第27話 あ~う~ら~

「じゃあ、今日はもう寝るか」


「「「「は~い」」」」


 鍋を囲んで寝ようと畳の上に布団を敷いていく。


 俺と女性陣の間にカーテンを取り付ける。


 いざ寝ようとした時のことだった。


「%#$%%&#」


 カーテンをくぐって入ってきた魔族の少女。


「ん? どうしたんだ?」


 彼女はそのまま――――俺の布団の中に入ってきた。


「あれ? あの子は?」


 カーテンからレナが顔だけこちらに出した。


「俺の布団の中に入っちゃったよ?」


「ふふっ。ユウマくんと一緒に寝たいのかもね」


「俺と……?」


 レナが言うとおり、彼女は俺の体にしがみついて離れなかった。


 小さな彼女の温もりが伝わってくる。


 これを強制的に離すのは可哀想ということだ。


 政府の一件とかで彼女をかばったことで気に入られたのだと思う。


「あまり不安にさせたくないし、そのままユウマくんのところでお願いしていい?」


「あ、ああ」


「じゃあ、お願いね~お休み」


「お休み」


 妹もベッドのカーテンからこちらを覗いていて、お互いに手を振って眠りについた。


 女の子の温もりが昔、妹と一緒に眠った時のことを思い出して嬉しくなった。




 翌日。


 朝食を食べてから会議を始める。


「何とか名前を聞かないとね――――自己紹介しよう!」


 レナは笑顔で女の子に声をかける。


 でも彼女もこちらの言葉が理解できずにキョトンとしている。


 レナは自分を指差した。


「私、レ・ナ」


「%$#&」


「れ~な~」


「れ~な~」


「うん! そうそう! 偉い~」


 レナが頭を撫でると女の子は嬉しそうに笑った。


「こちらは、冬ちゃんだよ。ふ・ゆ。ふ~ゆ~」


「ふ~ゆ~」


「「可愛い~!」」


 今度は咲も一緒になって頭を撫でまわす。


「$%$%」


「私は咲だよ~さ・き。さ~き~」


「さ~き~」


「かわゆい~!」


「私はリサ! り~さ~」


「り~さ~」


「ふふっ」


 リサはおそるおそる女の子の頭を優しくポンポンと撫でてあげる。


 そして、全員の視線が俺に向いた。


「このお兄ちゃんはユウマくんだよ~ゆ~う~ま~」


「ゆ~ま!」


「俺は簡単に言えた!?」


 彼女は俺の座っている俺の胸に飛び込んできた。


「ユウマくんのこと大好きなんだもんね~じゃあ、ユウマくん? 彼女の名前を聞こう?」


「そうだな。名前を教えてもらってもいいかい?」


 女の子が首を傾げる。


 俺は自分を指差して「ユウマ~」と話して、今度は女の子を指差した。


「! %#$%」


「聞き取れん……」


「あ~う~ら~」


「アウラ?」


「あうら!」


「そうか。名前。アウラちゃんって言うんだね」


 満面の笑みを浮かべたアウラちゃんがまた可愛らしかった。


 冬ちゃんにお願いして、アウラちゃんの名前はグランドマスターに伝えて貰った。


 あの日、魔族との戦いは全世界に中継され、その上にイレギュラーダンジョンで被害に遭ったことも全世界中に放送された。


 現在、各国ではいつ現れるか分からないイレギュラーダンジョンの対策に追われているらしい。


 テレビを付けるとそういうニュースばかり流れている。


 配信はダンジョンが消えた瞬間に俺が落下したことで配信終了となった。


 だからアウラちゃんの存在は人々に知られていない。知っているのは俺達とグランドマスター、政府の数人だけだ。


 それでもバレたらいらない誤解を受けてしまいそうなので、外には出ずに部屋の中で過ごす。


 羽は普段閉じているようで、必要に応じて展開するみたい。


 肌や姿はあの時の悪魔と違って肌色なので普通の人間と違いはあまり分からない。


 一番の違いは――――頭に付いている角のみ。


 小さな二本の角があるが、帽子で何とか隠せる範囲だ。


「念のためアウラちゃんの帽子を買いに行こうか」


「そうだね」


 リサとアウラちゃんを残して出ようとした瞬間――――


 アウラちゃんが俺の足にしがみついた。


「%$&#%$&!」


「ごめんごめん。アウラちゃんの帽子を買いに行こうとしたんだ」


「%%$&“#%&」


 何かを必死に訴えている。次第に目に大きな涙を浮かべる。


「ユウマくん。私達だけで行ってくるよ」


「悪い。よろしく頼む」


「任された~」


 レナ達が帽子や必需品を買いに行っている間、俺とリサはアウラちゃんをあやしたりした。


 次第に眠くなったのか、静かな息を立てて眠りついたアウラちゃんを簡易布団に寝かせる。


「…………理乃ちゃんのこと。思い出すね」


「ああ……」


 妹と同じことを思った。


「ねえ。お兄ちゃん」


「ん?」


「…………死んじゃダメだからね?」


「もちろんだ。それに最高のサポートのリサがいるからな」


「うん! 私も頑張る!」


「ああ。頼りにしてるよ」


 アウラちゃんが眠っているとレナにメールを送る。


 買い物を終えて静かに帰ってきたレナ達は眠っているアウラちゃんを囲んで幸せそうな笑顔を浮かべた。

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