第38話 ラブラブ波動と罪深い男
俺が未成年者をホテルに連れ込んだ記事は、全て記者の詐欺だったと発表した。
リサは記事を載せた会社にも色々とやったみたい。
冬ちゃんからは「先輩……聞かない方が……身の……ためですよ……」と言っていたので、リサが何をやったかは聞かないことにする。
「冬ちゃん」
「あい?」
「何だかうやむやになったけど、スキルの続き聞いてもいい?」
「あ~開花したスキルと獲得したスキルですね」
俺は頷いて返す。
スキルに大きな違いがあるなんて初耳だ。
「先天的に得られるスキル。それを開花したスキルと呼び、レベルアップじゃなくて手に入るスキルのことですね。誰しも必ず一つは開花するのは先輩も分かりますよね?」
「ああ。大半の人は十八歳の誕生日に開花するんだよな」
「そうです。ギフターじゃなければ、通常は十八歳の時に開花しますね。そのスキルは言わば――――自分の分身とも言えるスキルです。そのスキルによって、探索者としてのステータスを手に入れられるし、レベルアップで成長するステータスは最初のスキルに大きく依存するんです」
「スキルに依存して成長する……!?」
「たとえば、魔法が使えるスキルを手に入れたのに、レベルアップで筋力が上がっても仕方ないでしょう? それと同じです。なので先天的スキルは自分の分身とも言われています。先輩の『追加固定ダメージ』に合うように成長しているはずです」
「なるほど……」
「私の分析ですと、おそらく先輩は――――筋力は一切上がっていないですね。Bランクダンジョンであれだけ戦っていれば、レベルも結構上がってるはずで、双剣を使ってるのにも関わらず、筋力ステータスが上昇しないからダメージがまったく上がってないように見えます」
「そ、そうか…………その他のスキルはどんな感じなんだ?」
「レベルアップで手に入るスキルは後天的スキルといって、先天的スキルに依存して得られると言われています。さっきの例からすると魔法が使えるので、より魔法が強力になるスキルとか、多重スペルとかですね。先輩の場合、【追加固定ダメージ】に付随するスキルを手に入れたりしてませんか?」
レベルアップで手に入れたスキルはたしかにある。でも
「それが……【追加固定ダメージ】が……ただ強くなるだけだね……」
「ふむ……先天的スキルが単体で強化され続けるって…………聞いたことがないですね。先輩」
「えっ」
「やっぱり先輩って……普通じゃないですね」
普通じゃない……というのは何となく感じている。
そもそもレベル1の頃から、スライムに苦戦するのは珍しく、そこからレベルアップしてもスライムに苦戦していた。
最弱魔物のスライムにずっと苦労して、三年間もスライムと戦い続けても倒すのに時間がかかった。
避けることこそレナのおかげで何とかなっても、やはり倒すのに時間がかかったし、レナからもらった双剣でも倒すのに時間がかかった。
これはどれだけ強い武器を使っても、それを使いこなすためのステータスが足りず、武器は本来の力を発揮できないことを意味する。
例えるなら、攻撃力100の武器で器用さ50が必要だとすると、器用さ1の場合、攻撃力が2しか発揮できない。
武器によって必要なステータスというのは分かれているので、自分に合う武器種を見つけるのは大事なのだが、俺にとって得意な武器というのは、おそらく――――ないんだと思う。
それでもレナがくれた双剣が一番手に馴染んだし、全てを引き出せなかったとしても、俺にとって一番の武器となっている。
視線を下げて考え込んでいると、ひょっこりと冬ちゃんの顔が下から俺を覗き込んだ。
「うわっ!?」
「こんな可愛い子と喋ってるのに考え事なんて、先輩も罪深い男ですね」
自分で可愛いって言うのか…………まぁ、その通りなんだけど。
「す、すまん……ちょっと武器のことで考え込んでたよ」
「たしか双剣でしたね。あれって自分で選んだんですか?」
「いや、あれはレナにもらったんだ」
すると冬ちゃんの表情がきょとんとする。
「…………」
「ん? どうした?」
「はあ……やっぱり先輩って罪深い男ですね」
「ええええ!?」
「もういいですよ。それよりも、先天的スキルが強化されていくってこと。おそらく人類で先輩だけだと思います。だから誰かに言ったりしちゃダメですよ? 研究対象になりますから」
「ひっ!?」
「それくらい先輩は貴重な人間ってことです。分かりましたか!」
「は、はいっ!」
「よろしい!」
優しい笑みを浮かべて振り向いた冬ちゃんは、まるで天使のようだった。
「ん? レナ? どうしたんだ?」
ジト目で俺を見つめるレナの視線が気になった。
「ラブラブの波動が……」
「ラブラブ!?」
レナの後ろから咲とリサもジト目で俺を見つめる。
「ユウマくんって罪深い男なんですね」
「お兄ちゃんって罪深い男なんだね」
「ええええ!?」
どうしてこうなった!?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます