石村まい


指先を透けて紙風船に音


ふらここを笑はずに漕ぐ子どもなり


台車ごと物を運びてつばくらめ


木々がみな高くてバレンタインの日


大股で舟へ踏み入る涼しさよ


隣人に蛍を借りる二分間


草笛をそのぬくもりのままに捨つ


頁めくれば戦争終はりたる暑さ


眩しさや金魚のゐない金魚玉


七月の死産の馬の匂ひたつ


白蓮のあかるく枯るる昼なりけり


秋うらら歯ブラシ二本買ひ足して


製本機しづかに揺れて窓の露


釣人と釣竿遠し秋の暮


膝に膝寄せつつ冬眠を話す


相槌のやうに留まる冬の蝶


もろもろを脱ぎストーブにまはりこむ


海賊になりたし壁の傷冷たし


雪を来て養鶏場の昏さかな


余り物てふやさしさよ初電話

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石村まい @mainbun

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