30.アケイアの森
フェーブの街から南へ十数キロ。俺達はアケイアの森近くまで来ていた。
「シオンちゃんのスキルは便利なのにゃー」
「ね!八聖の中でも特殊なんじゃないかしら?」
「シオっちは器用ッスからね〜」
そう、ここまでの移動は俺の創造魔法で出した乗り物を使っている。
基本形はドローンに足場と操縦桿を付けたような形で、地形を気にせず移動できるスグレモノだ。安全性を考慮して、地面から30センチ浮遊させ速度は時速50キロ。足場はジャイロ機能搭載で抜群の安定感。転落防止機能も付いてるから、危ない時は乗り物が自動的に体勢を整えてくれる。障害物も回避してくれるし、前の乗り物に追従して自動運転も可能だ。希望者には椅子と安全バーも取り付けた。ちょっとしたアトラクションのようになっている。ちなみに、俺とカゲのはバイク型だ。
流石に森の中では使えないので、ここからは歩きで向う。シュリさんはお店があるので不参加。その代わり、案内役を…という話だったが森の入り口まで来ればナヴィが案内できるので断った。森の散策もしたいからね。ちなみに、エルフ領での活動は自由にして構わないそうだ。
「ナヴィ、何か珍しい素材があったら教えて」
『わかったよ〜!それじゃ早速教えるね〜』
ウチの子ほんとに優秀だな。拠点から呼び寄せたシルバも張り切っている。ここにいる獣はフォレストラビ、フォレストスネーク、フォレストボア、トレントという木の魔物、シンリンネズミ、森スライム、毒バタフライ、森林カエル(麻痺)等。結構種類が居るようだ。
「すごい…素材の宝庫だわ!」
珍しくサクラが興奮している。うんうん、気持ちはわかるぞ。俺もせっせと素材を集めているからな。
「これ、売ったら結構儲かるヨカン?」
「そうね、入手困難なモノなら高値で売れるわよ」
「ふぉぉ、一攫千金にゃぁぁぁ」
心なしか皆の目がお金マークになっているように見えるね。ついつい、素材狩りに夢中になってしまい気が付けば夕方になっていた。
「やばい、もうこんな時間か!」
「うっわ、全然気付かなかったッス」
「やだ、もう暗くなるじゃない!」
「ちょっと夢中になりすぎましたね」
急いでナヴィに野営の出来そうな場所へ案内してもらう。すでに辺りは暗くなっている。魔法で明かりを灯しながら野営地まで走った。
「よし、手分けして設営しよう。俺は魔物よけを設置。カゲとネクターでテント設営、サクラとカリンで火起こしだ」
「「「「はーい」」」」
セーフゾーン以外で野営をする場合、四方に魔物よけアイテムを設置すると簡易セーフゾーンとなる。一回使い切りなのだが、念の為に買っておいて良かった…。創造魔法で作れないか?と思ったが、流石に無理だった。セーフゾーンはログインログアウトにも関わってくるからな。…まてよ?セーフゾーンは無理でも魔物除けくらいはイケるんじゃないか?覚えてたら試してみよう。
「テント設営完了ッスー」
「火起こしも完了にゃー」
いやー、危なかった。
何で野営準備を急いだがと言うと…
「うわ…でた…」
夜限定の魔物…レイスが出るからだ。
このレイス、実体の無い魔物で倒すのに特殊なアイテムが必要になる。まず、普通の攻撃は通らない。魔法も貫通してしまう。そして、攻撃できないまま、生命力を吸われて…そんな魔物なので、準備をして挑まないといけないのだ。ちなみに、神獣であるシルバは普通に攻撃できる。
レイスは聖属性が唯一の弱点なので、聖属性武器か聖魔法で攻撃するしかない。武器に一時的に聖属性を付与できるアイテムがあるので、それを使えば攻撃も通るようになるのだ。
流石にそんなアイテムは持ってないので、セーフゾーンに籠もるしかないのだが…
「これは精神衛生上よろしくないな」
「同感ッス」
「ネクターとカリンちゃんはテントから出られなくなっちゃったわね」
「「オバケこわいよぉぉぉ」」
セーフゾーンの周りには無数のレイスが徘徊している。オバケの類は平気だが、流石に嫌になるな。
「サクラ、これどうにかなんない?」
「一時的に追い払う事は出来るけど、朝までは流石に無理ですね」
「そうかー」
かと言って、シルバを夜通し働かせるのもなぁ…。どうしたもんか。
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ここまで作品を読んでいただきありがとうございます!
シオン君、初めての連続クエストです。
果たして無事にクリア出来るんでしょうか?
そして、新たな八聖カリンも加わってますます賑やかになりました。
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