第25話 イレギュラーダンジョンの最奥
「はあはあ…………勝った……?」
「お兄ちゃん! 魔物の生体反応全部なくなったよ!」
「リサ。ありがとう。どれくらい経ったんだ?」
「大体三十分くらい! 外の救助もだいぶ進んだよ」
無我夢中で黒い猿達と戦ってもうそんなに経ったんだな。
猿達は魔石やら素材に変わっている。
「ふう……じゃあ、前に進――――」
「お兄ちゃん! いくら強いといっても、ちゃんと休息しないと倒れちゃうよ!」
「あ、ああ……うん。ちゃんと休むね」
正直、こういう禍々しい場所で休むのもどうかと思うけど、妹の言うこともその通りなので、地面に座ってマジックポーチから水を取り出して飲みながら休んだ。
『英雄も妹には勝てないらしいww』
『危険な場所なのにものすごくほのぼのしてるな~』
「みなさん。戦闘中の応援、ありがとうございました」
『ユウマさんしか探索できないですからね~こちらこそですよ~』
『おつおつ~』
それにしてもコメントが多すぎて、大半のコメントは読めないうちに流れてしまう。まだ慣れないな……。
少し休憩をして、ダンジョンの奥に進むことにした。
今までのダンジョンって洞窟だったのに、ここは俺が知るダンジョンとはまるで違う。道も壁も天井も綺麗に作られている。
奥に進むと、二階に登る階段があった。
普段のダンジョンは逆で階層が下に向かうのに対して、ここは上に向かうんだな。
外からも分かってたけど、塔になってたし、一階から入ったからやはり上るんだな。
二階に上がると、また生き物の気配がした。
そこに現れた魔物は――――二メートルほどある黒い猪魔物だった。
ものすごい速度で突撃してきて、俺にぶつかる。
【金剛支配者】のおかげで猪がぶつかってもまったく問題はなく、むしろ一層の猿よりも簡単に倒せたので楽だった。
そのまま進み、三階、四階、五階と進んでいった。
五階の最奥。
広間になっており、巨大な柱がいくつも等間隔で並んでいる。
そして部屋の一番奥にキラリと赤い閃光が見えた。
いくら【金剛支配者】があったとしても何が起きるか分からないので気を付けて進む。
赤い光に近づいてようやくその正体を知ることができた。
「えっ……? 人!?」
そこには少し高台になっていて、物々しい玉座があり、足を組んで俺を見下ろす人がいた。いや、人というよりは――――
『悪魔!?』
『そんな魔物始めて見た!!』
『玉座に座ってるからこのダンジョンの王か!?』
黒い肌に赤い目、頭には二本の巻き角、背中には漆黒の悪魔の羽が二つ。
絵に描いたような悪魔の姿をしている。
「#%$&!#&$&%$」
悪魔が何かを呟いた。
魔物の咆哮とは違い、言葉っぽい?
何を言っているのか分からなくても、それが好意的なものではないのはたしかだ。
悪魔から放たれる殺気に緊張が走る。
次の瞬間、悪魔の体がブレて俺の腹部に強烈なパンチを叩き込んでいた。
周囲に衝撃波が鳴り響く。
「!?」
「っ!」
急いで俺も双剣で反撃をするが、軽々と避けられた。
動きが速すぎて今の俺では追いつけそうにない。
「!#&$%#&!」
羽を広げて宙に浮いた悪魔は、俺に向かって何かを呟き溜息を吐く。
右手を前に出すと、魔法陣が空中に展開され、黒い魔法が放たれる。
避けられる速度じゃないのでそのまま受けてしまうが、幸いにも魔法は俺に効かないみたいだ。
「お兄ちゃん! 測定した感じ、暗黒獣並みに強いよ!」
「そう……みたいだな! 飛んでいるだけでも厄介だよ」
「このまま観測を続けるね!」
「よろしく頼む!」
悪魔の魔法攻撃を耐え続けながら、リサの測定だけを待つのではなく俺も動いてみる。
魔法が効かないからか悪魔の顔に怒りが走る。
――――思った以上に感情がある?
悪魔に向かって――――親指を下に向けて見る。
「!&#$%!$%」
それが何を意味するのか伝わったようで、悪魔がゆっくりと地上に降りてきた。
意外にも人間らしい。
さっそく接近戦に挑む。
長く伸びた爪で俺の双剣を薙ぎ払う。
初撃の時から思ったけど、非常に身体能力が高くて、遊ばれている感覚だ。
何度も俺の攻撃の間をくぐって、相手の爪が俺の体にぶつかる。
猿の爪とは違って折れないところは、肉体の一部なのが分かる。
「$&#%&!%#」
怒ったような口ぶり。
そのうち俺の一撃が悪魔に当たった。
「!?!?」
傷は一切ない。でも固定ダメージが入ったのは間違いない。
一瞬で俺と距離を取った悪魔は斬られた場所を手で撫でながら目を大きくして俺を睨んだ。
次の攻撃を使用した時。
悪魔の両手から魔法陣が現れて紫色の煙を吐き出した。
周りが全然見えなくなる。
「リサ! 前が全然見えなくなったよ!」
「視界を妨害する魔法みたい! 色んなセンサーを試しているけど、こちらでも計測できなくなっちゃった! お兄ちゃん、気を付けて!」
「分かった!」
これから何が起きるのか緊張が走る中、意外にも攻撃は一切来なかった。
紫色の煙の中、遠くで魔法陣の光が淡く光った。
そして――――俺が立っていた床が消え、体が落下し始めた。
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