マルの物語

村崎愁

第1話 いつも一緒にいたい

僕の名前はマル。たぶん五歳。僕はママが大好き。美味しいご飯、お水、お散歩に連れて行ってくれて、いつもヨシヨシしてくれて「マルは良い子だね」って言ってくれる。

小さいころ捨てられていた僕をママは拾ってくれた。二人でいれば冬も寒くない。寂しくない。

僕がお家でおしっこをしてしまっても怒らないママ。ママが怒った事なんてほとんどない。

でも時々「旅行」っていうものに行く。僕は狭い箱で独りぼっち。その時は寂しい。

ママは帰ってきたら「ごめんね、帰ってご飯食べよう」って言ってくれる。嬉しくて嬉しくて、尻尾が止まらない。

ママは時々、悲しい顔をしてカッターっていうもので手とか傷つけるんだ。

いっぱいいっぱい血が出るから、僕は舐めると抱きしめてくれる。舐めたらきっとすぐに治るから。

ママにはすごく好きなお友達がいる。僕は邪魔しないよ。すごく喧嘩もするけれど、きっとまた帰ったら抱きしめてくれる。「マル、良い子だったね」って。

僕にはママしかいないんだ。

お友達なんかいらないよ。ママがいればそれでいい。

今日も明日もその次もずっとずっと一緒にいようね。

でもマルはきっとママより早くお空に行ってしまう。離れ離れは寂しいけど。

明日は大嫌いな「病院」に行くんだって。

色んな仲間がいるけれど、僕はママが一番好きだから挨拶もしない。

ママだけ見ているよ。ママ、気付いてね。


お日様が上がって、僕はママの車に乗せられて「病院」に行った。

「先生、マルをよろしくお願いします」ってママが言った。次のお日様が昇るまでお泊りになるみたい。

でも頑張ればまたママが褒めてくれるから、僕頑張る。

何をされるんだろう。

ママが帰ったら、チクッていうのを刺されて、僕は眠った。

起きたら、お尻が痛い。何でだろう。なんだか小さくなったみたい。

ママ、助けて。早くお迎えにきて。

お家に帰ったら治るよね。冷たい箱に入って、美味しくないご飯を食べさせられるのはもう嫌だよ。

早く一緒にお散歩に行きたいな。でもまだ痛いから無理かもしれない。

お日様が下の方に行った時にママがお迎えに来てくれた。

優しいママ。一日でも寂しかったよ。

今日も一緒に寝ようね。

お外は寒いから、ママにくっついて寝るんだ。


お家に帰ったら「マル、よく頑張ったね」ってヨシヨシしてくれたよ。

すごく嬉しい。でももう「病院」は嫌だ。だって寂しくて痛い事ばかりされるから。

三回お日様が昇って、おしりの方を舐めてたら、なんだかあるものが無くなってた。

でも痛くなくなってきたから大丈夫だよ。

おしっこもちゃんと出来るよ。ママ、褒めてヨシヨシしてね。

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