No.3 夕暮れの再会(2)
それからやたらと小中学校の同級生と再会することが多かった。
やっぱり夏休みになると実家に帰省したりするのか、大学や専門学校に行っている人たちも戻ってきているみたいだ。
特に仲の良かった
「利香、おめでとう。結婚したって聞いたけど」
「ありがとう。高校卒業してすぐだったから」
「すごいなぁ、結婚するの」
「そんなことないよ。うちも高校出て就職して、いまは普通に市役所で働いてるよ。家庭の事情ってのもあるけどね」
「すごいね」
公務員になるのはとてもすごいし、近くの市でやっているのかもしれない。
地元だとたまに高校卒業してすぐに結婚したりする子も多くはないけれど、学年に数人いるんだよね。
「
利香がたまたまアクアカップを実況ツイートしていた人たちを見て、うちの名前を聞いていたのかもしれないと思う。
自分がここでフィギュアスケートをしているということを知ったみたいだった。
利香自身も小学校卒業までを一緒に過ごしていたリンクメイトだったから、意外と楽しそうな笑みを浮かんでいるみたいだ。
わたしはそれを聞いてうれしくて、それから滑っているのかもしれないと考えている。
「ありがとう。利香、次は結城ひまわり杯だから、待ってね」
「うん。時間が合ったら応援に行くよ」
「そっか。もうそんな時期なんだね」
「また、連絡するよ」
「うん。バイバイ」
それを聞いてとても懐かしくなってきたんだよね。
他にもスケートをやっていた子は同い年で五人くらいいたんだけど、学年が上がるごとに一人ずつ辞めて行った気がする。
小学校を卒業したと同時に辞めた子が三人くらいいて、そのときは少しだけ寂しく感じたことがあった。
その気持ちは少なくなってきているように思えているし、下の子たちと一緒に練習するときに刺激になっている。
自転車で南町通りを通るとダンススクールがあって、そこに入ると久しぶりにやってきた子たちと一緒に踊ることにした。
「あれ? 伶菜も来てたんだ」
「そっちも元気そうじゃん?」
彼女の名前は
ダンス部の強豪だった
ダンスは多ジャンルに手を出していたこともあって、表現力とダンス力がとてもかっこいい子だ。
いまは進学した
ちなみに社会人の年上彼氏ともかなり仲が良くて、たまに地元で見かけたりすることがあるけれどイケメンだった。
「彼氏とは順調なの?」
「え、うん。免許が取れたら、箱根とかに行こうって」
「良いじゃない? それ、マジでかっこいいじゃない」
そんな恋バナをしながらダンスの準備を始めていくんだ。
今日はジャズダンスの日で初めて参加する子も何人かいたので、基礎的なステップと動きからだった。
美琴のジャズダンスは数年単位のブランクがあったはずなのに練習しているのか、かなり上達しているように見えた。
でも、負けられないなと対抗心が出て着ちゃって一緒に踊ることにしたの。
流れてきたのは『シング・シング・シング』で特にテンションが上がるタイプのアレンジがされている。
子どもの頃に戻れたような気がして、次々と色んなジャンルの曲を流して踊っていた。
テストが終わって一息つくことができた頃、もう季節は七月から八月になろうとしていた。
今日はクラブの練習日ではなく、大学の部活が夏休み最後にあった。
今日は部員が全員そろっての練習が行われていて、すぐに楽しそうな笑みを浮かべている。
東インカレは今年の十月に行われるので地方ブロック大会の合間を縫っていくみたいだ。
「
「はい!」
わたしは七級の枠で出場することは確実なんだけれど、まだメンバーに選ばれるかは不明だ。
課題はシニアのフリーを滑ることになるので、点数を上げつつ完璧な演技をしないといけない。
すぐにトリプルルッツ+シングルオイラー+トリプルフリップのコンビネーションを降りた。
「初級のバッジテストは合格できた?」
「はい! 試合はいつくらいですか?」
「まだ試合は出れる枠が少なくてね。三級あれば出れるのも多いよ」
「そこまで行けたらバケモノだよ」
「大丈夫だよ。十三歳で初めて、いま世界選手権のペア日本代表の女の子がいるから」
「え、マジ」
「うん」
そんなことを言いながらマジで同じようなことを文花ちゃんが決めちゃうこともある。
それは
そんなことを言いながら大学アイスショーのお披露目するためのプログラムを作ることに。
「それじゃあ、加藤君は振付を始めようか。曲は好きなのある? 幸田さん、コレの説明してくれる?」
「ええっ⁉ いきなりは難しいですって」
そう言いながら経験者のうちと平川さんが説明することにしたんだ。
加藤くんがYouTubeで見せてくれたのは『アダムズファミリー』のメインテーマで、かなり有名だから振付とかで何とかいけるんじゃないかなと考えた。
「うん。これくらいのアップテンポはかなり楽しいよ。過去に何人かスケートで滑ってるし」
「幸田さんのトウで踏み切るジャンプって迫力あるよね」
「そうですか?」
「うん、かなり高さと幅が出てるから、エッジで踏み切る方も同じようにできれば無敵じゃない?」
それを聞いてグサッと何か刺さっているような気がしていた。
つま先で踏み切ることができるジャンプは成功率が高いけれど、エッジはブレードを押して踏み切るという感じだ。
それが上手くいかないせいで回転数が足りなかったりすることもよくある。
「幸田さん、トリプルループを踏み切ってほしい」
「はい! すぐに行きます」
それから勢いに乗せてトリプルループを跳んでみるけど、微妙に回転数が足りないかもしれない。
「うん。問題ないけれど……もう少しだね」
「はい……マジで大変ですよ」
「伶菜ちゃん」
「あ、
「久しぶりだね。
「ああ、たまに遊びに行ってるけど、学年と大学が違うとなかなかスケジュールが合わない」
千裕くんとは一応カレカノということになっているけど、何となくまだそれらしいことはしていない。
お互いに小さな頃からいるから、余計に恥ずかしくなってくるかもしれない。
「うちとはとても楽しいかもしれないね」
それから夏休みのクラブの夏合宿を楽しみに待つことにしたの。
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