またある時はその者に庇われながら見捨ててきた。兵士だけではない、助けを求める市民などもだ。


 だがそれは本意ではなく、ユウリと同じ、助けたい、助けてやりたいと思いながらだ。


 ディークも自分で経験したのかもしれない。ナギからそのことを聞いたかもしれない。そこは分からない。だが、その気持ちを分かっているからこそ、ユウリの言葉に腹が立ったのだろう。


「本当にごめんなさい。僕が浅はかだった」

「いいえ。ユウリ様は悪くありません。ユウリ様がそう思うのは当たり前のことですから。あれは私がいけなかったのです。見捨てるのが当たり前だと、それが正しいことだと、ユウリ様のような感情は必要ないのだと思っていたのです」

「しょうがないよ。戦争をしていたんだから」

「いいえ。もう戦争は終わったのです。見捨てるのが当たり前だと言う感情はもういらないのです。ユウリ様のように、見捨てていい命はないのですから」


 そしてディークは深々と頭を下げる。


「あの時は、本当に申し訳ございませんでした」

「え? いや、謝るのは僕なのに。僕もごめんなさい」


 ユウリもソファーから立ち上がり頭を下げる。するとディークがばっと頭をあげ、


「顔を上げて下さい。あなたはもう王家の人間なのです。従者や家臣に簡単に頭を下げてはいけません」

「あ、はい」


 結局最後はディークに注意をされた。やはりディークはこうでなくっちゃと思うユウリだった。

 


「それにしても、成長されましたね」


 いきなり言われ、ユウリは目を丸くする。まさかそんなことを言われるとは思わなかったからだ。


「そうかなー」

「ええ。最初の頃に比べたら、少しマシになりました」

「マシって……」


 すごい言われようだと思うが、ディークに褒められるとなぜか嬉しい。


「最近思うんだ。ここに来たことも何か意味があるんだろうなって。だからちょっと頑張ってみようかと思って」

「それはいいですね」

「それにもうここにはサクラちゃんもいないしね。頼れる人がいないから自分でやらなくちゃね」

「それは心外ですな」

「え?」


 ユウリはどういう意味かとディークを見ると、とても不機嫌な顔をしている。


「私という者がいることをあなたはお忘れではないですか? 全然私を頼ってくれてよろしいのですよ」

「ディーク……」

「私はそういう存在です。それにナギ様からあなたを頼むと頼まれていますからね」

「ディーク、ありがとうー」


 目をうるうるさせて泣きそうになりながら今にもディークに抱きつきそうになるユウリに、


「だからそういう情けない態度はおやめくださいと言っているでしょう」


 とディークは冷たい声音で突き放し叱咤する。


「あ、はい。すみません!」

「あなたもナギ様と同じ、一人にしておくと何をしでかすか分からないですからね」

「え? 別に僕は……」

「私からすれば、ナギ様もあなたも同じようなものです」

「はあ……」

「ですから遠慮なく私に言ってください。あなたは一人じゃない。私がいます」

「ありがとうございます。ディークさ、ディーク」


 そんなユウリにディークは笑顔で応えた。


「はい。新しい主君」





――――――――――――――――――――――


こんにちは 碧心☆あおしん☆ です。


ここまで読んでいただきありがとうございます!

第2章 ここで終了です。

次回から 第3章 になります。


まったく性格も考え方も違うナギとユウリが、お互い違う世界へ行き、色々な経験をして成長していく物語です。


第1章はナギ、第2章はユウリ をメインに話が進みました。


第3章は、またナギの世界になります。

今度は学校で非常事態が起き、サクラの能力が明かされます。


もし、よろしければ今後も読んでいただけると幸いです(^o^)


ですが、第3章の前に、次回は、登場人物紹介 ですw


本編では書いていないナギの実年齢とかが書いてあります( ̄∇ ̄)


どうぞ見てくださいね~。


もし少しでも面白いと思っていただけたなら、♡やコメント、☆評価のほうよろしくお願いしま~す(^^)/



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