56.ドフィ親方の家
ドフィ親方の手で、ドワーフの里に続く通路が現れた。
足元にはヒカリゴケが生えている。おぉ、キレイだな。通路は少し下っているようだ。滑らないようにゆっくり降りていく。しばらく進むと、開けた場所に出た。
この通路はドワーフ専用通路で、冒険者用の出入り口は別にあるんだそうだ。
…すごいなこれは。
巨大な地下都市だ。奥の方には大きな煙突が複数見える。あちこちから水蒸気が出ていて蒸し暑い。上の方は穴が空いているから、排煙設備なのだろうか。とにかく広くて、そして深かった。なんかもっと素朴なやつ想像してたぞ?
『ここは地下に『極炎の水』が流れてて、その熱を利用して炉を動かしてるんだ。ホレ、アソコに見えるだろ?アレは何もかもを一瞬で燃やし尽くすから触るんじゃねーぞ』
底の方を見ると、真っ赤に輝く液体が見えた。なるほど、マグマ熱ってやつか。建物は全体的に黒くて四角い。聞けば、熱に強い石材で造られているらしい。
金属で出来た階段を降りていく。
親方によると、地下都市は階層ごとに分かれていて第一階層は外から来たヒト向けの比較的安価な商店街。第二階層は宝飾店や武器防具の店が並ぶ専門店街。第三階層は宿屋や飲食店。第四階層は職人の住む住民街。そして、第五階層から下が工房になっているそうだ。
俺達が向うのは第四階層。ドフィ親方の家がある場所だ。自分が召喚しているドワーフの家に行くって、何だか変な気分だな。
地下へ降りるのは、レトロな雰囲気漂うエレベーターだ。ドワーフ製の機械で、動力は企業秘密らしい。ゴゥンゴゥンと音を出しながらゆっくりと下へ降りていくと、整然と並んだ四角い住居が並んでいる場所に着いた。
上から見ると分からなかったが、家は全て石を削り出して造られているようだった。扉や窓枠は木材だが、マグマの中に生える木を使っているらしい。なにそれ見たい。
そして、当然ながら道行く人は皆ドワーフだ。身長は130センチほどで、皆ずんぐりとした体型をしている。そして筋肉質だ。力がとても強くて、重くて大きなハンマーを片手で振るい、硬い鉱石類も楽に加工出来る。
そして、大のお酒好き。住宅街のあちこちに飲み屋があり、どこも酒を飲みながら大声で話すドワーフで賑わっている。
ちなみに第三階層にある飲食店も酒類の品揃えは豊富で、そちらにも足を運ぶのだとか。
喧騒を抜け、細い路地裏を歩いていく。周りの騒がしさが嘘のような静かな住宅街の外れにドフィ親方の家はあった。
「おぉ、しばらく住んでいなかったのにキレイだし快適だな!」
玄関を入ると、蒸し暑さが嘘のような爽やかさだ。部屋には木の机と椅子が二脚。壁にはソファが置いてあった。隣の部屋は工房になっていて、リビングの奥にはキッチンと階段があり、二階は寝室と物置だそうだ。
壁にはエアコンのようなものがあったので、おそらくコレが空調の魔道具なんだろう。あとで取扱店を教えてもらおうっと。
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