戦技と魔物が存在する現代で国家機関の監視の下生活していたら色んな事件に巻き込まれたが、声を大にして言いたい『それでも俺はヤッテナイ』と。

名無氏乃御宅

第1話 人違いです!!

人が戦技という特殊な能力を使えるようになってから何年経ったのだろうか。


ふと俺はそんな事を考えながら、友人達が集う某ファミレスに向かっていた。


いやどこ?!


コホン。皆さんどうも、初めまして。


結城桜火ゆうきおうかです。

もうそろそろで高2です。


と、誰に向かって自己紹介をしているのかは自分でも分からないが、良くあるラノベの冒頭で、主人公がやっている為真似てみたのだが、感想としては虚しい。


まぁ、そんな事は置いといて、さっきの考えの続きをしようか。


人は力を得た。それから何年経ったら現代の様な価値観が芽生えたのだろうか。


それは何のことかと言うと、戦技優劣の事だ。最近では、メディアもこの話題を度々出してはいるが、メディア含めこの現代に生きる者の殆どは有能な戦技とそうで無い戦技を差別している傾向にある。

まぁ、魔物に対抗する上で、より強力な戦技が有れば民衆、政府はともに安心するのは当然で、そんな重要な戦力を国内に留める為には贔屓するのを理解はできる。

が、何も命をかけて守り戦っているのは有能な戦技保持者ホルダーだけでは無い。優劣関係なく死力を尽くしている。どうにも民衆や政府はそこまでは考えが及んでいないのか、はたまた考えてはいるが、貢献度、戦力的な意味でそうしているのかは俺には分からん。


そもそももっと別な話だったりするかもしれんしな。


なぜ、俺がこんな事を考えているのか。

それは俺自身がそれを体験していたからだ。


俺は小6で戦技を得た。当時、両親が強力な戦技保持者である為、その息子である俺には色んな人から勝手に期待させられていた。


しかし、蓋を開けてみれば、小6という異例の幼さで戦技を得たものの、肝心の戦技自体は周囲の期待を裏切る結果に終わった。


両親はというと、ラノベのように追放とかそういうのはなかった。寧ろ、戦場出なくてもいいかもしれないと、これ以上ない程に喜んでいて、悔しい気持ちになった。

まぁ、『体験していた』という事は過去形である。つまり、親の期待もある意味裏切った事にはなったが、俺の無限とも思われた長く、クソほど大遠回りさせられた道を進んだ末に、去年ようやっと至った。


高1の冬、学年期末トーナメント20位という微妙な結果ではあるが、入学時1889位、夏1890位という過程を見れば、凄まじい成長振りだ。しかし、ここで歩みを止めるつもりは毛頭ない。


「行ってやるさ、ってやつに」


つい熱くなり過ぎて、心の声を漏らした事に若干の恥ずかしさを感じていると目的の場所へと辿り着いた。


右肩に、沢山の春休暇課題が入ったトートバッグの重みを感じながら、自動ドアの先へと向かった。


しばらくして⭐︎⭐︎⭐︎


「ふぅ。サンキュー助かったよ。風翔ふうと瑞稀みずき


課題転写作業ひとしごとをようやっと終えて、俺は息を吐きながら写させてくれて友人達に礼を言った。


おっと。

ここで、友人2人の紹介をしておこう。


風翔は茶髪で猫目なのが特徴。常に装着してるヘッドホンがトレードマークの悪友。身長は160cmで大のゲーム好き。そして何よりも気持ち悪い笑みをさせたら右に出るものはいない。


次に瑞稀はとういうと、金髪ツインテールがトレードマーク。身長は風翔と同じ160cm。

顔は整っており、スラっとしたスタイルも合間ってモデルのような感じだと捉えて頂きたい。巨峰というか、たわわは実ってないというか、そこに大地があったと言うべきか。。まぁ察して頂きたい。また、目つきや口が悪く、怒らせると手が付けられない。彼女の逆鱗には触れるなというのが、クラスの男子の総意である。女子からは好かれてるみたいだ。男子の一部からも崇拝されているらしい。


