第3話 相模国・合流
請け負った案件は、
依頼書のほとんどは畑を荒らすものだったけれど、請負所で聞いた通り、確かに数が多い。
狐は群れることが少ないはずなのに、どう見ても家族単位以上の数がある。
「取り敢えず、八幡と四ノ宮の二手に分かれて追い込みながら中原で倒す?」
「それじゃあ群れが散ったら逃げられるかもしれないだろ。
「んん……それじゃあ結構な時間を取られちゃうなぁ……多いんだよな、数がさ」
「こっちも数があったらどうだ?」
すぐ後ろから声が聞こえて振り返ると、
「ハヤ? こんなところまでどうした?」
「
「と……登和里さんが……翔太とす、
縁が相変わらずの挙動不審な態度で答える。
いい加減、翔太にくらいは慣れてもいいんじゃないかと思うのに。
「そうなんだ? でもやけに合流が早いんじゃないか?」
「
「へえ……」
「で? なんの数が多いって?」
駿人と縁にこの辺りの今の状況を伝えた。
二人とも、翔太たちと同じように狐が群れていることに疑問を感じたようだ。
「近ごろどうも
「山犬? 野犬じゃなくて?」
「オレたちが
「う、うん。
「縁! にっ新座まで深玖里ちゃんと一緒だったのか!」
思わず縁の胸ぐらをつかんで引き寄せ、ガクガクと揺さぶった翔太を、
「ず、ずっと一緒だったんじゃなくて、う、う……請負所で、た、たまたま……」
涙目になって咳き込む縁は、か細い声でそういう。
「
山犬の数が多かったのと妖獣がいたから、懸賞金を折半にするからといって一緒に案件をこなしたそうだ。
深玖里とはまた会う予感があったのに、実際に行動を共にしているのは、
「なんだよ~……なんで俺じゃないんだよ~……」
「なにを嘆いてるんだよ。翔太には本命がいるんだろう?」
「そりゃあ……」
確かに駿人のいうとおりだけれど、気になるものは仕方がない。
どうにもならない脱力感に崩れ落ちそうになる。
「そ、それよりどうする? ボクたちと翔太たちで二手にわかれて、し、四ノ宮と八幡から詰めていく?」
「そうだな、ハヤは四ノ宮、俺は八幡から、中原でまた合流して一気に倒そう」
「わかった。縁と翔太は先に中原で囲う準備をしていてくれ。狐どもはオレたちが追い込む」
優人と駿人は手順をさっさと決めると、互いの割り当てに駆けていった。
翔太は地図を持たない縁を促して中原へと向かった。
「そういえばさ、縁の式の使いかたなんだけど」
「う、うん?」
「探索、俺はどうもうまくないじゃんか。縁みたいに個体で判別してるのはさ、どういう感覚?」
「ボクのは……妖獣だけは赤って決めているんだけど……ほ、ほかの色は単純に手分けをするときの
「えっ? それだけ?」
「うん。常に赤は飛ばすけど、妖獣がい、いなければ戻ってくる」
獣と妖獣は気が違うから、赤い
もっと複雑ななにかがあるのかと思っていたから、肩透かしを食らった気分だ。
「じゃあ、俺にも同じことできるかな?」
「翔太ならす、すぐにできる。だって
それを式を使うときに組み入れたらいい、今すぐは使えないかもしれないけれど、翔太ならいつもどおり何度か重ねればすぐに使えるようになる、縁はそういって笑った。
そんなものだろうか?
若干の疑問を感じつつも、縁が言うんだからきっと使えるだろうという気持ちになる。
「狐、終わってもこのまま一緒に駿河に向かうだろ?」
「た、たぶん……」
「んならさ、道中で練習するから、縁、ちょっと見ててくれよ」
「わかった」
中原に着き、畑の広がる景色の中で、翔太は縁と一緒に結界を張る範囲を決め、集団の狐を倒す
遠くから少しずつ獣のざわめきが近づいてくる。
優人も駿人も、うまく狐たちを追い込んできているようだ。
「いつも優人や駿人にばかりたよっていられないもんな。俺たちの呪符で半数は倒そう」
「うん、ボクもが、頑張るよ」
強いくせにいつも自信がなさそうにしている縁の背中を、活を入れるように思いきりたたいた。
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