第75話 初めての喧嘩!?
期末試験一日目。
登校中、俺はあることに気がついてしまった!
「白雪、心の声でカンニングはやめろよ!」
「なんで自分より実力が低い人間の答案をカンニングしないといけないのよ」
正論でぶん殴られた。その通り過ぎてなにも言えねぇ。
「
「おっ、いいね! どこ行く?」
「もう夏だから海とか? この前はちょっと早かったし」
「海かぁ」
確かにこの前の家出のときは時期的に早かったもんなぁ。
海に行ったら白雪の水着姿を見れるかもしれないなぁ。白雪ってどんな水着着るんだろう――。
「ど、どんな水着着て欲しいの?」
「げっ」
相変わらず全てを貫通する俺の心の声。
俺の心の声は伝説の槍かなにかなの?
全部がぜーんぶ、白雪に聞こえてしまっている。
「白雪が着たいやつかな!」
「ちゃんと聞きたい」
「むぅ……」
そんなこと言われても、女の子の水着なんてよく分かんないよ……。
でも、白雪ならきっと何着ても似合うと思う!
とりあえず白色のビキニは絶対に似合うよな!
でも、他の男に白雪の肌を見られるの嫌だなぁ。
露出度が低い系ならスクール水着とか?
白雪のスクール水着見てみたいかも。体育の授業でプールってないのかな。
「す、スクール水着は変態すぎない!?」
「あ゛ぁあああああ!」
思考が止まらない。どうしても本能の赴くまま考えてしまう。
それを決して白雪が見逃さない。
「ふ、ふんっだ! これが俺だから仕方ない!」
「あっ、開き直った」
白雪がいきなり俺の手を握ってくる。指と指を絡ませる恋人繋ぎだ。
「登校中なんですけど……」
「別にいいじゃん」
「あんまり良くない!」
こんなことしてたらまた誰かに見られちゃうじゃん。ちょっとだけ優越感があったりもするんだけど、やっぱり恥ずかしいよ。
「んふふ~、優越感かぁ」
「ぐぅ……」
「私、初めて白雪姫って呼ばれてて良かったなって思えたかも」
「なんで?」
「自分で考えたら~?」
「ズルい」
※※※
「おはよ、朝陽」
「今日もバカップルがやってきたな」
教室に着くと、既に朝陽が机で教科書にかぶりついていた。
「バカップルだって、やったね
「褒められてねーよ」
朝陽の心の声は今日は聞こえてこないようだ。
……ただなんとなく。
本当になんとなくだけど、もう聞こえてこないような気がする。
「いたっ!」
白雪に手の甲をつねられた!
このヤキモチ焼きめ! 全然やましいこと考えてないじゃん!
「白雪って本当に明るくなったよね」
「そう? これが普通だけど」
その通り! これが普通の白雪だよ。
今考えると、あのクールな白雪姫やったが方が笑えてく――。
「いたいっ!」
また手の甲をつねられた!
「まさか、男ができると変わるタイプだったとは思わなかったな」
「うーん、確かに
「朝から
そんな話をしていると、ちらっと
俺さえいてくれればかぁ……。
自分でもよく分からないけど、何故かその言葉にひっかかってしまった。
※※※
「勝った! 勝ったぞ!」
放課後、俺はガッツポーズをしながら机にへたりこんだ。
今回は圧倒的手ごたえを感じる!
「なに奢ってもらおうかなぁ。寿司か焼肉かなぁ」
横目で隣の席の女子を見る。
「うるさいなぁ、結果は見てみないと分からないでしょう」
「思ったよりダメだったって顔に書いてあるよ!」
「うぐぅ」
ふふふ、心の声のおかげでかなり他人の表情を読み取れるようになった気がする!
今は、俺が読まれる側に回っているけどなっ!
「めちゃくちゃ調子のってる」
白雪が俺たちのところにやってきた。
「いやー! 解放感がすごい! 引きこもってどっぷり映画でも見よう!」
「
「うっさい! なにが悪い!」
その通りだけど、そこだけ切る取るとダメダメ人間みたいだ。
「おーい! みんなで打ち上げいかない?」
あっ、亮一君も俺たちのところにやってきた。
「打ち上げ?」
「うん、カラオケ行こうぜ」
陽キャカラオケの法則はまだ健在か……。
ぶっちゃけ行きたくない。早くうちに帰りたい。
「行こうぜ、遠藤」
「う、うん」
ノーと言えない俺。
仕方ない、誘ってくれることは嬉しいので――。
「行かないよ」
白雪が会話に割って入ってきた。
「あっ、用事あった?」
「ううん、行きたくないから行かない」
白雪が毅然とした態度でそんなことを言っている。
「
「い、いや……」
さすがの亮一君も困った顔をしてしまっている。
ど、どうしよう、ここまで馬鹿正直に言ってしまうとあまり良くないんじゃないかな。
「じゃ、じゃあまた今度!」
「うん」
亮一君が逃げるようにこの場から去ってしまった。
あの亮一君があんな焦った顔をするなんて……。
「白雪、はっきり言いすぎ」
朝陽が白雪に呆れた様子ではっきり物申した。
「そうかな?」
「感じ悪かったよ」
「私、別に
またしても、その言葉にちょっと引っかかってしまった。
……ちょっと帰り際に白雪と話そうかな。どうせ心の声が聞こえているわけだし。
※※※
「
「怒ってはいないよ」
家に帰りながら、白雪とさっきのことについて話すことにした。
「嘘だ。ちょっとモヤっとしてる」
「うーん……」
「私が勝手に行かないって言ったの良くなかった?」
なんだろう、うまく自分の気持ちを言語化できない。
でも確かに白雪の言う通り、ちょっとモヤっともしている。
「だって
「そりゃあ、好意で誘ってくれているわけだし……」
「行きたくないのに行くの?」
「そういうのも必要かなって」
「よく分かんない」
白雪の頬がぷくっと膨らんだ。白雪が少しムッとしたような表情をしている。
「私は
……あっ、ちょっと今の言葉でちょっと今の自分の気持ちが分かった。
「白雪、俺だけがなんて言わないでよ」
「ん?」
「俺、白雪には交友関係とか色んなことを、そぎ落としていくんじゃなくて、なにか付け加えていける彼氏になりたい」
「私は
「それはとても嬉しいけど、閉じた感じになっちゃうのは良くないと思うんだ!」
「よく分かんない」
ぷいっと白雪にそっぽを向かれてしまった。
な、なんでだよ……。
なんで分かってくれないんだよ。
今まで“白雪姫”として
今まで“根暗ぼっち”として閉じた関係しか作っていなかった俺。
白雪が俺に寄ってくれる必要なんてないのに……。
「
「そ、そりゃそうだけど! それよりもお互いに!」
「
(私は
……はい?
今、心の声が聞こえてきたような。
「え?」
「白雪、心の声が聞こえてるよ……」
「ち、ちなみになんて聞こえた?」
「私だけの
「……」
白雪の顔が耳まで真っ赤になっていく。
「こ、これじゃ喧嘩もできないじゃん!」
(嘘! 喧嘩なんてしたくない!)
「俺だって喧嘩なんてしたくないよ!」
「
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