〜紹介終了〜



すると、課題を写させてくれた片方、瑞稀が睨みつける(笑)をしてきた。


「アンタバカァッ!?」


その声はまるで3カメですか?ってくらいに、いい感じのエコーがかかったと思わせるように店内に響いた。


誰もが一瞬こちらを見た。が、瑞稀のオーラですぐさま視線を外す。


俺が先程業務に勤しんでる時は、終始無言の上に、イライラを指や貧乏揺すりで留めいたというのに、礼を言ったらこれである。


「やれやれ」


あ。。


瑞稀は不敵で素敵な笑みを浮かべていた。


「はぁ。何がやれやれよ。こっちのセリフだっつの!」


どんな罵詈雑言が飛んでくるかと思えば、ため息を吐いての悪態のみ。

緊張した俺が馬鹿みたいにじゃないか。と思い、少々ここで文句を言おうとした時、さっきまで端末でゲームをしていた男、風翔が口を開いた。


「まぁ、瑞稀もそんな怒んなって。桜火に課題を写させることで今日の昼はタダで済んだんだからさ」


と、ニヤついた顔で言ってくるのが腹ただしい。俺と同じことを思ったのか、瑞稀の顔がさっきよりもイラついてる。


「それはここへ来た時点で決まっていたことだわ。それに風翔に言われるのが一番腹立つ!!」


鬼のような顔で言い放つ彼女は一見男勝りで、ガサツなサバサバ系女子という印象があるかもしれない。某ダダンや某ビッグマム、某リンリン(倫々)と陰で呼ばれ、恐れられているかもしれない。


しかしながら、ちょっと待って欲しい。その考えは間違いではない。が、彼女にも乙女な要素がある。それは、某マムよろしく大の甘党であること。あとは。。まぁ、ね。


甘い物が嫌いな俺と真反対のこいつは、俺が来た頃にはパフェやら何やらのデザートのクリームか何かがこびり付いた容器の残骸達がそこに積み上げられていたのだった。


「糖尿になるぞ」


「うっさいバカ」


このやりとりは入学当初から行なっていた定形分である。


「それはそうと、アンタはどういう了見な訳?」


突如、その鋭い眼光に捉えられながら意味不な事を言ってきた。


「どういう意味?」


すると更に鋭くなる眼光。


あぁ怖い。


「だ・か・ら!殆どの課題が今の今まで終わってなかったってどいう了見なのかって言ってんのよ!!わかる?2日後!明後日から授業始まるのよ!」


物凄い剣幕で捲し立てるように、更に言えば声量や語気なんかエグ過ぎて、鼓膜がビブラートを奏でていた。


当然、俺と風翔は耳を押さえ、苦痛の表情を浮かべる。

「うるさ!ここ店だぞ、自重しろ自重!それと、始業式つったって明後日なら2日もあるじゃないか!2日もあれば十分だっつの!」


俺は悪態を吐きながら、先程の問いに答えた。が、彼女の顔はもう、親の仇を見る顔になっていた。

胃が痛い。。


「十分?昨日になって突然連絡が来たと思ったら課題終わってないから写させてくれって焦りながら、まるで命乞いをするかの如く頼み込んできたのはどこの誰だったか顔を見てみたいわね!」


随分痛い所を。。ぐぬぬ。


「十分なのは写すのにって意味だ!」


ドヤァァ


「苦しいわね。仮に事実でも他力本願前提ってどうなのよ。それとそのドヤ顔やめて。

キモい。」


「あ、はい。」


抵抗虚しく。


と、まぁこんな感じで他愛のない。。

他愛のないよくある友人同士?(友人だよな。。)の会話を繰り広げ、話題が尽き潮時となった。


会計約3万。。

え!?ここファミレスだよね!?

0が多い?いやそれだと安過ぎるか?いや、某牛丼チェーン店なら。。うどんチェーン店なら。。ファ!?


レシートを見て気づく、一見デザートに目が行きがち。。いや一見も何もデザートが多過ぎて見逃していたのだが。。


犯人は風翔で確定だった。

まぁ、デザートの量もえぐいからどっちもどっちなんだが。。まじかよ。。

そうして、衝撃の会計を終え店を出ると、先に出ていた二人が待っていた。


「桜火ゴチになった!課題持ってくんの忘れんなよ!じゃあ、またクラスでな!」


そう言ってすぐさま帰宅した。

妙にイライラするなアイツの声。


「忘れるかっつの!」


そして、瑞稀はと言うと


「それじゃあ、またクラスで!順位上がったからって浮かれんじゃないわよ。それと!折角、華のjkの貴重な春休みを課題の写しの時間に割いて上げたんだから、絶対に忘れんじゃないわよ!いいわね!」


うーん。くどいな。2回目は蛇足だろ。絶対。あと長い!それに何だ?華のjk?はっw


「ババ臭」


あ。。


「あぁん?」


瞬間体が硬直し、震え上がった。

怖。。。


「何でもない!課題も忘れず持ってくさ」


とりあえず宥める。どうどう。


「はぁ。もういいわ。そんじゃ、またクラスでね。はぁーあ、疲っれたー」


そう言って伸びをしながら帰って行った。いや、家に帰るか知らんけど。


「てか、ずっと甘い物食ってただけじゃん。寧ろ、疲れてるんの俺じゃね?え?」


と、若干の疑問を抱きつつ、俺はこの後の行動をどうするか悩んでいた。まだ14時。学校の寮に帰っても暇だ。とりあえず、店から離れるか。


こうして、結局ゲーセンに向かうことにした。


そうそう、気づいてる人はもう気づいているだろうから、ここで改めて情報を整理しよう。情報と言っても大したことはないんだがな。まず、さっきまで一緒にいた友人2人が、別れ際言ってたように同じクラスである。なぜ始業式前の段階で分かるかと言うと、始業式1週間前に、入学時学園から支給された生徒手帳型端末にお知らせとして通知がきたからである。因みに、あの二人とは、1年次もクラスメイトであった。つるむ様になったきっかけはない。ただ、1年次の実技訓練で余った3人が組むことになった。それだけだ。


次に俺の家、正確には学園の寮について。

因みに、風翔も瑞稀も寮住まいだ。俺達3人が通う《日本戦技保持者育成教育学園》は所謂、一般生徒が通う高等学校と同じ扱いである。当然、5教科も学ぶし、そのテストや課題もある。加えて、この学園は、制御科と軍部科に分かれている。

制御科は、戦技保持者でありながら、将来軍に入隊したくない人が行く学科。通常5教科に加え、戦技教育では戦技を暴走させないための知識や技術を身につけることを目的としたカリキュラムが組まれている。

反対に軍部科は、将来軍入り希望の生徒且つ、実技試験・知識試験を合格の上で、受験者の問題がないかの面接試験や異常な思想等の有無を確認する適正検査等その他幾つもの条件にクリアしないと入学ができない仕組みなっている。入学後は、通常の5教科に加え、実技訓練やその他多くの研修、演習、通常の定期テストに加え実技テストとして学年事の序列を決めるトーナメント形式の試合、毎年2回行われる学園の序列を決める一大イベント闘技大会等、イベントも課題も訓練もてんこ盛りなブラックカリキュラムである。

そのため、受験者数が少ないと思いきや毎年1000人は余裕で超える人気振り!


そんなやばい学園が日本の本土のどこにあるのかって言うと。。


本土にはない。日本の海域に造った人工島にその学園は設立されている。つまり、クラスメイトどころか学園に通う生徒全員寮住まいだ。更に、この人工島に住むのは、学園に通う生徒だけじゃない。一般人も住んでいる。それもかなりの量の。

理由は、軍の支部は各47都道府県に設置してあるが、本部は人工島にある。故に、支部より本部の近くが安全と捉えた一般人が極少数。次に有力なのが、この人工島は観光地的な役割もあり、それ目的で訪れた人が移住して生活したいと思った人が少数。

最後に、本土にある首都圏は今もなお人口で圧迫している。その対応策として、政府はこの人工島に溢れた人達や職に困った人達を受け入れることで移住した人がほとんど。

まぁ、東京の港駅から超高速道路や超高速モノレールの2通りの交通網が確立しているため通勤の人も極々少数いる。

因み教育の補足として、中学校は戦技の有無関係なしに一般の学校へ通うことになるが、戦技の知識や扱い方を授業で行うことになっている。


とまぁ、そんなことを考えながら歩いていると、目当てのゲーセンまでもうちょい距離があるのだが、気のせいだろうか。


尾行されている?ストーカー?


監視。。?


そこまで思考が巡ると、一つの非現実的過ぎる仮説が浮かんだが、あり得なさ過ぎてその仮説は記憶のフォルダからそっと削除した。


そして今は、この視線の主の狙いが俺なのか否かを探る必要がある。もし、仮に俺だった場合即刻寮へ帰ろう。


「んじゃあ、まぁ、探りますか」


そうして、再びゲーセンへ向かう。


しかし、俺はこの時削除した仮説が、現実になり自分のスクールライフや青春に多大な被害を被るとは思わず、後悔することになるのであった。。。南無。










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