彼女(再会)

京塚浩一

彼女(再会)

「わたしが置き忘れた

 ピアスのこと

 覚えていますか?」


突然、届いたメッセージ。


突然よみがえった記憶。


3年前の

彼女との記憶。


俺の部屋の

どこかに

置き忘れた記憶。


「覚えているよ」


返信した。


着信があった


息が止まった。


懐かしい

彼女の声


間違いなく彼女だった。


……


彼女は

今は

離れた場所に住んでいた。


駅で彼女に会った。


少し大人の女性になっていた。

俺が好きだった

長い髪のままで。


ホテルで抱き合った。


懐かしい彼女の声

白い肌


わたし、あなたと

つらい別れ方して……


泣いたわ


それから

何だかどうでもよくなって……

お酒も飲み歩いて……

男の人とも……


息が苦しくなった。


今は、そんなことないけどね


聞けなかった

あの日の

こと


なあ


なに?


……なんで

浮気したの?


彼女がうつむいた


あなたは……

自分しか見ていなかったから……


息が苦しい


沈黙の間


俺は聞いた


今、付き合ってる人はいるの?


付き合ってる人はいるよ


うまくいってる?


まあね

あなたは?


今はいないよ


付き合ってたのは

どんな人?


半年前に

別れた彼女の話をした。


私とは

何だか違う感じだね

彼女が小さく笑った


わたしの彼ね


私が住んでいる所に来て欲しいんだけどね

わたし、家族は、母親しかいないから……

でも、彼がこちらに来てくれるか分からない。

仕事もあるしね


でも


彼と、

一緒になりたいの


彼女がうつむいて言った


男の人って違うんだね


何が?


抱き……かた……


そうかな?


彼女がうつむいた


わたし

今でも引きずってるよ……



ねえ……


最後にもう一回、

抱いて……



電車の窓から

じゃあね と

彼女が手を振った


彼女の手が流れていった


もう戻ることがない手


もう、戻れない……


戻れない自分


彼女は

なんとか前を

向いて

生きて

行くんだろう


俺は……


彼女の笑顔に

言った


「幸せになれよ……」


遠ざかる景色を

じっと

見つづけた。

       (完)

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彼女(再会) 京塚浩一 @koichi_kyozuka

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