第5話 それは

「どうゆう事?」

そう聞く私に


彼は少しだけ、はにかんで

手紙をそっと差し出した。


やっぱり時が止まった。

ほら。

この瞬間をずっと待っていたんだ。


空が私を1人にする訳がない。

同じ気持ちだったんだって、

また同じ空を見上げる事ができる、

そう思うと、私を纏う鎧は、

少しだけ軽くなった気がした。


私はそっと手を伸ばし

手紙に触れる瞬間、


彼は

「やっぱり、明日渡すよ。

じゃぁ明日の15時、ここで。」

そう言って、手紙をポッケに入れ、

歩き出した。


私は、小さく

「お願い」

という事しか出来なかった。


弱虫。


明日なんて誰にでも来るものじゃない、

そう思う気持ちと


空からの手紙を見てしまったら

明日は、

私から全てを奪う気がしてしまったから。


結局、立ちすくむしかなかった。

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