88.火竜の試練・いざ火竜の里へ

「いやー、楽しかった!」


一通り海中散策を楽しんで神殿へ戻ると、海神がニコニコしながら待っててくれた。


『ふふふ、楽しめたようでなによりだ。さて、そこな竜人』

「えっ、はいっ」


急に呼ばれたヤスナガが慌てて答える。そういえば、ここに来たのはヤスナガのクエストの為だったっけ。あれ、あともう一つ用事があった気がするなぁ…まいっか!


『そなたは火竜の試練で訪れたのだろう?そなたは水生石をすでに持っておるから必要はないだろうが、水生石について教えてやろう。


アレは妾の力が結晶となり海と混じり作られるもの。深い海底、妾の彫像付近でしか得られぬ。試練に訪れた竜人にはこの場で渡してやるのだが、そなたは妾の加護を持つ故、深き海底で己の力で採取できる。覚えておくと良い』


なるほど、深い場所ってことは普通の人じゃ到達できないんだろう。アイテムを使えば掘れるのか?それよりも気になるのは…


「それは俺達も掘っていいものなんですか?」

『うむ、あの彫像まで辿り着けるならな。なぁに、妾の加護を持つ者なら容易に掘れようぞ』


ふむ、つまり場所とアイテムさえ用意すれば試練を受けてない人でも掘れるって事か。これで水筒とか井戸とか作れそうだなぁ。この頃クラフト系はやってないから、久し振りにアレコレ作るのも楽しそうだ。


そんな事を考えていると、海神がなにやらこちらをじっと見つめてきた。顎に手を当ててなにやら考え込んでいる。嫌な予感がするから見ないで頂きたい。


『なるほど、ハイエルフか。鬼や聖魔…そっちは妖狐じゃな?そこな二人はヒトのようじゃな…うむ、良かろう。そこなヒトよ、汝ら転生の儀を受ける気は無いかぇ?』

「えっ、オレらッスか?」

『左様じゃ。妾の試練を乗り越えれば海竜族として生まれ変わる事が出来るぞ?』

「マジかぁ…」

「うん??どういう事だ?」

「つまり、今の種族から別の種族に変えられるって事。種族変更の情報は一切無いから、情報クランへ売れば相当な金額になるわよ〜」

「海竜族というのは初めて聞きますね。どんな特徴があるのでしょう?」

『海竜族とは、妾の眷属じゃ。そこな竜人のように鱗はあるが、姿はヒトと同じ。水中では足が魚のようになって、高速で泳ぐことが出来るの。水の魔法に長けており、槍術が得意じゃ』


へぇ、人魚みたいな種族って事か!もしかして、海竜族の里なんかもあるのかな?セルキー達なら知ってるだろうか。


「アチシの里と海竜族の里は交流があるっちゃ。海神様の加護があるなら、里の中にも入れてもらえるっちゃよ。興味あるなら案内するっちゃ!」


へぇ!それは是非行ってみたいな。その前に用事を済まさなけりゃいけないけど。


『念の為に、妾のウロコを持つと良い。コレがあれば海に棲む種族はすべて友好的になるであろうよ。海竜の転生の儀を受けたくば海竜族の里へ向かうが良い。そのウロコが試練へのカギとなろうぞ』


俺達全員にウロコを渡した海神は泡となって消えていった。セルキーは俺達を里へ連れて行きたがったが、先に火竜の試練を終わらせたいので、里の場所をマップに登録して用事が終わり次第向かうと約束した。


「さて、ここでの用事は終わったし火竜の里へ行くか」

「そうね、そういえばワタシ達は里の中に入れるのかしら?」

「水生石があれば入れてもらえそうな気はしますね」

「里へ入る為に必要なので、アイテムさえあれば通してもらえる筈です」


とりあえず、ヤスナガと雪華さんには先に里へ向かってクエストを進めててもらい、俺達は石を掘ってから向かうことにした。


さーて、いよいよ火竜の里だ!

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