第12話 パーティー結成と所属

 ノックから入ってきたのは、白髪の爺さんと小柄の女性だ。


「初めまして。双剣の英雄殿と剣神殿」


 立ち振る舞いからものすごい威厳が伝わる。


「まさか……探索者ギルドのグランドマスター!?」


 レナさんは知っている人のようだ。


 白髪の爺さんは小さく笑みを浮かべた。


 二人は俺達の前に立ち、軽く会釈する。


「わしは日本の探索者ギルドのグランドマスター時津ときつ源信げんしんと申します。こちらは孫のふゆという」


「どうも。ユウマです。妹のリサ、こちらはレナさん、こちらは――――」


 またもやみんなの視線が彼女に集まった。


 名前……まだ聞けてない……。


「わ、私……綾小路あやのこうじさきです……」


 やっと名前が聞けた。綾小路さんっていうんだ。


 自己紹介が終わり、時津さんが続けて話した。


「まず暗黒獣を退けてくださったこと、国を代表して感謝申します」


「いえいえ! 頭を上げてください!」


 深々と腰を九十度曲げて頭を下げられて驚いてしまった。


「暗黒獣は我々探索者にとって大きな恐怖。かの金属スライムに並ぶほどに恐怖の象徴です。それを退けたというのは、我々……いや、人類にとって大きな一歩と言えるでしょう」


 あの魔物はそんなすごい魔物……なのか?


「前振りが長くなりましたな。わしがここに来た理由は、双剣の英雄殿と剣神殿を守らなねばならないと思ったからです」


「「守る?」」


「ええ。二人が暗黒獣を退けたのは世界に広まっている。となると、二人と手中に収めたい人は必ず現れます。二人の認知度はもはや世界クラス。探索者に興味がなくても宣伝要員として欲しがる人はいくらでも現れるでしょう」


「えっと……なんだか、大げさのような……?」


 すると、レナさんが俺を見つめた。


「ユウマくん。ううん。時津さんの言う通りだと思う。ネットでは双剣の英雄がユウマくんであることはもう特定していると思う。ユウマくんのチャンネル登録者数って何人くらいだった?」


「えっと、俺は……確か、百人くらいだったね」


「一度チャンネルを確認してみると分かると思う」


 レナさんに言われた通り、俺はスマホを手に取り、いつものチャンネル確認画面を開いた。


《チャンネル登録者数:105人》


 これが今まで俺が見てきた画面の内容だ。


 それが――――


《チャンネル登録者数:27,873,182》


 そっと閉じた。


 もう一度開く。


《チャンネル登録者数:27,873,182》


 もう一度そっと閉じた。


「…………」


「ね?」


 俺は真っ白な頭で頷いて返すしかできなかった。


「さて事情は理解してもらったようですな。探索者ギルドとしてはお二人には自由に過ごしてもらいたい。それがかえって暗黒獣を倒すことにも繋がると思いますから。そこで許可さえしてもらえるなら、うちの孫を護衛に付け、妹君はセキュリティ対策の部屋に移動など考えております。どうでしょう?」


「それって私達を探索者ギルド囲いたいと言っているように聞こえます」


「……ええ。その通りです。そうした方がきっと二人の自由を保証できますから。まだ民間企業は何とかなるとして、一番めんどうなのは――――国が乗り込んでくることです。わしたち探索者ギルドに所属してもらえるなら、政府から他全ての外敵から守ると誓いましょう」


「その理由を聞いてもいいですか?」


「若い探索者が自由に探索できないのは探索者ギルドとしても望まないということ。それと――――暗黒獣を退けた英雄二人がより強くなって、今度こそ暗黒獣を倒すところをみたいんです。わし達では、あの暗黒獣を退けることすらできなかったんですから」


 時津さんとレナさんの会話。時津さんからは嫌な感じが全く伝わらず、口にはしないが俺のせいで妹が事件に巻き込まれる・・・・・・・・・と言っているのが分かる。


 それも助けてくれるというし、探索を自由にしてほしいという言葉もとてもうれしい。


 俺は……この先も、ダンジョンに潜り続けなければならないから。


「ユウマくん? どうするの?」


「えっと……レナさんは?」


「私はユウマくんのパーティーメンバーだもの。リーダーが決めたことに従うよ?」


 ううっ……レナさんの笑みが天使みたいに可愛すぎる……。


 もう一人のメンバー、綾小路さんを見る。


「えっ? 私!? え、えっと……私もリーダーに従うというか……探索を続けるなら、はい」


 最後にリサを見つめる。


「リサ。俺はまだまだダンジョンに潜りたい。今回のことで一つ分かったのは、俺が強くなることで助けられる命があると知ったんだ。もちろんそれだけじゃないけど、これからも探索者を続けたい。それに綾小路さんもレナさんも仲間になってくれたんだ。今までのように危ない目には遭わないと思う」


 リサは酷く悲しそうな目をしていた。反対できない現状に、本当は反対したいと思ってるはずだから。


「リサちゃん、一ついい?」


 レナさんがリサに何かを耳打ちする。


 するとリサは目を大きく見開いて驚いた。


「それって……本当?」


「うん。きっと時津さんに言えば、対応してくれると思う」


「――――うん。お兄ちゃんが……みんなを、レナさんを助けてくれて、すごくかっこよくて、私の誇りだと思ったから。だから――――私も応援したいと思う!」


 リサの許可も下りたので、俺達の方針が決まった。


 所属とかよく分からないけど、時津さんならそう悪いようにはしないはず。


 たまに指定クエストを受けてほしいと言われたけど、無茶ぶりはしないし、報酬も弾むと言ってくれたので、それを信じようと思う。


 こうして俺は初めてパーティーを組むことが決まった。


 俺、レナさん、綾小路さん、時津冬さんの四人。


 だが――――この時、すでにもう一人のパーティーメンバーが決まっていたことを、この時の俺はまだ知らない。

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